「クリニックで電子カルテ導入を検討しているけど、どうやって決めたら良いかわからない」このようなお悩みをお持ちではありませんか。
電子カルテは数多くのシステムがあるため、どのシステムが自院に合うのか、そもそもシステム選びにおいて誰の意見を参考にすべきか迷われている方も多いでしょう。
厚生労働省の調査によると、診療所・クリニックにおける電子カルテ普及率は50.8%となっており、まだまだ完全な普及には遠い状況です。
こうした状況から、電子カルテをどのように導入していくべきかといった「判断基準」に悩みを抱えている方が多いと感じています。
結論からお伝えすると、電子カルテを導入する際に、機能やメーカーといったシステム先行で選択すると失敗する可能性が高くなります。導入に失敗しないためには、スタッフの意見も参考にしながら進めることをおすすめします。
本記事では、システム先行が失敗する理由と、スタッフ先行がおすすめの理由について詳しく解説します。ぜひあなたのクリニックの電子カルテ導入にお役に立てば幸いです。
システム先行の電子カルテ導入が失敗する理由
電子カルテを導入する際メーカー名や機能の多さだけで決めてしまうと、導入後に「思ったのと違った」「もっとこういう機能がほしかった」といったように不満がでることが少なくありません。
なぜシステム先行で導入を進めると失敗するのか、その理由について3つ解説します。
スタッフによってITリテラシーに差がある
いくら便利な機能が豊富な電子カルテでも、現場のスタッフ全員が使いこなせなければ意味がありません。特にITツールを操作するスキル「ITリテラシー」は、人によって差があります。たとえば、自分のスマホでもSNSやニュースチェックが中心の方もいれば、動画や画像編集までスマホ1つでなんでもできる人がいます。
ITリテラシーに差があることを理解せずに、「みんな同じように使いこなせるだろう」という思い込みで進めてしまうと、導入後に「使いこなせない」「紙カルテの方がはかどる」といった不満が起こりやすくなります。
さらにITリテラシーが高い特定スタッフにだけ業務が集中してしまい、業務負荷が増えることで就業意欲低下につながりかねません。
スタッフが電子カルテに対して抵抗感を持っている
人間には現状維持バイアスというものがあり、新しいことに対して少なからず不安を覚えるものです。そのため、電子カルテを導入すると決めた場合、「紙カルテで十分」「いまさら新しいことを覚えたくない」「パソコン操作は苦手」といったように、抵抗感を持つスタッフが出てくることもあるでしょう。
もちろん、経営者である院長に権限があるわけですが、押し付けるように導入を進めてしまうと、思わぬ反感に合うこともあります。またスタッフが主体的に取り組まなければ創意工夫が生れず、宝の持ち腐れとなってしまいます。
現在の業務とシステムが合っていない
現在の業務の進め方とシステムの仕様・機能が合っていないことで導入が失敗するケースも多いです。この場合は、院長が事務方の業務フローを正しく理解できていないまま、導入を進めたことで起きるケースです。
特に「他のクリニックでも使っているから」「有名メーカーだから」という理由だけでは、自院に合っているかどうかわかりません。電子カルテシステムは一度導入してしまえば、その後何年間と使い続けることになりますので、自院に最適かどうかは事前に見極める必要があります。
スタッフ先行で電子カルテ導入を進める際のポイント
多種多様な電子カルテの中から、自院にぴったりの製品を見つけるのは容易ではありません。システムごとに特徴・費用・機能などを比較検討しても、結局どれが良いのかわからなくなることも多いはずです。
電子カルテを導入する際は「システム先行」ではなく「スタッフ先行」で進めるようにしましょう。ここからは、スタッフ先行で電子カルテ導入を進める際のポイントを5つ解説します。
スタッフに電子カルテ導入の背景・メリットを伝える
スタッフには電子カルテ導入の背景・メリット、電子カルテを導入することでどんなクリニックにしていきたいかなどをきちんと伝えることが大切です。
人は新しいことに不安を抱くものなので、事前周知がなく突然「来週から電子カルテを導入します」と言われても、現場の混乱を招くことになりかねません。
電子カルテ導入を決定した段階で伝えることで、スタッフは本格稼働までに心の準備ができます。その際、電子カルテ導入はスタッフにとってもメリットであることを中心に伝えると理解が得られやすくなります。
たとえば、
- 時短になるので慌てずに済む
- 今までよりも仕事が早く終わる
- オーダリングシステムでエラー回避できる
などが挙げられます。
導入前にスタッフに意見を求める
電子カルテはあくまでもツールです。実際に業務効率が向上するかどうかは、現場スタッフの運用力に掛かっています。そのため電子カルテの選定は、院長や事務長だけで決めるのではなく、スタッフの意見も必ず聞くようにしましょう。
- もっとこういう方が使いやすい
- この機能は無くても問題ない
など、率直な意見をもらうことで、より自院に合ったシステムを導入できます。
また、電子カルテ導入検討段階で積極的にスタッフを巻き込むことで、当事者意識が芽生え、導入後も前向きに取り組んでくれるようになります。
注意点としては、あくまでもスタッフの意見は参考に留めることです。最終的な意思決定は経営者である医師と事務長が、クリニックの経営計画に基づいて合理的に判断することが重要です。
パソコン操作が苦手なスタッフでも使えるか確認する
導入するシステムの候補がある程度絞られたら、ベンダーの担当者にデモンストレーションなどを依頼し、パソコン操作が苦手なスタッフでも十分に使いこなせるかどうかを確認します。
いくらハイスペックで便利な機能が備わっているシステムでも、操作画面が見にくかったり、設定方法が複雑だったりすると、操作についていけないスタッフが出てきます。全員が使いこなせなければ、特定のスタッフに業務負荷が掛かることになりかねません。
逆に「うちはベテランスタッフが多いから電子カルテはどうせ使いこなせない」と決めつけるのも良くありません。総務省が実施した「情報通信白書」によれば、スマートフォンやタブレットの利用状況において、「よく利用している」と回答した人は、50代は84.3%、60代は55.5%となっています。
はじめから使いこなせないだろうと決めつけるのではなく、みんなが使いこなすためにはどういった電子カルテだと良いか?と前向きに考えることで、候補が絞り込みやすくなります。
ベンダーのサポート体制が十分に備わっているか確認する
ベンダー側のサポート体制は必ず確認するようにしましょう。
たとえば以下のような内容は確認が必要です。
- 専任担当者がつくのか
- 対応可能時間は何時までか
- 土日祝日は対応しているか
クリニックによっては土日診療している場合もあるため、万が一システムトラブルが発生した場合にどのように対処を進めるかあらかじめ想定しておくことが重要です。
また操作方法がわからない場合に担当者が直接来てくれる場合やリモートサービスがあれば安心ですが、中にはメール・電話のみの対応になっていることもありますので注意が必要です。
定期的に勉強会を設ける
電子カルテ導入は、導入自体がゴールではありません。導入後に業務生産性が向上し、患者さんを一人でも多く診れるようになり、満足度が向上することが目的です。
その目的を実現するために、電子カルテ勉強会を開催するなどインプットの場を設けることが大切です。システムベンダーによってはデモンストレーションや勉強会を開催してくれる場合もあるため、導入後の活用・運用について一度相談してみるのもおすすめです。
まとめ|電子カルテ導入を成功するにはスタッフの協力が必要
本記事では、クリニックに電子カルテを導入する際は、システム先行で選ぶのではなく、スタッフ先行で進めることの重要性を解説しました。
電子カルテは事務スタッフを含めてクリニックで働く全員が使うシステムです。院長や事務長の視点と、スタッフの視点では着眼点が異なることも多いため、スタッフの意見を参考にすることで、導入後の失敗防止にも繋がります。
クリニック経営において電子カルテ選びは非常に重要な経営判断です。あらゆる角度から検証し、納得のいくシステム導入を実現しましょう。本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。