「電子カルテの導入を検討したいけど押さえるべきポイントは?」
「電子カルテ導入後に失敗しないためにはどうすればいい?」
このように、電子カルテ導入に向けたお悩みをお持ちではないでしょうか。
日経メディカルOnlineが実施した「電子カルテアンケート」によると、電子カルテを導入した約半数の開業医が何かしらの不満を抱えていることがわかります。
参照:第14回【開業医286人に聞いた】今使っている電子カルテの不満点とNPS分析|日経メディカルOnline
電子カルテはクリニック運営の業務効率化をサポートするものです。それにもかかわらず、かえって手間が増えてしまっては本末転倒です。
本記事では、電子カルテ導入前に押さえるべきポイントとして、「目的」「予算」「現在の運用方法」といった3つのポイントをそれぞれ解説します。
こちらの内容を参考していただくことで、最適な電子カルテ導入を実現していただけたら幸いです。
導入の目的を整理する
まず電子カルテ導入によって何を実現したいのか、具体的にどのような業務を効率化したいのかといったように、導入の目的を整理することが大切です。
目的を整理しないまま、電子カルテ導入を決めるのは、行き先を決めずに旅行にいくようなもの。旅行ならハプニングも楽しめますが、クリニック運営においては致命的な失敗になりかねません。
一度システムを導入してしまえば容易に切り替えもできませんので、慎重に進めましょう。
なぜ目的を明確にする必要があるのか?
電子カルテを導入する目的が明確でなければ、導入後に「操作性がイマイチだった」「当院の運用に必要な機能が不足していた」といったように、不満や問題が起こりがちです。
導入すると決めたら、いきなり製品選びに目を向けるのではなく、具体的にどの業務を効率化したいのか、そのために必要な機能はなにか、といったように目的を明確にすることが大切です。
イメージが湧かないときは他院を参考にする
導入の目的を整理する際、具体的なイメージが湧かないときは、自院に近い規模感のクリニックを見学させてもらい、そこで直接ヒアリングしてみるのもおすすめです。
たとえば、
- どのような点が改善されたか
- 不満に感じている点はなにか
- もし再度導入を検討するならどのようなことに注意するか
などをヒアリングさせてもらうことによって、具体的なイメージが湧いてくるでしょう。
電子カルテメーカーの担当者に直接質問するという選択肢もありますが、メーカー担当者は基本的に自社製品の契約に繋げることが目的なので、どうしても主観が入り客観性に欠くことがあるため、注意が必要です。
電子カルテの予算を決める
目的が明確になった後は、次に電子カルテの予算を決めます。予算をあらかじめ決めておかなければ、最終的に予算を大きく上回ってしまう可能性もあります。すでに導入前の大詰めの段階であれば、直前のキャンセルも難しいでしょう。
そのためメーカー担当者には、初回打ち合わせ時に予算感をしっかりと伝えておくことが重要です。ここでは予算を決める上で注意すべきポイントを3つ紹介します。
システムの特性を理解する
電子カルテのシステムは大きく「オンプレミス型」「クラウド型」の2つに分類されます。オンプレミス型は、自院のサーバーにシステムを設置するタイプです。イチから設計できるため、自院にとって最適な電子カルテ導入を実現できます。
クラウド型はインターネット環境を利用してベンダーが提供するサービスを利用する形態です。オンプレミス型に比べて自由度は下がりますが、導入のハードルが低い点が大きなメリットです。それぞれ特徴が異なるため、自院の特性に合わせて検討するようにしましょう。
自院で必要な機能を整理する
システムを決める際には、自院でどのような機能が必要なのかを整理します。システムによって機能や特徴が異なるため、それぞれ比較した上で、必要な機能が備わったシステムを選びましょう。
どれが自院にとって必要な機能なのかわからないといった場合は、
- 最低限必要な機能
- あると便利な機能
- なくても問題がない機能
といったように分けると決めやすくなります。
ただし、電子カルテ導入が初めての場合は、導入後に「必要と思っていたけれど、実際はあまり使わなかった」あるいは、「いらないと思っていたけれど、やはり必要だった」と感じることも少なくありません。
システムによっては機能の追加などカスタマイズできるものがありますので、想定外が起こり得ることも念頭に置けば、なにかあっても慌てずに済みます。
トータルコストをシミュレーションする
システムを選ぶ際には、トータルでどれくらい費用が掛かるかあらかじめ試算しましょう。たとえば、クラウド型の電子カルテはシステムによって、月額費用や機能が異なります。
また使用する機能数によって費用が変わることもあり、オプションや機能を追加するうちに月額費用が割高になるケースもあります。
また支払いに掛かる直接的なコストだけではなく、サポート面なども含めてコストが適正かどうかを判断することが大切です。もし、予期せぬ事態によってシステムに不都合が生じた際に、メーカーや担当者がどこまで対応してくれるかは確認しましょう。
中にはメールや電話でしか対応していない場合や、土日祝日・平日18時以降は対応していない場合も少なくありません。システムの不具合が解消されなければ、その間の業務に支障をきたしてしまいます。
対応範囲に対して費用が適正かどうかも含めて、トータルコストをシミュレーションしましょう。
現在の運用見直し
そもそも電子カルテはツールでしかありません。電子カルテを導入したからといって、すべてが自動化されるものではなく、現場スタッフが使いこなしてこそパフォーマンスを発揮します。
もし使い勝手が悪いものであれば、かえって業務効率を下げる要因にもなりかねません。電子カルテを導入して、業務効率を最大限に高めるためには、現在の運用方法を見直す必要があります。
業務を可視化し電子化できる部分を抽出する
まずは、現在の業務を可視化(見える化)します。たとえば、保険証を確認するタイミング、処方箋を印刷するタイミングなどを可視化し、電子化した場合どのような運用になるかを確認していきます。
また、本導入前には試験導入も必ず行うようにしましょう。実際にシステムを試してみることで致命的な失敗を防げますし、その時点で気づきや課題があればメーカーに相談することもできます。
スタッフの意見を参考にする
電子カルテを導入する際は、院長や事務長の独断で決めるのではなく、スタッフの意見も参考にするようにしましょう。なぜなら、システムは全員が使うものであるため、それぞれの業務において操作性が良いものでなければならないからです。
システムを導入することはあくまでも手段ですので、導入することばかりに意識が向いてしまわぬように、スタッフの意見も参考にしながら進めると良いでしょう。
まとめ|電子カルテ導入に向けて事前準備が大切
クリニックが電子カルテを導入する際には、いきなりメーカーや製品から選ぶのではなく、まずは自院がどういった運営に変更したいか課題や目的を明確にすることが大切です。
その上で、運営体制をどのように見直すかを踏まえて、必要な機能を検討することで自院に見合ったシステムを検討しやすくなります。
電子カルテは、一度導入すればその後何年と使っていくものなので、導入する際は慎重に進めるようにしましょう。
もしイメージがわかなければ、システムによってはデモンストレーションを行ってくれる場合もあります。ひとつの基準となるため、その後の比較検討がしやすくなります。詳しくは各ベンダーまで問い合わせてみてください。
今回ご紹介した内容を踏まえて、ぜひ最適な電子カルテ導入を実現していただけたら幸いです。