「電子カルテを導入しても、ほとんどのクリニックが使いこなせていない」このようなことを聞いたことはありませんか?
こうした話から、電子カルテの導入に興味・関心はあるものの、なかなか導入に踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、電子カルテ運用の成功のカギを握る2つのポイントについて解説します。当院も電子カルテを導入して現在の形になるまで紆余曲折ありましたが、今回紹介するポイントを知っていればもっとスムーズに運用出来たでしょう。
ですので、これから電子カルテを導入したいと考えている方や、導入したばかりで壁にぶつかっている方はぜひ参考にしてください。
多くのクリニックが電子カルテを使いこなせていない
電子カルテを導入したクリニックの多くが「使いこなせていない」と感じているようです。中には、レセコンやオーダリングでしか使っていないといった声も少なくありません。
日経メディカルが実施した電子カルテに関するアンケートによると、「現在使っている電子カルテの不満」に対して、1位がサポート面(12.3%)、2位が操作性(11.0 %)という結果になっています。
この結果からも、いくら豊富な機能を備えた電子カルテを導入したとしても、実際には多くのクリニックが電子カルテの機能を十分に活用しきれていないことがわかります。
なぜ電子カルテを使いこなせないのか
そもそも電子カルテを使いこなせない理由としてはどんなことが挙げられるでしょうか。当院でもこれまでに、数回にわたって電子カルテシステムを変更してきた経緯がありますが、主な要因としては次の3つが考えられます。
- 診療科目に合っていないシステムを導入している
- ITシステムの操作に苦手意識がある
- 定期的に見直しをしない
それぞれ詳しく解説します。
診療科目に合っていないシステムを導入している
自院の診療科目に合っていない電子カルテシステムを導入している場合は、当然ながら上手く運用することができません。例えば眼科のように、使用する医療機器が多い場合は、その分電子カルテと各機器を連携させるのが複雑になります。
そのため、電子カルテを導入する前に、自院の診療科目に合った電子カルテをすべてピックアップし、一つひとつ比較検討することが大切です。
ITシステムの操作に苦手意識がある
ITシステムに対する苦手意識や知識不足も電子カルテ導入が進まない大きな理由です。中には「細かいことは良くわからないけど、電子カルテは必要だと思うから」という理由だけで、ベンダーの営業担当に言われるがままに高額なシステムを導入しているケースも見られます。
例えばスマートフォンなどであれば、説明書を見なくてもなんとなく操作できるかもしれませんが、電子カルテに関してはそうではありません。
もちろん、プログラミングなど高度なIT知識を理解する必要はありませんが、少なくとも電子カルテの使い方や設定方法などのひと通りの知識は、院長や事務長自らが触れて理解する必要があります。
定期的に見直しをしない
電子カルテは一度導入して終わりではなく、その後も検証しながら、使い方を改善していくことが必要です。思うように操作できない=電子カルテが悪い、と結論付けるのは早合点です。
まずは、目的や自院で実現したいことが明確にあって、そのために何をしたら実現できるかを考えて実践する。その結果、思うようなことが出来なければその原因を突き止めて、改善策を考える。これを短期間で繰り返すことが必要です。
その中で、そのシステムではどうしても実現できない問題も見つかるかもしれません。しかしそれは行動した結果なので、失敗を後悔するよりも、それを踏まえてどうするか?を都度判断していくことの方が生産的であると感じます。
電子カルテ運用を成功させるポイント
ここからは電子カルテの運用を成功させるポイントについて解説します。ポイントは大きく2つです。
- 事前に導入計画を立てる
- リハーサルを行う
それぞれ解説していきます。
事前に導入計画を立てる
電子カルテ運用を成功させるには、導入時の計画を立てることが特に重要です。とりわけクリニックにおける電子カルテは、クリニック運営の基盤ともいえる重要なシステムですので、事業計画と連動したものを作成すると良いでしょう。
逆に言えば、導入計画がなかったりあいまいな状態では、導入後に失敗する可能性も高くなります。
特にクリニックは診療科目(診療スタイル)によって、導入すべきシステムの規模や種類が異なります。そのため、自院の診療に必要な機能をすべて洗い出し、それを実現できる機器を選択するようにしましょう。
もしイメージが持てなければ、他院を見学させてもらうことで、より具体的なイメージを持つことができます。
また、システム選定時には提携しているクリニック・病院が使用しているシステムを考慮することも必要です。目先だけにとらわれてしてしまうと、導入してしばらくしてから問題が発覚し、余計に経費がかさむこともあるので注意しましょう。
リハーサルを行う
リハーサルとは「模擬診療」のことで、実際の診療シーンを想定して行います。電子カルテ導入では多くの場合「研修」が行われますが、研修はあくまで機能や使い方を知るといった、いわば受動的なインプットです。
一方、リハーサルはあらゆる事態を想定してシミュレーションする能動的なインプットです。そのため、実際に同様のことが起きても心に余裕を持って対処できるようになります。
まとめ
今回は電子カルテ導入が上手くいかない理由から、運用を成功するためのポイントまで解説しました。電子カルテは導入すること自体が目的であってはいけません。
電子カルテの目的は、システムを活用することで効率化され待ち時間が短縮、スタッフの業務負荷を軽減できることで一人ひとりの患者さんへの対応の質が向上したり、丁寧な対応の実現をサポートすることです。
結果として、患者さん満足が向上し来院数アップや売上アップにつながります。使いこなせるようになるまでは一朝一夕ではいきませんが、明確なゴールを立てそこに向かって、検証・改善を繰り返すことで現状よりも改善できるようになります。
ぜひ電子カルテを導入して、より良いクリニックづくりを目指していただければと思います。本記事の内容が参考になれば幸いです。