電子カルテを導入後は予期せぬトラブルが発生するなど、思うようにいかないことも珍しくありません。
紙カルテから電子カルテのスムーズな移行を実現するために大切なのが、稼働前の「リハーサル」です。
しかし、リハーサルをどのように進めれば良いか悩む方や、そもそも面倒だと感じる方もいるでしょう。そこで今回は、電子カルテ導入時にリハーサルを行うメリットから、リハーサルを実施する際に気をつけるべきポイントまで解説します。

なぜリハーサルが必要なのか
電子カルテ導入前にはリハーサルが大切とは理解していても、日々忙しい中で時間を割くことが難しいと感じる方も多いでしょう。
しかし、リハーサルをやるのとやらないのでは、その後の運用効率が大きく変わります。あらためてリハーサルが必要な理由を見ていきましょう。

想定外のトラブルや問題の発生に備えるため
リハーサルを実施することで、電子カルテ導入後に発生する想定外のトラブルや問題の発生に備えることができます。
よく電子カルテでありがちなトラブルを「ケーススタディ」として取り組み、解消方法を事前にシミュレーションしておくことで、同様の事象が実際に発生した場合でも冷静に対処できるでしょう。
スタッフ全員が電子カルテを使えるようにするため
クリニックの電子カルテはスタッフ全員が使いこなす必要があります。もし、操作方法がわからないスタッフが一人でもいれば、クリニック全体の作業効率に影響しますし、特定のスタッフにだけ業務負担が掛かってしまいます。
全員が同じ手順で操作できるよう、リハーサルを通じて目線を合わせることが大切です。

電子カルテシステムや運用オペレーションの改善につなげるため
リハーサルを実施することで、導入前には気づかなかった問題点が明らかになります。
例えば、
- 電子カルテシステムに追加した方が良い機能がある
- 従来の運用オペレーションの見直しが必要だと感じた
といったケースが出てくるでしょう。
リハーサルの時点で改善点を洗い出すことで、より自院の実態に見合った運用ができるようになります。
リハーサルを行う際のポイント
実際にリハーサルを実施する際はどういったことに気をつけるべきでしょうか。ここではリハーサルを行う際のポイントを5つ解説します。

診療後や患者さんが少ない曜日に行う
リハーサルに集中して取り組めるように、開催日程は休診日や診療後に設定しましょう。スタッフのシフトによって、一度に全員揃うのが難しい場合は数回にわけて行います。
やむを得ない事情で診療時間内に行う場合は、あらかじめ患者さんに伝えておくことが大切です。例えば、以下のような文章をクリニックのサイト上に掲載したり、院内に張り紙を貼るようにします。
スタッフ全員が必ず操作を体験する
リハーサル時には、必ずスタッフ全員が電子カルテシステムを操作しましょう。一人のスタッフだけが操作して、他のスタッフは聞いているだけ。といったリハーサルでは意味がありません。
「操作方法を知っている」と「実際に操作できる」には雲泥の差があります。分かっているつもりでも、実際に操作をしてみると上手くいかないものです。特にクリニックは少人数でたくさんの患者さんを診る必要があるので、操作にもたつくと業務生産性が落ちてしまいます。
例えば、自転車に乗るときも、はじめは不安定で上手くバランスをとれませんが、慣れてしまえば何も考えずとも乗れるものです。同様に電子カルテの場合も、感覚的に操作できる状態を目指すべきでしょう。

トラブルを想定したケーススタディを行う
リハーサルではあらゆるトラブルを想定したケーススタディを行うことで、万が一の事態が発生したときも冷静に対処できるようになります。
どういったケーススタディを実施するかは、電子カルテベンダーの担当者に聞けば教えてくれますし、他のクリニックに相談してみるのもおすすめです。
ただし、実際の現場では思いがけないトラブルが発生することもあります。万が一の事態が発生した際に、どこに問い合わせればよいか、すぐに対応してもらえるのかなど、あらかじめベンダーに確認することが大切です。
もしベンダーが休みなどで対応できない場合は、一時的に紙カルテに切り替えるなど、常に最悪の事態を想定しておくと良いでしょう。
操作マニュアルを作成する
リハーサルで学んだことは時間の経過と共に忘れていきますし、新しいスタッフを迎え入れたときは、新人研修を実施する必要があります。その時のために操作マニュアルを作成すると良いでしょう。
電子カルテにも操作マニュアルはありますが、説明が難解だったり自院に関係のないページが多かったりと扱いにくいものです。
そこで自院だけの独自マニュアルを作ることで、理解度は格段に向上するでしょう。また、マニュアルはなるべく文字だけではなく、画像や動画などを用いるのがおすすめです。特に説明音声つきの動画であれば、それを見ながら操作できるので、文章に比べて認識の相違が生まれにくくなります。

リハーサル後はベンダーと振り返りを行う
リハーサル実施後はベンダーと振り返りを行い、課題や問題点について検証します。
例えば、
- 「こういう機能があると便利だと感じた。」
- 「〇〇の業務で上手く活用できなかった。」
といったように要望も含めて、感じたことを率直に伝えます。
システム会社からすれば、ユーザー(クリニック)側の要望や意見は機能改善などに活かせるため、参考にされるケースも少なくありません。また、普段からコミュニケーションを取ることで、融通も効きやすくなるでしょう。
まとめ
本記事では、電子カルテ導入時にリハーサルが必要な理由と、リハーサルを行う際のポイントを5つ紹介しました。電子カルテを使いこなせば、従来の紙カルテに比べて大幅に業務効率を高めることができます。
しかし、電子カルテはあくまで手段=道具でしかありません。道具を使うのはあくまで人間の役目です。どんなに便利なツールでも、使われなければ宝の持ち腐れとなります。そうならないためにも、事前にリハーサルを実施し、スタッフ全員が使いこなせる状態を目指しましょう。