クリニックのスタッフルームをどのように設計したらよいか悩んでいませんか?
実は、私もクリニック開業時にスタッフルームの設計について頭を悩ませていました。快適なスタッフルームを作ることは従業員の満足度に関わるため、安定したクリニック経営には欠かせません。
本記事では、クリニックのスタッフルーム設計のポイントを私のクリニックを例に紹介します。いくつかのポイントを押さえてスタッフルームを設計することで、スタッフが働きやすい良いクリニックを作ることができます。
スタッフルームは働きやすさに関わる
休憩時に利用するスタッフルームは「従業員が心身ともに休める場所」なので、働きやすさに関わります。休憩は、ご飯を食べたり仮眠をしたりと唯一スタッフが休める時間です。
スタッフルームがなく待合室での休憩だと食事や睡眠がしづらく、製薬会社の営業がきたり医師に話しかけられたりすることもあるので心が休まりません。
スタッフルームのように、休憩時間に患者さんやほかのスタッフの目を気にせずに休めるところがあれば、リフレッシュしながらストレスなく働くことができます。
クリニック設計では、診療や待合室のスペースを優先してスタッフルームを狭くしてしまうことが多いですが、従業員の働きやすさにも関わるため十分なスペースを確保するようにしましょう。
スタッフルーム設計のポイントとは
スタッフルーム設計では、主に次の3つのポイントを意識しましょう。
- 広さ
- 位置
- 機能
狭く暗いスタッフルームでは快適な休憩時間を過ごせないため、ある程度の広さと日光が入るような位置に設計する必要があります。
また、従業員がリラックスして休むためには、院長室や業務スペースを避けるといった配置を意識することも大切です。
さらに、スタッフの過ごし方に合わせて機能性の高い部屋にすると、より過ごしやすい空間になります。広さや配置などの基本的な内容に加えて、機能性も意識することで快適なスタッフルームを作ることができるでしょう。
本記事では、これらのポイントをどのように意識してスタッフルームを設計したらよいかを具体的に紹介していきます。
スタッフルームの広さ
スタッフルームの広さは、スタッフの人数にもよりますが最低でも7畳程度は必要でしょう。ある程度広いスペースを確保することで、従業員がリラックスして休むことができます。
とはいえ、中々イメージしづらいですよね。具体的にイメージして頂けるよう当院のスタッフルームの間取り図を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
私のクリニックのスタッフルームには、キッチン付きの食堂(5.5畳)、ゆったりと過ごせる小上がりのフローリング(7.5畳)、テラス(3畳)の3つのスペースを用意しています。
テラスを抜いて13畳の広さがあり、当院のスタッフ数は12名ですがこの広さで快適に過ごすことができています。
スタッフルームの位置
スタッフルームの位置を決めるときは、次の3つのポイントを意識しましょう。
- 院長室や業務スペースを避ける
- 動線を確保して患者さんとの接触を避ける
- 日光が入る場所に設置する
また、以下の図は当クリニックのスタッフルームの位置です。ほかのスペースとの位置関係などぜひ参考にしてください。
院長室や業務スペースから離す
スタッフルームは、院長室や業務スペースから離して設置するのがおすすめです。院長室と隣り合わせだとお互いの声が漏れてしまう可能性があるので、スタッフだけでなく院長自身も心が休まりませんよね。
そのため、スタッフルームは待合室とは別の階に設置する、院長室と隣り合わないようにしましょう。
動線を確保して患者さんとの接触を避ける
患者さんとの接触を避けるために、動線を確保することも重要なポイントです。スタッフルームはなるべく患者さんと会わずに移動でき、声が漏れない場所に配置しましょう。
そうすることで、スタッフはもちろん、患者さんも休憩中の会話などで不快な思いをせずに過ごすことができます。
日光が入る場所に設置する
スタッフルームを設計する際は、日光が入るかどうかもチェックしましょう。光が全く入らない場所ではスタッフの気分が下がりますし、中々リラックスできません。
見逃してしまいやすい部分ではありますが、日の光が入る場所かどうか確認し、採光できるスペースに配置するようにしましょう。
私のクリニックでは、スタッフルームの一面に窓を大きく作りテラスをつけています。
スタッフからは「換気が思い切りできるので気持ちいい」「部屋が明るい」「テラスに洗濯物を干せるのがいい」と好評で、快適な時間を提供できているようです。
機能性の高いスタッフルームを設計するポイント
機能性の高いスタッフルームを設計するポイントは、次の3つです。
- 家具やアメニティを充実させる
- 小上がりのスペースを作る
- 更衣室と休憩室を分ける
配置や広さの工夫に加えて、スタッフが快適に過ごすための細かい配慮を行うことで、機能性の高いスタッフルームを作ることができます。
必要に応じて家具やアメニティを充実させる
家具やアメニティが充実しているスタッフルームは、過ごしやすくリラックスできるでしょう。中でも、以下の設備は設計段階で設置の有無を決める必要があります。
- 台所
- 小上がり
- 更衣室
台所や小上がりのスペースは洗い物をしたり足を延ばして休んだりできるため、より快適なスタッフルームを作る上で大切です。
また、更衣室と休憩スペースは分けて設置することでプライバシーが守られるので、安心して着替えることができます。
その他、ソファや電気ケトルやカップを置くなどスタッフへの細かい配慮もあると、さらに過ごしやすい環境を作ることができるでしょう。
当院では、お茶をいれたり洗い物をしたりできるよう、小さなキッチン設備を用意しました。スタッフからは、「洗い場のサイズが丁度よくお湯を沸かすこともできるので非常に使いやすい」という声を頂いています。
ただ、キッチンの蛇口がシャワーだと嬉しいという声もあるので今後改善していきたいと考えています。
スタッフから聞いた問題点は、できる限り改善していきましょう。
また、当クリニックでは、より快適に過ごしてもらえるようにエアコンやホットカーペットの設置も行いました。
過ごしやすさが気温や天候で左右されないので、常に働きやすい環境を作ることができました。ぜひ参考にしてくださいね。
小上がりのスペースを作る
休憩時に使えるスタッフルームには、小上がりのスペースがあるとよいでしょう。小上がりは、靴を脱いで足を伸ばしたり横になってゆっくり休んだりすることができます。
当クリニックは、スタッフルームの大部分を小上がりのフローリングにしました。短い昼寝やスタッフ同士のマッサージ、ヨガなどのちょっとしたフィットネスを行うこともできるのでおすすめです。
スタッフによると、休憩中に横になったり足腰を休めたりできる空間は非常に大切とのことで、午後からの仕事のモチベーションが上がると喜んで貰えています。
更衣室と休憩室は分ける
更衣室と休憩室は分けるのがおすすめです。更衣室と休憩室が一緒になっていると、プライバシーが確保されないのでスタッフが安心して着替えることができません。
別の場所に配置するのが理想ですが、難しい場合は必ず仕切りをつけるようにしましょう。仕切りはカーテンではなく、パーテーションや壁など厚みがあるもので行うとスタッフが安心して過ごすことができます。
スタッフルームは感染予防対策も大切
医師やスタッフが安心して過ごすためにも、診察室や待合室だけでなくスタッフルーム内の対策もしっかりと行いましょう。特に、感染予防対策に有効な以下の設備は、設計時に設置の有無を決めておかなければいけません。
- 換気扇
- 窓
- 空調
また、私のクリニックのスタッフルームは、以下の感染予防対策を行っています。ぜひ参考にしてくださいね。
- 食卓に飛沫防止のためのアクリルボードを設置
- 入口にアルコール自動噴霧器を設置
- 三密回避のために食事と休憩時間の分散
- 定期的な換気
スタッフを大切にする気持ちを持って設計を行う
スタッフルームを設計するときは、「スタッフを大切にする気持ちを持つこと」が非常に大切です。
私は、開業時にいくつかの施設を見学させて頂きましたが、椅子に座って休憩する程度のスタッフルームが多く、閉塞的でリフレッシュできるような環境にはなっていませんでした。
そしてその施設の経営者の方々は、このような状況についてあまり危機意識を持っていなかったのです。このとき私は、スタッフルームを設計する経営者はスタッフを大切にする気持ちをしっかりと持つべきだと感じました。
私はスタッフを大切に思う気持ちがあれば、その思いがスタッフルーム設計に表れ、経営者の思いがスタッフにも伝わると考えています。
ビル診療など設計に限りがある場合はつい部屋を狭くしてしまいますが、スタッフの立場になって設計を行い、従業員が気持ちよく働くことができる休憩室を作るようにしましょう。
まとめ
本記事では、クリニックのスタッフルーム設計のポイントを紹介しました。広さや配置、機能性などを意識してスタッフがリラックスできる空間を作ることが大切です。
開業時は、つい診察室や待合室の設計を優先してしまいますが、過ごしやすいスタッフルームを設計することで快適な労働環境を作ることができます。