「スタッフの髪色ルールは定着率に影響するって本当?」「スタッフの髪色をどこまで許容すべきか判断が難しい・・・」このような疑問や悩みをお持ちではありませんか。
自院の就業規則に髪色ルールを設定しているクリニックは少なくありません。しかし、髪色のルールを厳しくしすぎると、スタッフのモチベーションを下げ、離職率に影響を与える可能性もあります。
そのような背景から、近年ではスタッフの本人に判断を委ねるクリニックも増えています。しかしながら、「髪色を自由にして奇抜な髪型にされても困る」「クリニックの信用を損ねないか不安」といったことを気にされる方もいるでしょう。
そこで今回は、スタッフの髪色自由について、当院の事例も交えて解説します。
髪色ルールにお悩みの方はぜひ参考にしてください。
髪色のルールはスタッフのモチベーションを下げる
クリニックによっては、「カラー禁止」「原則黒髪」といったように、髪色ルールを設定しているところも多いでしょう。
しかし、髪色ルールの存在がスタッフのモチベーションに影響を与えていることをご存知でしょうか?
医療用品の企画・販売を手掛けるクラシコ株式会社では、看護師・病院利用者・病院幹部を対象に「ふしぎなナース文化に関する調査」を行いました。
同調査によると、「髪色は明るくしてはいけない」というルールに対して、「不要である」と回答した方が、75.7%にものぼることがわかりました。
実際の看護師の声としては、「業務に支障がなければ髪色は自由であるべき」「時代に合わない」「過剰な規制は必要ない」といったような反応が数多く見られます。
こうした声を背景に、近年では業務に影響を与えない範囲で暗黙のルールを見直し、看護師や事務スタッフの髪色自由を広げる動きが広がっています。
髪色の制限によって採用力が変わる
クリニックで髪色を制限することは、自院の採用活動にも影響します。制限を掛ければ掛けるほど、応募が集まりにくくなる傾向が見られます。
例えば求人サイトでは、求職者が効率的に自分に合った求人を見つけるために、「条件検索機能」があります。サイトによっては、「髪色自由」という検索項目があり、髪色自由の職場で働きたい求職者に見つけてもらいやすくなります。
また、ポーラ文化研究所が行った調査では、髪を染めている女性の割合は59%となっており、30年前と比べて30%も増加していることがわかります。
今や髪を染めることは特別なことではなくなっていますので、「今までそうだったから」といった理由でNGとするのではなく、時代にあわせてルールを変えていくことが求められるでしょう。
髪色自由でも清潔感は大切
髪色はある程度スタッフの自己判断に任せることは大切です。しかし、クリニックは医療機関であり、お洒落を楽しむ場ではありません。医療従事者として相応しい身なりを意識してもらう必要があります。
病院・クリニックで働くスタッフに求められるものには、次のようなことが挙げられます。
- 見た目に清潔感がある
- 対応が誠実である
- 安心感がある(落ち着く)
逆にいえば、次のような場合は、患者さんからの信頼を損ねる可能性が高いでしょう。
- 見た目に清潔感がない
- 誠実さに欠ける
- 不信感がある(落ち着かない)
とりわけ髪型や髪色は相手に与える印象が大きい部分です。もちろん、見た目だけでその人の性格や能力を判断できるわけではありませんが、現実としては見た目や第一印象が与える影響は大きなものです。
例えば、人の印象を決定付けるものとして、「メラビアンの法則」というものがあります。この法則によると、人間は他人とコミュニケーションを取る際に、言語・聴覚・視覚の3つの情報から相手を判断しているというものです。
情報を得るところ |
与える影響の割合 |
言語情報 |
7% |
聴覚情報 |
38% |
視覚情報 |
55% |
つまり、相手とコミュニケーションを取る際は、話の内容でだけではなく、外見や見た目にも気を配ることで説得力が増すようになります。
髪色の基準設定について
髪色の基準設定によく活用されているのが、NPO法人日本ヘアカラー協会(JHCA)のレベルスケールです。JHCAは、髪の明度(明るさ)を4〜15の12段階に分けて作成しており、髪の明るさを測る基準として多くの事業者で採用されています。
一般的な黒髪はカラースケールでいうと5程度です。従業員の染髪を認める場合は「レベル6〜7程度まで」としている事業所も少なくありません。ですので、「髪色自由とすると派手な色にされそうで不安」という場合は、カラースケールを基準にして就業規則に記載すると良いでしょう。
続いて、一般的に認められにくい髪色について解説します。
派手な金髪
明るすぎる髪色(金髪)や、赤や緑などのカラーはNGとしてるクリニックがほとんどです。金髪や派手な髪色は、「本当にこの病院で大丈夫だろうか」と患者さんが不安になったり、「病院はお洒落をするところじゃない!」と不快に感じたりする患者さんもいるためです。
カラースケールで8〜9程度の明るさになるとクリニックによって判断基準が分かれますが、10以上は明るすぎるため避けた方が賢明です。
プリン髪・白髪交じり
暗めのトーンであれば何でもOKというわけではありません。クリニックは清潔感が大事ですので、スタッフの見た目に清潔さを感じられなければ、身だしなみの指導をする必要があります。
例えば、ヘアカラーをしてから期間が経過し、地毛の黒い部分とカラー部分が混在する「プリン髪」や白髪が多い髪はNGとなります。
白髪に関しては老化や遺伝など個人差があるため、伝え方には注意が必要ですが、やはり見た目が与える印象は大きいものです。患者さんから不快に思われないためにも、見た目や印象に対する指導も行うようにしましょう。
インナーカラー
近年では、髪の内側を別の色味で染める「インナーカラー」を入れる方も増えています。インナーカラーはやり方次第で洗練されたヘアースタイルを作ることができますので、当院では若いスタッフもしています。
ただし、インナーカラーのやり過ぎは禁物です。いくらベースの色味が暗くても、インナー部分がハイトーンだとかえって目立ってしまうからです。とりわけクリニックでは年配の患者さんも多いため、不信感を抱かれる可能性もゼロではありませんので注意しましょう。
【参考】当院のヘアカラールールを紹介
参考までに、眼科クリニックである当院のヘアカラールールについて紹介します。
当院のヘアカラーの基準は、「清潔感のあるヘアーとする」こととしています。客観的にみて、似合っていることも大切です。どのようなヘアカラーにするかはクリニック側で厳格に決めるのではなく、最終的には本人の判断に任せています。
やはり何も手入れしていない髪よりも、きちんと手入れしていて綺麗で美しい髪色の方が、患者さんに好印象を与えることができます。実際に当院では比較的髪色が明るいスタッフもいますが、ご高齢の患者さんから「キレイな髪ですね!」とお褒めのお言葉をいただくことも少なくありません。
また、白髪が目立つ場合は、最近では白髪染めよりもインナーカラーで白髪をぼかすやり方がトレンドです。インナーカラーで差し色をすると若々しく見えますので、私をはじめ同年代のスタッフは上手に取り入れています。
患者さんからの批判を心配されるかもしれませんが、当院では今まで一度もそのようなご意見を頂いたことはありません。
このように、ヘアカラールールを厳格にし過ぎるよりも、ある程度スタッフ本人に裁量を与えた方が良いでしょう。スタッフの個性を引き出してあげることは、結果的にクリニックにとってプラスになります。
一人ひとりが活躍できる環境を整え、多様な価値観を大切にするからこそ、スタッフ本人の成長にも繋がるものと考えております。
まとめ
もし、現在「染髪禁止」「原則黒髪」といったルールが設定されているようであれば、ある程度の裁量を与えることをおすすめします。就業ルールとは、何かしらの問題や背景を基に作られるものですので、時代にあわせて見直す必要があります。
逆に、「今までそうだったから」「ルールをいちいち設定するのが面倒」といったように、明確な理由がなく、これまでの慣習だけで実施していると、スタッフが窮屈に感じてしまい、離職に繋がる可能性も出てくるでしょう。
また、お手入れされたヘアースタイルは患者さんにも好印象を与えることができます。つまり、闇雲な髪色ルールは、クリニックにとって機会損失につながるリスクもあります。
髪色自由に限らず、一つひとつのルールを見直し、「本当に必要どうか」「それによって失う機会」なども考慮した上で、適切な就業ルールを設定することをおすすめします。
今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。