独立開業するドクターの9割以上は、開業コンサルタントを依頼すると言われていますが、コンサルタント選びを間違えたばかりに、経営を失敗するケースが目立ちます。
本記事では、クリニック開業を成功させるコンサルタントの選び方について、詳しく説明していきます。
作者プロフィール:鈴木恵子
夫のクリニック開業を機に、知識ゼロのまま事務長に就任。以来、17年間クリニック経営を第一線で担っています。
一般経営学をオンラインスクールで学びながら、医療業界に合わせた独自の経営手法を確立し、年間2万3千人以上の患者さんを受け入れる人気クリニックに成長させました。
また、新卒社員の離職率は過去3年ゼロ、育児休暇後の復帰率も100%であり、患者さんにもスタッフにも愛されるクリニック経営を実践しています。
はじめに:コンサルタントの必要性について
クリニック開業には膨大な手続きや検討事項があり、ひとつひとつ決定し、実行していく作業を独力で行うのは大変です。
しかも多くの場合、開業医になる前は勤務医として働かれているでしょう。勤務医として働きながら、開業準備を並行して行うのは、現実的ではありません。
ですから、専門的なノウハウを持ったコンサルタントの支援を求めるのは、多くのケースで必要なことといえるでしょう。
コンサルタント選びのステップ1:コンサルタントの種類を知る
コンサルタント選びの際に、まず知っておかなければならないのがコンサルタントの種類です。
一口に開業コンサルタントと言っても、コンサルタントは専用のコンサルティング会社の他、建設会社、医療機器メーカー、医療薬品卸売業者、調剤薬局、リース会社、保険代理店、税理士事務所など実に多様な会社が手がけているのです。
現在あるコンサルタント会社を分類すると、大きく次の3つに分けることができます。
<コンサルタント業者の種類>
- 専業の医療系 開業・経営コンサルタント
- 医療分野の関連会社による営業的コンサルタント
- 士業コンサルタント
専業の医療系開業・経営コンサルタント
「開業・経営支援」そのものを商品として提供するコンサルタントです。支援、相談料でコンサルティング料を得るもので、料金は他の形態のコンサルタント料金と比べると割高のケースが多いです。
医療分野の関連会社による営業的コンサルタント
医療分野の関連会社が、事業の一環として行うコンサルタント。
新たなクリニック開業により、自社製品を販路拡大につなげたい意図があります。
建設会社、医療機器メーカー、医療薬品卸売業者、調剤薬局、リース会社、保険代理店などの事業を手掛けているコンサルタント会社がこれに当たります。
士業系コンサルタント
税理士事務所、行政書士事務所、ファイナンシャルプランナーなど、専門職の事務所が開業コンサルタントを行うものです。
開業後に専門職の業務に関して、クリニックと顧問契約を結ぶことを前提として、開業支援コンサルティングを実施しています。
コンサルタント選びのステップ2 :コンサルタントの儲け方を知る
コンサルティング会社の種類がわかったところで、各コンサルタントの儲け方の仕組みをご説明します。
このコンサルティング会社の設け方の仕組みがわかると、本当に自分たちの経営を支えてくれる業者が見えてきます。
専業の医療系 開業・経営コンサルタント
専業の医療系開業・経営コンサルタントは開業支援サービスを提供しそのコンサルティング料を利益とします。
「コンサルタント」そのものを商品として販売することで成り立っていますので、こちらの利益となるよう適切な支援をしてくれるところが多いです。
料金に関しては、開業支援で200万から400万程度のコンサルティング料がかかります。
医療分野の関連会社による営業的コンサルタント
医療関連会社による営業的コンサルタントは、どれもそれぞれのビジネスにおける顧客確保の手段として開業支援をしていると言えるでしょう。
構造上、彼らはバックボーンとなっている会社のビジネスで利益をとることを目的としています。
例えば、調剤薬局の開業コンサルタントは、クリニックのそばに調剤薬局を開設し、そこで安定的な収益を上げることが主目的です。
そのため開業地がすでに決められていたり、収益を上げやすい医療モールに入ることを勧められているケースもあります。
また医療機器メーカーやリース会社の場合、リース会社は自社の製品を納入して利益を取ることが第一の目的です。よって、高額な機器や不要と思われる機器まで言葉巧みに勧めてくることもあります。
つまり、開業支援において100%クリニックの見方に立ち、動いてくれるとは言い切れないのです。
料金については他の2つに比べて低額、もしくは無料ですが、開業後にその会社の製品やサービスを利用することが暗黙の条件となっていて、ここにクリニック側の意向は反映されないというところに大きな注意が必要です。
士業系コンサルタント
士業系コンサルタントは、開業後に専門職の業務に関して、クリニックと顧問契約を結ぶことを前提として、開業支援コンサルティングを実施しています。
そのため開業すれば終わりというのではなく、開業後も継続的にクリニック経営がうまくいくように専門的な視点からアドバイスがもらえます。
開業支援の料金については、顧問契約の締結を条件として低額で行うケースと開業前と開業後に別個に費用が発生するケースがあります。
結論:おすすめは専門系経営コンサルタント
上記3種のコンサルティング会社で最もおすすめなのは、専門系の経営コンサルタントです。
重要なのは、開業コンサルタントではなく、経営コンサルタントを選ぶことです。
経営コンサルタントは文字通り「経営」の部分のコンサルタントをすることでクリニックに利益をもたらせ、その一部をコンサル料としてもらうので、経営に関しても責任を持った姿勢が望めるのです。
開業のみを扱っている専業コンサルティング会社の場合、開業支援の契約を取り付けたら、後は開業プロジェクトを速やかに終えることが目的となります。
そのため「非現実的なレベルで楽観的な事業計画書を提出し、開業支援計画を取り付ける」、「習慣について甘い見通しを伝えて立地の決定を急がせる」、「開業後の経営のことまで考えずに無理な設備計画を立てる」など開業後に損害が明らかになるトラブルも見られます
このため、開業後の経営までサポートのある経営コンサルタントをおすすめします。
ただし、コンサルティング会社が建設会社や設計士、広告会社などから仲介手数料を取るケースがしばしば見られます。
悪質な場合はこの仲介手数料を法外に設定し、そのぶんが経費に上乗せされ、クリニック側の費用が大きく膨らむケースもありますので注意が必要です。
【注意】優良なコンサルタントを選んでも失敗する事例
ここまでコンサルタントの選び方について説明してきましたが、優良なコンサルタントに頼んだにもかかわらず、経営に失敗するケースというのも少なくありません。
私が分析した結果、経営に失敗するケースというのはある重大な共通事項があります。
それは、「外部の専門家に全てを丸投げする」ケースです。
経営を外部に丸投げで起こる悲劇
多くのドクターは専門家に任せてしまえと開業や経営について、コンサルタントに委託してしまいますが、基本的な知識もなく他者に任せるのはハイリスクな悪手です。
なぜ外部専門家だけではだめなのでしょうか。それには主に以下の2つの理由があります。
<外部に丸投げによるデメリット>
①責任感の薄い経営判断が横行する
②突発的な問題に対して、即時対応力を発揮する責任者がいない
①責任感の薄い経営判断が横行する
まず外部の方々は内部の人に比べ、どうしてもコミットが弱い、つまり関わりが希薄になります。これは当然なことなのですが、責任の担い方が契約上、限定的になりますし、内部の人間と比べると心理的に愛着や当事者意識が弱いものです。
そのような外部の人間のみで経営の意思決定を行っていれば、責任感の薄い経営判断が横行するのは明らかです。
実際にクリニックの院長を務めるドクター達からも相談を持ちかけても、「それは私の担当領域ではないので」とお茶を濁され逃げられてしまうというケースもあるそうです。
②突発的な問題に対して、即時対応力を発揮する責任者がいない
外部に全てを丸投げした場合のデメリットとして、即時対応力を発揮する責任者が不在であるという問題点もあります。
例えば診療時間帯に起きる突発的な問題に対する対応です。ドクターは診療に専念していますので、他のスタッフが対応することになります。
しかし、外部に全て丸投げしているクリニックの場合、現場には即時に判断・対応するだけの権限と責任を持ったスタッフがいない状況になります。経営コンサルタントは常に現場にいるわけではないからです。
患者さんの苦情に対してしかるべき人間が適切に対応できなかった結果、患者離れにつながってしまったケースもあります。
安定したクリニック経営に不可欠なものとは
ここまで、外部の人間に経営を丸投げすることの危険性についてお話ししてきました。
では、どうすれば良いのでしょうか。
それは、ドクター自身、そして信頼できる身内の人間が経営を担うスキルを身につけることです。
ドクターは治療に専念する時間が欲しいでしょうから、とりわけ大事になってくるのが信頼できる身内の責任者、すなわち経営視点を持つ事務長の存在です。
今や医療施設の実に3割が赤字となる時代。コンサルタントの意見をそのまま実践するだけで、全てがうまくいく時代はとうに終焉を迎えています。
- 外部の専門家の意見を鵜呑みにするのではなく、クリニックの実情を踏まえた上で様々な専門家の意見を咀嚼し、自責で判断を下す。
- 業務の全体を見渡し、トラブル等の即時対応が求められる場合には、クリニックの代表として対応にあたる。
- そして長期的な視点で考え、クリニックを成長させるビジョンを持つ。
こんな事務長がクリニックの安定経営には絶対に必要です。
これは私自身がクリニックの事務長として17年間、経営第一線で行ってきた経験から、肌で感じた答えです。
私の17年間の経験を全て凝縮したセミナー
この度、私が17年間のクリニック経営を得て確立した独自の経営ノウハウを、セミナーとして配信することにしました。
現在、日本の医療は施設の約3割が赤字経営という、非常に厳しい状況に置かれています。
医療施設はその地域のインフラとも呼べる大変重要な存在であるにもかかわらず、3割もの施設が存続の危機に瀕している事態は、同じ医療従事者として大変もどかしく感じています。
多くの医療施設を経営難から救い、日本全国、どこにいても安心して医療を受けられる国にしたい。
この想いから、私の経験全てをこのオンラインセミナーに詰め込みました。
17年前、私は夫のクリニック開業を機に、事務長となりました。当時の私は3歳と6歳の子供を育てる専業主婦で、もちろん経営の知識はゼロ。
そもそも私は短大を卒業後、日本経済が好調なバブル時代に2年間の社会経験をもつのみで、全く苦労を知らない能天気な人間だったのです。
しかしクリニックを運営をノウハウゼロだった私が担うことになったのは、今思えば幸いだったのかもしれません。
なぜなら、医療業界で常識・慣例とされていた数々の仕組みや手法について、疑問を持つことができたからです。
当時の医療業界は独自の慣習で埋め尽くされ、一般企業や一般社会ではごく当たり前とされていることが「非常識」と言われる世界でした。
私は会社も医療施設も経営の根幹は同じではと考え、一般的な経営手法をクリニックの経営に落とし込んだ、独自の経営手法を17年間変わらず貫いてきました。
その結果が患者さん、スタッフに愛されるクリニックとして開業以来の安定経営として現れていると感じています。
この記事を読んでいただいているあなたもきっと、独立開業を視野に入れいている、もしくは既に独立して頑張っている医療仲間でしょう。
私の経験があなたの一助となれたらこれほど幸せなことはありません。