現在クリニックを経営している方の中には、上記のような不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
特に院長自身がクリニックを経営している場合は、診療と経営でキャパオーバーになり、どうしても手が回らない部分が出てきます。そこで望まれるのが「事務長の採用」です。
とはいえ、自分が築き上げてきたクリニックの経営を他の人に任せるのは不安がありますよね。
この記事では、クリニックの現役事務長である私が、16年間のクリニック経営の経験を元に事務長に欠かせない5つのスキルをご紹介します。
この記事では安心してクリニックを託せる、事務長に相応しい人を見つける方法を紹介いたします。
これから事務長の採用を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
クリニックの事務長の役割とは
クリニックの事務長の役割は「経営サポート」と「現場の統括マネジメント」。
もう少し具体的に説明すると、事務長の役割とは以下のようなものになります。
- 院長と考えを共有し、院長の代理として経営をおこなうこと
- スタッフの管理やお金の管理など、事務業務全般を統括すること
- 院長の考えを理解し、院長とスタッフ・患者・業者との仲介者となること
- 「経営者の視点」と「スタッフの視点」の両方を持った上で、クリニックを発展させるための取り組みを計画・実行すること など
よって、事務長を採用し上記の役割を担ってもらうことで、次のメリットを得られます。
- これまで院長の手が回らなかった経営業務をおこなえる
- 経営者の視点とスタッフの視点を持ち合わせる事務長がいることで、クリニックに不足している点や、発展のために必要な取り組みが明確になりやすい。また、計画・実行しやすい。
- 院長と考えを共有する経営者がいることで、経営に関する相談ができる。
- 院長の負担が減り、診療に集中しやすくなる
では、上記のようなメリットをもたらしてくれる事務長を見つけるには、どのようなスキルに注目すれば良いのでしょうか。
事務長に必要な5つのスキル
では、事務長に必要なスキルをご紹介します。
事務長としての役割をこなすには、次の5つのスキルが必要です。
- マーケティングの知識
- 人事マネジメントの経験
- バイタリティがある
- 誠実な人柄
- 経営に対して当事者意識を持てる
順番に解説しますね。
1.マーケティングの知識
マーケティングは、クリニックを成長させるために重要な仕組み。「顧客に製品やサービスを売るための仕組みの総称」として理解しておくといいでしょう。
そして今の時代、クリニックの運営にあたってマーケティングの知識は必須です。
近年は、開業コンサルタントに依頼するなどして、マーケティング施策を試みるクリニックが増えてきました。
しかし、院長もしくは事務長のマーケティングの知識が足りていないために、「自分のクリニックにとって本当に必要なマーケティング」を実行できておらず、いまいち効果を感じられない場合が多いようです。
そこで事務長がマーケティングの知識を持ち合わせていれば、最適なマーケティングを行うことができ、経営の安定、さらに、他のクリニックとの差別化を図り、自身のクリニックを成長へと導けるでしょう。
2.人事マネジメントの経験
事務長のメインの仕事の一つとして、採用活動や勤怠管理、給与管理、保険や入退職の手続き、スタッフの教育などがあります。
こうした人事関係の業務をこなすには、
- 経営的視点や状況把握力
- トラブルが起きた際、本質を見極め解決する力
- スタッフ同士の良好な関係をつくるコミュニケーション能力
なども必要です。しかし、上記のようなマネジメント能力はすぐ身につくものではありません。
マネジメント能力は組織を支え、牽引するために重要なスキル。人事マネジメントの経験がある人の方が、仕事をよりスムーズに進めてくれるでしょう。
3.バイタリティがある
事務長は、医師である院長や看護師、その他スタッフの仕事以外の業務をおこないます。
つまり、仕事の幅が広く重責を担う役割でもあるため、業務をこなすバイタリティが必要とされるのです。
また、クリニックが発展できるよう、
- 競合クリニックの動向や世の中の流れを常に把握する
- スタッフや患者さんの声を汲み上げる
- クリエイティブな発想で新たな取り組みを提案する
など、クリニックを成長させようと意欲的に働きかけてくれる人材であれば、なおさら心強いでしょう。
4.誠実な人柄
一般的に「誠実な人」とは、たとえば以下のような人のことをいいます。
- 正直である
- 勤勉である
- 責任感が強い
- 思いやりがある
- 信頼できる
事務長には経営を任せることになるため、誠実な人柄であることは重要です。
誠実な人が事務長であれば、スタッフ間の関係性も良好に保ってくれますし、努力を惜しまないため、クリニックをより成長させてくれる可能性が高いです。
また、事務長は院長の心の支えとしても大切な役割を果たします。
院長は診療だけでなく経営にも責任を持たねばなりません。しかし、経営に関する理解者がいないと、誰にも相談できず、孤独になりやすいのです。
院長の考えや方針を理解しようとする姿勢や、クリニックに尽くそうとする心構えなどから、誠実な人柄であるかどうか必ずチェックしておくべきでしょう。
5.経営に対して当事者意識を持てる
事務長は、院長の代理として経営をおこないます。
そのため、院長と理念や目標をともにし、クリニックの経営を自分ごととして捉える「当事者意識」を持つことが重要です。その上で、クリニックをより良くしようと自発的に動くことも求められます。
当事者意識がないと、院長の医師にそぐわない判断をしてしまうかもしれません。また、「クリニックをより良くしよう」とする意識は薄れてしまい、最低限必要な業務しかおこなわない「受け身の業務」になってしまう可能性もあります。
こうした事態を防ぐために、経営に対してどれだけ真摯に向き合ってくれるか、採用時に必ずチェックしておきましょう。
妻と院長は、夫婦としてともに生活しているため、クリニックの業績がそのまま生活に反映されます。よって、必然的に当事者意識を持ちやすいのです。
他人に任せるよりも安心感につながり、診療にも専念しやすくなるでしょう。
事務長の採用には妥協も必要
事務長には5つのスキルが必要であるとご紹介しましたが、5つのスキルすべてを満たす人を見つけるのは簡単なことではありません。ある程度の妥協は必要です。
ただし、
- バイタリティがある
- 誠実な人柄
- 経営に対して当事者意識をもてる
この3点は、その人自身がもともと持ち合わせている要素が大きいため、クリニックを安心して託すためには最低限必要であると考えたほうが良いでしょう。
マーケティングの知識や人事マネジメントの経験は、あるに越したことはありませんが、私のように、事務長になった後から身につけることも可能です。採用時点で持ち合わせていなくても大きな問題はありません。
クリニック事務長の求人方法
それでは、事務長の求人方法を2つご紹介します。
- 求人サイトに掲載する
- 妻に事務長になってもらう
順番に解説しますね。
求人サイトに掲載する
まず、求人サイトに掲載する方法についてご紹介します。
はじめに、求人広告を出すメディアは、ハローワーク、求人誌、自治体広報誌などさまざまですが、事務長を探すなら求人サイトに掲載するのがおすすめです。理由は、常勤を希望する求職者は、求人サイトで求人情報を探す傾向があるからです。
そして、求人サイトに求人情報を掲載する際は、魅力的な面ばかりを記載してはいけません。
厳しい面も正直に伝えることで、向上心を持たない人を採用する可能性は減り、採用後に「こんなはずじゃなかった」と辞退されることもなくなるでしょう。
妻に事務長になってもらう
次に、妻に事務長になってもらうことについてご紹介します。
実際私は院長の妻であり、事務長です。そして、日々事務長としての業務をこなす中で、「院長の妻こそ事務長に最適である」と感じています。
主な理由は以下の2つです。
- 妻は他人よりも当事者意識をもって業務をおこなえるから
- 院長にとって妻は誰よりも信頼できる存在だから
先述した通り、当事者意識がある人の方が、責任を持って経営をおこなってくれることは間違いありません。また、院長とその妻は夫婦としての大きな信頼があります。
よって、妻に事務長をお願いするのが、院長にとって最適な方法と言えるでしょう。
ご自身の妻に事務長の役割をお願いする際は、事務長の役割や仕事内容はもちろんのこと、必要な準備や今後の生活についてもきちんと話し合っておくことをおすすめします。
なお、先に紹介した5つのスキルを全て持ち合わせていなくても大丈夫。私はもともと専業主婦で、マーケティングの知識も、人事マネジメントの経験もない状態から事務長になりましたが、問題なく業務をこなしています。
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事務長の給料・年収の相場は?
事務長を採用するにあたって、どのくらいの給与を支払うべきかは、気になるところですよね。
求人情報やWebサイトなどを調査した結果、クリニックの事務長職の年収は550万円~1000万円。クリニックの規模や、個人か法人かなどによって変わるため、年収の幅は大きいようです。
事務長を採用するため経費は増えますが、いい人材に出会えれば、結果的に院長自身やクリニックに良い効果をもたらしてくれるでしょう。
事務長の採用で経営を楽に。業績UPへつなげよう
この記事では、事務長に必要なスキルを5つご紹介しました。
- マーケティングの知識
- 人事マネジメントの経験
- バイタリティがある
- 誠実な人柄
- 経営に対して当事者意識を持てること
事務長の存在は院長の負担を減らし、業績アップにつなげるなど、クリニックにさまざまなメリットをもたらします。ただし、人材の見極めが重要です。
現在、事務長の採用を検討している方は、ぜひご紹介した内容を参考に採用をおこなってみてください。
なお、配偶者がいらっしゃる場合は妻にまかせることも一案です。
未経験から事務長になることに抵抗を感じる方は多いと思いますが、こちらのウェビナーをご覧いただければ、きっと奥様にも安心していただけるでしょう。
この記事を読んで、ご自身の妻に事務長をお願いしてみようと思った方は、ぜひ一度ご覧ください。