あなたは流行っているクリニックの秘密を知りたいと思っているのではないでしょうか。
高級ブランドが使っているブランディング戦略はクリニック経営にも効果があり、患者さんを増やすことができます。
近年になって医療機関でもブランディングの重要性が叫ばれるようになりましたが、実際何をすれば良いのかわからない方も多いと思います。
そこで本記事では、私が16年間のクリニック経営で培ったクリニックのブランディング戦略を、実例と共にお伝えします。
この記事を読めばクリニックのブランディングの考え方と、具体的な施策がわかります。
作者プロフィール:鈴木恵子
夫のクリニック開業を機に、知識ゼロのまま事務長に就任。以来、17年間クリニック経営を第一線で担っています。
一般経営学をオンラインスクールで学びながら、医療業界に合わせた独自の経営手法を確立し、年間2万3千人以上の患者さんを受け入れる人気クリニックに成長させました。
また、新卒社員の離職率は過去3年ゼロ、育児休暇後の復帰率も100%であり、患者さんにもスタッフにも愛されるクリニック経営を実践しています。
クリニックにおけるブランディングの重要性
ブランディングとは
ブランディングとは、「ブランドを確立する」という意味で、「選ばれるための施策」です。
広告や営業により患者さんに自院へ来院してもらうのではなく、患者さんに
「あのクリニックで治療を受けたい!」
と思ってもらえるような付加価値を提供していくことです。
ブランディングのメリット
ブランディングのメリットは、なんと言っても患者さん自らが自院を選んでくれることです。
広告を打たなくても患者さんを集められるので、その資金を医療サービスの向上に使うことができます。
その結果、
患者さんの満足度が上がり、良い口コミが増え、さらに集患力が高まる
といった好循環が期待できます。
ブランディングの根幹は経営理念
こんなふうに思った方は一旦落ち着いてください。
ブランディング戦略は経営理念に基づいた一貫性のあるものでなければなりません。
私のブランディング戦略は、私のクリニックの経営理念に基づくものであり、必ずしもあなたのクリニックのブランディングに役立つものとは限らないのです。
あなたの医院に最適なブランディング戦略の答えは、あなたの医院の経営理念の中にあります。
経営理念を実現するために、何ができるかを徹底的に考える。
既存の常識を覆し、積極果敢にチャレンジする。
その結果が競合との差別化になり、ブランドとして確立されるのです。
経営理念の策定については、こちらの記事を参考にしてください。
クリニックブランディングに必要な3つの要素
経営理念が固まったところで、次にクリニックのブランディングに大切な考え方をご紹介します。
クリニックは一般企業のように価格勝負はできないため、「低価格で高品質」といった価格でのブランディングはできません。
ではどのようにブランディングすれば良いのでしょうか。
私の16年間の医院経営の経験からたどり着いた答えが、以下の3つの要素によるブランディング です
- 権威性
- 先進性
- 共感性
権威性
まず1つ目が権威性です。
私たちが提供する「医療」は人々にとって一番大切な「健康」を守るためのものです。
患者さんはできるだけ信頼できる医療機関を選びたいと考えています。
お医者さんが信頼できるか否か。
その指標の1つが権威性なのです。
先進性
医療業界に限らずですが、
「新しい技術・仕組み = 優れている」
という一般認識があります。
最新の医療機器や治療法を扱っていることを患者さんに説明するだけでも
と満足してもらえ、医院の評価が上がります。
共感性
最後に共感性です。
現代社会では、
・地域とのつながりの希薄化
・核家族化の浸透、
・離婚・別居率の増加
など、人とのつながりが希薄になり「孤独感」を感じる場面が増えてきています。
そんな状況下において、患者さんに心の底から共感し、心身のトラブルを共に解決しようとするクリニックの存在は非常に大きな意味をもちます。
当院でのブランディング具体例
それでは当院で実際に行なっているブランディングの事例をご紹介いたします。
当院では「より安全で最善の医療を目指して」を経営理念とし、その実現に向けた様々な施策がブランディングへとつながっています。
権威性ブランディング
学会への積極参加
学会へ参加することで、日々の医療研究や、外部から最新情報を積極的に得ていることを患者さんにアピールできます。
こんな世間のイメージを払拭する意味でも有効です。
事務長は院長やドクターが安心して学会へ参加できるよう、院長不在でも医院がしっかり機能できる体制を整えることが大切です。
日頃から看護師・スタッフの教育にも注力し、経営理念を共有した強固なチームづくりが鍵になります。
眼科医としての地域貢献
当院では地域貢献として
- 視覚障害者推進協議会の会長
- 学校保険委員
- 静岡県眼科医会理事
を務めています。
どちらも目の病気や障害に対して正しい知識・対処法を皆様に身につけて頂くために、行政や他の市内の病院と協同で行っています。
このような地域に根差した社会貢献の取り組みが地元住民からの支持をいただき、当院のブランド要素になっています。
先進性ブランディング
安全性を重視した医療を最優先事項とする
当院は経営理念に「より安全な医療の提供」を掲げています。
安全とは提供する医療はもちろんのこと、患者さんが院内で転倒しないように環境を整えることなど、患者さんの来院からお帰りになるまでの全てのプロセスにおいて細部まで徹底的に気を配ることです。
形だけの理念ではなく院長からスタッフまで、一人一人自らが考え、理念を追求することを実践しています。
この一体感を持った安全の追求こそが、当院の唯一無二のブランディングとなっていると感じています。
医療業界の常識にとらわれない経営
当院では医療業界の常識にとらわれず、「患者さんのためになる」と感じたら積極的に改革を実施しています。
例えば門前薬局を持たない点です。
クリニックの門前薬局が当たり前になっています。
しかしそれでは患者さんは門前の薬局でしか薬を処方してもらうことができません。
これは完全に医院と薬局の都合であり、患者さん本意の医療提供ではありません。
当院では「かかりつけ薬局」制度でかかりつけ薬局の薬剤師さんが患者さんの服薬状況をまとめて管理します。そうすることで薬の重複や副作用などを管理することができます。かかりつけ薬局制度は患者さんに安全な医療を提供するための大切な制度です。
最新の医療機器の充実
当院では設備投資を積極的に行い、最新の医療機器を揃えています。
患者さん目線では
というイメージがあります。
高度な医療提供が可能なのは事実ですし、より効率的な経営が可能になるでしょう。
医療機器の更新には導入による「患者さんのメリット」を考えることも非常に大切です。
例えば「施術の痛み」を低減できる場合です。
患者さんとしては「病院=痛い」という負のイメージがどうしても付き纏います。
そのため「痛くない施術」を提供できれば大変大きな付加価値となり、強いブランディングにつながります。
患者さんを核とした医療提供
当院では患者さんへの最善な医療提供を最優先事項とし、様々な病院と連携しています。
自院へ無理に囲い込むのではなく、自院だけで解決できない症状については積極的に大学病院や総合病院を紹介しています。
これにより患者さんにとって最善の医療を提供することができます。
患者さんにも誠意を持って説明をすることで、当院の姿勢が理解され、高い口コミにつながっています。
病診連携の構築
当院は自院の専門である眼科だけでなく、他科の医院との病診連携も積極的に行っています。
病診連携は患者さんへ適切な医療サービスの提供が可能になることに加え、他医院との信頼関係や関係強化にもつながります。
医師同士の信頼が高まると、院長同志、お互いの医院を受診したりすることもあります。
医師も受診する医院となることで周囲からの信頼性が上がり、1つのブランディング効果をもたらしています。
共感性ブランディング
院長の誠実な診療態度
院長が誠実に患者さん一人一人と向き合うことで共感が生まれ、かかりつけの医院として通っていただけるようになります。
当院では病状が心配な患者さんにおいては休診日の日曜日や祝日でも診察をして経過観察を行います。
経営理念のPR
経営理念をPRし、当院の理念を患者さんにも理解してもらうことも大切です。
経営理念を追求すれば、その反面、理念に添わない医療サービスを求める患者さんには好意的に映らず、悪い口コミをいただいてしまう可能性もあります。
例えば私たちは「より安全で最善の医療を目指して」を最重要の理念に掲げていますが、現代の人々は忙しく、とにかく早い診療を求めている場合がもあります。
その患者さんたちに私たちの「安全な医療」の考えや重要性をPRし、安全な治療のメリットを理解いただくことで、サービスに満足してもらうことができます。
しかし、全ての患者さんのニーズを満足することはできません。
大切なのは、自院の提供する価値をしっかりと患者さんに理解してもらうことなのです。
顧客目線での価値提供
当院を来院いただく患者さんの目線に立ち、スタッフも一番にかかりたくなるような医院の実現を追求しています。
清潔で快適な院内環境を整備するところから始まり、全てのスタッフが
といったことを常に考え行動しています。
例えば、清潔で快適な院内環境の維持はその一例です。
院内が清潔でないと、患者さんの患部に触れる医療機器も清潔に保たれていないのでは?という不安を患者さんは抱くのではという考えに基づき、「なぜ院内を清潔にするのか」という理由までスタッフ全員が理解しています。
この患者目線の考えにより、常に快適な環境が維持できています。
まとめ
本記事ではクリニックのブランディングについてご説明しました。
ブランディングは自院の経営理念にもとづき、次の3つの観点から要素から戦略を考えることが重要です。
- 権威性
- 先進性
- 共感性
ブランディングを実現するには全てのスタッフの連携が必要で、人材育成も大変重要になってきます。
当ブログでは人材育成についても詳細にご紹介しておりますので、そちらも併せて参考にしていただければ幸いです。
>>開業医の集患戦略・人材育成編