クリニック経営において、オンライン上の評判や信頼性は集患力を高めるために重要な要素となっています。
特にGoogleマップ(Googleビジネスプロフィール)の口コミは、患者さんがクリニックを選ぶ際の重要な判断材料となるため、適切な管理が求められます。
しかし、口コミの返信に十分な時間を割くのは難しいと感じる経営者や広報担当者も多いでしょう。また、ネガティブな口コミが投稿された際に、どのように返信をすれば良いか悩みを抱える方も少なくありません。
そういった際に、役立つのがAI(人工知能)の活用です。本コラムでは、AIを活用したGoogleマップの口コミ管理の基本テクニックをご紹介します。少ない労力で大きな成果を上げるためのヒントをお伝えしますので、ぜひご参考にしてください。
生成AIサービスの設定
生成AIサービスを導入することで、口コミの返信が効率的に行えるようになり、時間と労力を減らすことができます。生成AIサービスにはいくつかの種類がありますが、本コラムでは「ChatGPT」を例に解説します。
ChatGPTにアクセスする
ChatGPTは、OpenAI社が開発・運用する生成AIサービスです。近年の生成AIブームの草分け的存在となっています。
ChatGPTには、無料プランと有料プランがありますが、無料プランは会員登録不要で、誰でも利用できます。PCブラウザのほか、スマートフォンアプリでも利用可能です。
ChatGPTにアクセスしたら、画面の下にあるメッセージボックス内に指示文(プロンプト)を与えます。すると、ChatGPTが自動的に文章を生成してくれます。
有料版にアップグレードする
ChatGPTは無料で利用できますが、無料版は利用可能モデルや回答スピードに制限があります。より早く、正確な文章を生成したい場合は、有料版(ChatGPT Plus)の切り替えがおすすめです。
無料版と有料版の違いは以下のとおりです。(2024年8月時点)
機能 |
無料版(Free) |
有料版(Plus) |
費用 |
無料 |
20ドル |
利用可能モデル |
GPT-3.5、GPT-4o mini |
GPT-3.5、GPT-4、GPT-4o |
入力文字数制限 |
約10,000文字 |
約25,000文字 |
回答文字数制限 |
約2,048文字 |
約25,000文字 |
回答スピード |
混雑状況による |
高速 |
有料版を利用するには、以下の手順で設定を進めてください。
- 公式サイトにアクセス:ChatGPT公式サイトにアクセスし、サインアップをクリックします。
- アカウントの作成:メールアドレスとパスワードを入力し、アカウントを作成します。
- プランのアップグレード:サインアップ後、画面左下の「Upgrade plan」をクリックします。個人で利用する場合は「Plus」、チームで利用する場合は「Team」を選択します。
- クレジットカード情報を入力:支払いはクレジットカード決済のみとなりますので、必要情報を入力してください。登録を終えると、アップグレードが完了します。
初期設定
アカウント作成が完了したら、次にAIサービスの初期設定を行います。
- 言語設定:使用する言語を設定し、AIが適切に応答できるようにします。
- 利用プランの選択:ChatGPTは無料でも利用できますが、より高度な文章を生成したい場合は有料プランがおすすめです。
生成AIに入力するコツ
生成AIを活用して効果的な口コミ返信文を作成するためには、入力する内容の質が重要です。生成AIに適切な指示を与えることで、より精度の高い返信文を作成することができます。ここでは、生成AIに質問や指示を与える際のコツをご紹介します。
具体的に指示をする
生成AIに対して曖昧な指示をすると、期待した答えが得られないことがあります。そのため、具体的に指示することが大切です。
例えば「いい感じの返信文を作成してください、」といった曖昧な指示ではなく、「眼科クリニックの院長として、相手の意見を尊重した上で、誠実さが伝わる返信文を作成してください。」といった具体的な指示文を与えます。
それにより、生成AIがより正確な回答を提供してくれるようになります。回答内容のイメージが異なる場合、追加で指示を与えることで、生成AIが文章を見直してくれます。
シンプルな言葉を使う
生成AIに対する指示は、できるだけシンプルな言葉で行うことが推奨されます。難しい言葉や専門用語を使用すると、生成AIが正確に理解できず、期待とは異なる返信文が生成される可能性があります。
例えば、医学的な専門用語を使う代わりに、誰でも理解できるような簡単な言葉を選びましょう。シンプルな言葉を使うことで、生成AIは意図を明確に把握し、より的確な返信文を提供してくれるでしょう。
コンテキストを提供する
コンテキストとは、「状況・背景」のことです。生成AIに対して指示を与える際は、コンテキストを意識することが重要です。例えば、「患者さんの待ち時間を短縮する方法を考えてください。」と指示する際に、「現在の待ち時間は30分で、診察室が2つしかありません。」というように、クリニックの状況を伝えます。
すると、生成AIはより正確に状況を把握でき、より具体的で現実的な提案をしてくれるようになります。
AIによる口コミ分析・返信文の作成
生成AIを活用することで、Googleマップに寄せられた口コミに対して適切な返信文を作成してくれます。ここでは、自院の口コミに対する返信文の作成手順を解説します。
自院の口コミを確認する
生成AIを利用する前に、まずは自院のGoogleマップに寄せられた口コミを確認します。ポジティブな口コミ、ネガティブな口コミの両方をしっかりと把握することで、患者さんの声を全体的に理解し、どのような対応が必要かを見極めることができます。
ポジティブな口コミは、自院の強みや患者さんに支持されている点を再確認できますし、ネガティブな口コミは、改善すべき点や課題が明確になります。
口コミをAIで分析する
次に、返信文を作成したい口コミをAIサービスに入力して分析します。口コミの内容をコピー&ペーストするだけで、AIは迅速に口コミを分析してくれるため、問題点や改善点が明確になります。
また、AIを利用することで、複数の口コミを短時間で分析でき、クリニックの強みや課題を把握できます。例えば、受付スタッフの対応に不満があることがわかった場合、スタッフの育成や指導に力を入れたほうが良いといえるでしょう。これらの分析内容をスタッフと共有することで接遇やクリニック業務の改善につながり、患者さんの満足度を高めるための具体策を考えることができます。
口コミの返信文を考えてもらう
次にAIに返信文を作成してもらいます。いただいた口コミを生成AIの指示欄にコピー&ペーストします。その際、どのような返信文を考えてほしいか具体的に指示を与えます。
例えば、「専門用語は使わない」「相手の意見を肯定する」「今後の改善策を述べる」などです。AIを活用することで、口コミの内容にあわせた適切な返信文を効率的に作成できます。
調整後、Googleマップに投稿する
生成AIが回答した文章はそのまま投稿せず、人間の目でチェックした上で必要に応じて調整します。AIが生成した文章は言い回しに違和感があったり、不適切な内容が含まれていたりするケースがあるため注意しましょう。
調整後、内容に問題がなければ、Googleマップに投稿します。このプロセスを通して、患者さんに対する適切かつ誠実な対応ができ、クリニックの評判を守ることができます。
よくあるネガティブ口コミのパターン
クリニックのGoogleマップでは、患者さんからネガティブな口コミをいただくことも少なくありません。しかし、そうした口コミであっても、真摯に受け止め、改善へとつなげる姿勢が大切です。
ここでは、よくあるネガティブな口コミのパターンと、それぞれに対する学びを紹介します。
診療までの待ち時間が長い
患者さんからよく寄せられる不満の一つが、診療までの待ち時間の長さです。例えば、予約をしていたにもかかわらず、1時間以上待たされたというケースや、待合室が混雑していて落ち着かなかったという声が挙げられます。
このような不満を放置すると、患者さんのストレスを増大させ、クリニックの評価を下げる原因となります。こうした状況を改善するためには、待ち時間を短縮する施策の導入が必要です。例えば、オペレーションの見直しや、電子カルテシステムの導入により業務効率化を図ることで、待ち時間の短縮を図ることができます。
スタッフの対応が悪い
スタッフの対応に関する不満もよくあるネガティブな口コミの一つです。受付スタッフの対応が冷たかった、看護師が無愛想だったという声は、クリニック全体のイメージを悪化させる要因となります。
このような口コミが頻繁に見られる場合、スタッフ教育の強化が必要です。具体的には、接客マニュアルを整備し、患者さんに対する接遇を改善するためのトレーニングを定期的に行うことが効果的です。これにより、スタッフの接遇レベルが向上し、患者さんが快適に過ごせる環境が整うでしょう。
診療内容への不満
診療内容に対する不満もネガティブな口コミに多く見られます。例えば、医師の説明が不十分だった、治療の結果に満足できなかったという声が上がることがあります。このような不満は、患者さんとの信頼関係を損ねるだけでなく、再来院の意欲を低下させる原因にもなります。
これを改善するためには、患者さんへの丁寧な説明を徹底し、治療の前後で十分なコミュニケーションを図ることが重要です。また、フィードバックを基に診療プロセスを継続的に改善することで、患者さんの満足度を高めることができます。
設備・サービスに対する不満
クリニックの設備やサービスに対する不満も、ネガティブな口コミの原因の一つです。例えば、院内が不衛生であると感じた、予約が取りづらかったという声が寄せられることがあります。
これらの問題に対応するため、定期的な施設の清掃やメンテナンスを行ったり、オンライン予約システムを導入したりといった、設備・サービスの改善が必要です。これらの対策を講じることで、患者さんの満足度向上につながります。
まとめ
AI入門ガイドシリーズでは、AIを使ったアカウントの作成から初期設定、具体的な質問の仕方、AI分析による返信文作成までの基本的な手順を解説しました。Googleマップの口コミ管理は、クリニックの評判を高めるために重要な要素です。生成AIを活用することで、口コミ管理を効率化し、適切な対応が可能になります。
ネガティブな口コミに対しては、いくつかのパターンを理解し、適切な改善策を講じることで、患者さんの満足度を向上させることができます。AIを賢く活用して、日常業務の中での負担を軽減しつつ、クリニックの評判をしっかりと守っていきましょう。