自分が経営するクリニックにはなるべく多くの患者さんに来てほしいですよね。しかし、患者さんの数には限りがあり、集客に限界を感じることもあるのではないでしょうか。
集患のためには、患者さんのリピート率を上げることが大切です。新規に加えてリピーター患者さんを増やすことで、効率よく集患することができます。
患者さんのリピート率を向上させるには「患者教育」「口コミ」「マーケティング」「患者満足度up」の4つの視点が重要になります。今回は、リピート率向上戦略の1つである患者教育について私の経験を踏まえて詳しくご紹介します。
リピート患者は集患に大きな影響を与える
何度も来院して下さる患者さんは、集患に大きな影響を与えます。なぜなら、集患コストを下げ口コミでさらに患者さんを増やすことができるからです。
一般的に、リピーター顧客を獲得するコストは新規顧客の5分の1と言われています。そのため、リピーターの増加に力を入れることで効率的に集患することができるのです。
また、好印象を持ち何度も通っているクリニックは紹介してもらいやすい傾向にあります。患者さんのリピート率を上げることでコストを抑えながら集患できるだけでなく、新規患者さんを増やすことにもつながります。
患者教育の本来の目的
適切な治療のためには、患者さんが症状や治療法を正しく理解し、自身が病気への取り組みを向上させることが重要です。
医師が患者さん1人1人に合った症状や治療法を説明することで、患者さん本人のモチベーション向上や病気に対する正しい理解につながります。
医院の理念を患者さんにも理解してもらうことが重要
患者さんとコミュニケーションを取る中で忘れがちなのが「医院の理念を理解してもらうこと」です。患者さんに医院の考え方を理解してもらうことで、医院側の方針に沿った患者教育を行うことができます。
経営理念は一般企業に限らず医院を経営する上でも非常に大切であり、理念を持たないクリニックは土台や魂が欠けた脆弱な組織と言わざるを得ません。
そしてこの基盤となる医院の理念を患者さんに浸透させることで、まずは医院側の価値観を理解してもらうことができます。
その上で予約の仕組みや受診の仕方を伝えると、スムーズに受け入れてもらえるでしょう。
逆に何も考えずただ患者教育を行っても上手くいきません。患者さんに高次の医療サービスが必要で緊急を要するにも関わらず、仕事の関係などで受付時間ギリギリにお見えになる方などが出てきてしまいます。
さらには、医院側の方針を理解してもらえずクリニックへ来なくなってしまう患者さんまで出てくるので、集患にも悪影響を及ぼします。
医院の理念を理解してもらうことは患者教育の目的の達成はもちろん、集患のためにも非常に大切です。
患者教育がリピート率向上につながる理由
まずは、患者教育が患者さんのリピート率向上につながる理由を3つ紹介します。
医師は信頼が得られる
患者さんが納得し安心できるような患者教育を行うことで、医師は信頼を得ることができます。患者教育によってコミュニケーションを図り関係を深めることができれば、信頼や好感が患者さんに育まれていきます。
そして患者さんは、信頼できる医師がいると感じればそのクリニックに何度も通院してくれるようになり、リピート率向上につながるのです。
受診の度に丁寧な患者教育を行えば信頼感がさらに高まり、一般企業でいう固定客、つまり「かかりつけ医」へと認めてくれるようになります。
患者教育は直接患者さんと関わる貴重な機会であり、リピート率に大きな影響を与えることを理解しておきましょう。
患者のモチベーションが上がり次回受診につながる
前向きで正しい患者教育は、患者さんのモチベーションを向上させ次回受診につなげられます。
病状や継続通院の大切さを丁寧に説明することで、将来の展望が持てず治療を断念する患者さんを減らし、通院を続けてもらうことができます。
【患者教育の対象】
緑内障患者さん
【教育内容】
①定期的な検査と専門医の管理を受けることでいつまでも「見える」ようにいられることを説明
②時系列で病状をデータ解析し、患者さんの緑内障の進行状況を観察、把握することで定量的な説明を行う
【効果】
①継続通院の大切さを理解し次回受診へ
②病状を正しく理解し前向きな治療へ
実際に当院の院長が行っている緑内障患者さんへの患者教育を例に挙げてみましょう。緑内障は、継続治療を断念することが多いのが深刻な問題となっている病気です。
しかし、当院では、継続通院の大切さや定量的な病状の説明を行っているため、ドロップアウト率が大変低く、頑張って治療を続けてくれている患者さんが多くいます。
そして、このように患者教育によって患者さんのモチベーションを上げ次回受診を促すことで、結果的に集患率アップにつながります。
他の患者の紹介につながる
患者教育は、口コミや紹介によるリピート率向上にも役立ちます。医師に好感を持ち再診を受けた患者さんやクリニックをかかりつけ医に決めた患者さんは、次第に愛着を持ってほかの人々に薦めるようになります。
これにより新規患者さんが増え、初診の患者さんからも信頼を得ることができればさらにリピート率を上げることができるのです。
集患とは一見関係なさそうな患者教育ですが、患者さん1人1人と真摯に向き合うことで確実に患者さんを増やすことができます。
集患のための患者教育のポイント
次に、集患のための患者教育のポイントを次の3つの視点から解説します。
- 話し方
- 目標設定
- 教育内容
柔らかい雰囲気で分かりやすく話す
まずは、柔らかい雰囲気で分かりやすく話すことが大切です。医師にはそのようなつもりがなくても、患者さんは医師の表情や話し方から「マイナスな印象」を抱くことがあります。
医師から冷たさや怖さを感じると再診に向かう足を鈍らせてしまう可能性があるので注意しましょう。
話すときは、患者さんに安心感や満足感を与えることが重要です。問診の際は顔を見ながら話し、共感の言葉を用いながら行いましょう。
また、診療における不快な感情の配慮や前回の診療内容の把握など、細かい部分まで意識することで、患者さんは安心することができます。
患者教育においては、正しい治療方法を伝え前向きに治療を行ってもらうことも非常に大切です。
シェーマ・画像・模型などを使った丁寧な説明やメモや小冊子で病気の理解を深める環境を整えてあげることで、患者さんは継続的に通院してくれます。
再診を促すためには、このように安心感と信頼感のある患者教育を行うことが大切です。
患者さんに目先の目標を持たせる
患者さんに目先の目標を持たせることで、リピート率が高まり集患につながるでしょう。
目先の目標とは、「再受診の日程」です。「〇週間に一度」や「〇か月に一度」など通院頻度を明確に告げることでスムーズに再受診につなげることができます。
当院では、予約システムを使って予約管理を行っています。やり方は、診察終了後のお会計時、次回の院長指示がある患者さんはその場で予約をしていただくことで次回受診につなげる方法です。
病名や次回の検査内容により予約枠を管理しているため、患者さんのご希望に添えないこともありますが、その際は理由を教育することで長期的にスムーズな予約管理ができています。
このように、予約管理は患者さんのリピート率に直結するため、分かりやすい予約管理システムを構築することが大切です。
患者の要望に沿った教育を行う
患者さんの要望に沿った教育を行うことも非常に重要です。患者さんのライフスタイルや病気への考え方は、1人1人異なります。
まずは、治療計画や病状を説明する中で患者さんが正しく病気を理解しているかを確認しながら教育を行いましょう。
また、通院の頻度や方法は、患者さんのライフスタイルや体調に合わせることで無理なく通院を続けてもらえます。
【患者教育の対象】
歩行が困難なご高齢の患者さん
【通院が難しくなる理由】
クリニックへ行くのが大変
【解決策】
オンライン診療の提案
当院では、ご高齢の患者さんのご家族様にオンライン診療のメリットやデメリットを伝えた上で提案し、オンライン診療についてよく理解してもらいながら利用して頂いています。
元々は、仕事で忙しく来院する時間を確保することが難しい方を対象に実施していましたが、歩行が困難なご高齢の患者さんにもニーズがあることに気が付いたのです。
このように、それぞれの患者さんがより快適に通院できるような工夫を行うことで、リピート患者さんを増やすことができます。そのためには常に患者さんを第一に考えたサービスを意識することが大切です。
集患に効果的な患者教育の実践例
最後に、私が開院後実際に行った患者教育の実践例を紹介します。
疾患セミナーの開催
当院は開院当初、患者さんが病気についてよく理解することを目的とした疾患セミナーを開催していました。現在は、院長の多忙により開催していませんが、開院したばかりで患者さんの数が少ない頃は定期的に行っていました。
水曜日の午後に行っていたこの疾患セミナーでは、クリニックの待合室で糖尿病や緑内障などの目の病気について説明し、その予防や対策を学んでもらうことで患者さんへの患者教育を行ったのです。
開院し始めたばかりで集患に悩んでいる方は、診察中だけでなく疾患に関するセミナーでも患者教育を行い、リピート率の向上を図ることをおすすめします。
患者さんが自身の病気について動画で学ぶ
待ち時間を有効活用したいなら、動画を使って個別で自身の病気を学んでもらうのがおすすめです。私は、緑内障が疑われる患者さん向けに製薬会社が作成したデバイスを使用し、動画を通じて緑内障との向き合い方を学んでもらっています。
待ち時間は、「待つ」という行為にストレスを感じやすくリピート率低下につながります。
動画を観てもらい待ち時間を有意義に過ごして頂くことで、病気への理解が深まることはもちろん、待ち時間に対してのマイナスな気持ちもなくなるので、リピート率アップが見込めるでしょう。
診療科の病気について学ぶ
待合室では、診療科の病気についての動画をテレビで流すことで、多くの患者さんが病気についての理解を深めることができます。
当院は、視力検査に影響しないビッグスクリーンの有機テレビを使って、眼科の病気に加えて小児科・内科・耳鼻科など他科の疾病コンテンツも医療動画配信会社と提携し配信しています。
動画は、常設だけでなく、毎月の新作や当院オリジナル動画も組み合わせながらその都度入れ替えて配信しており、いつも来て下さる患者さんにも新しい学びがあるような仕組みです。
実際待合室にいる多くの患者さんがこの配信をご覧になっており、待ち時間をストレスなく過ごせているため、集患に効果的な患者教育といえるでしょう。
オリジナルの教育ツールの掲示
当院では、スタッフが手書きで書いた教育ツールをボードに掲示することも行っています。手書きは、オリジナリティがあり温かみを感じられるので、患者さんの目を引きます。
集患に役立つのか?と疑問に思う方も多いかもしれませんが、実際立座されて読んでくださる患者さんが多く、このような細かい配慮が患者さん1人1人のリピート率向上につながります。
オリジナル冊子を配布
オリジナル冊子を配布することで、クリニックの考え方や方針を伝えることも非常に大切です。当院では、主に以下のような冊子を配布しています。
- 当院の理念や治療ポリシーを紹介する冊子
- 当院のターゲット疾病「緑内障」に関する冊子
- 白内障に関する冊子
- コンタクトレンズの扱い方や定期健診の重要性を紹介する冊子
- 充血患者さんに向けに感染に関する考え方などを紹介するちらし
これらのオリジナル冊子はターゲットを定め、それぞれの患者さんに当院の考え方や方針を伝えるために作成したものです。
特に、充血患者さん向けのちらしは、以前別席に案内したら差別されたと文句を言った方がおられたことがあり、この経験から感染に関する教育を徹底することが大事だと考え作成しました。
このように、オリジナル冊子やちらしを使って患者さんに自身の病気を正しく理解してもらうことで、クリニックの方針についても納得してもらえるのです。
患者さんは、クリニックの方針や考え方を理解できるとクリニック自体の信頼が高まり、リピートしてくれたり、かかりつけ医に認定してくれたりします。
細かい配慮を怠らず、患者さんが快適に過ごせる環境づくりを行うことで、効率よく集患できるでしょう。
まとめ
今回は、集患のためのリピート率向上戦略として患者教育の方法を紹介しました。集患といえば新規患者さんの獲得ばかりに目が行きがちですが、リピート患者さんを増やすことで効率よく集患を行うことができます。
そのためには、患者教育の本来の目的に加えて、「またこのクリニックに通いたい」と思ってもらえるようなサービスを提供することが大切です。
患者さんには、病気への理解を促すことで自院の考え方に納得してもらい、正しく治療して頂くことが結果的に集患につながります。
患者さん目線の患者教育ができているか、一度振り返ってみることをおすすめします。