スタッフ研修って何をしたらいいの?
スタッフたちがスムーズな業務をおこなうためにはどうしたらいいのだろう…
現在クリニックの開業を控えている方の中には、このような不安や疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
スタッフ研修は、開院予定の日から逆算して2〜3週間前に行うのが理想的といわれています。
しかし初めて開業する場合は、どのようなことに気をつけて研修を行えば良いのかよくわからないですよね。
私も開業当時は、スタッフ研修のイメージは漠然としていて、
業務を指導するだけでいいのだろうか…
と悩みました。。
クリニックの新規開業におけるスタッフ研修は、クリニックの今後を左右する重要なポイントです。
研修により開業時からスムーズな運営ができれば、クリニックをより成長させられる可能性が高まります。
そこでこの記事では、私が16年間のクリニック経営で得た、スタッフ研修で押さえるべきポイントを6つご紹介します。
この記事を読めば、あなたのクリニックのスタッフは開業初日からスムーズなスタートダッシュを切れるはずです。
クリニックの開業を控えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
スタッフ研修における3つの目的
まずは、目的を理解しておきましょう。
スタッフ研修における主な目的は以下の3つです。
- マニュアルを定着させ、スタッフの連携をスムーズにする
- 接遇・サービスの質を統一させる
- 院長とスタッフの意思統一を図る
それでは一つずつ解説していきます。
1.マニュアルを定着させ、スタッフの連携をスムーズにする
クリニックの運営には、スタッフの連携が欠かせません。
現場を動かすのは、院長を含めたスタッフたち。スタッフ同士の連携が取れず、あたふたしていては患者さんの信頼は得られません。
よって、患者さんにスムーズな医療サービスを提供するためにまずはスタッフ一人ひとりがクリニックのマニュアルを理解することが大切なのです。
はじめのうちは、マニュアルの詳細な部分は決まっておらず、大枠がある状態。そこから、実務経験のあるスタッフとともに、クリニックにふさわしいマニュアルを作り上げます。
なお、マニュアルを理解していても、実際の業務でマニュアルに沿った動きができなければあまり意味はありません。スタッフ研修で、業務における動きやノウハウをできるだけしっかりと身につけることがで大切です。
こうして、開業時からスタッフ同士の連携がスムーズになれば、患者さんにより良いサービスを提供でき、安心したスタートダッシュを切ることができます。
2.接遇・サービスの質を統一させる
患者さんに選ばれるクリニックになるためには、接遇やサービスの質も重要です。
クリニックに優秀な医師がいても、スタッフの接遇マナーやサービスがイマイチでは、患者さんの信頼は得られません。
まずは接遇マナーの基本である、
- 表情
- 挨拶
- 身だしなみ
- 話し方
- 態度
の5つを院内で統一し、患者満足度アップを図りましょう。
また、クリニックを訪れる患者さんは体に痛みや不調を抱えているため、普段よりもナーバスな状態の方が多くいらっしゃいます。
そのため、「待ち時間が長い」「失礼に捉えられる言葉を言ってしまった」「予約時間をすぎてしまった」など、些細な出来事がきっかけでトラブルが起こることもあるでしょう。
万が一上記のようなトラブルが起きても、普段から院長含めスタッフ全員が接遇マナーを身につけておくことで、適切な対応を取ることができます。
また、より迅速にトラブルに対応できるよう、
- ビジネス向けの言葉使いや会話パターン
- 心身が弱っている方・怒りを表現している方の精神状態と対応の仕方
などの指導も研修内容に組み込むことをおすすめします。
3.院長とスタッフの意思統一を図る
ここでいう「意思統一」とは、クリニックの目指すビジョンや目標、理念、運営方針などを踏まえた上でスタッフ一人ひとりが個人の役割を認識し、意思を合わせて協力し合うことを意味します。
そしてクリニックの運営において、意思統一を図ることはとても大切です。
意思統一が取れていないクリニックでは、個人のスキルや取り組みに頼りがちになります。
すると、スムーズなコミュニケーションができず、個々のスキルが高くても最大限のパフォーマンスを発揮できません。
クリニックをひとつのチームとして捉え、意思統一を図ることで生産性がアップし、組織運営がよりスムーズになるでしょう。
スタッフ研修で押さえる6つのポイント
では、スタッフ研修で押さえるべき6つのポイントをご紹介します。
私の経験から考える、スタッフ研修で押さえるべきポイントは以下の6つです。
- 研修スケジュールで全体像を把握する(サンプルあり)
- 「業務研修」で業務をマスター
- 「意識研修」でモチベーションアップ
- 診療シミュレーションで心の余裕を作る
- 院内感染対策の知識を身につける
- スタッフを大事にする
順番に詳しくご紹介します。
1.研修スケジュールで全体像を把握する(サンプルあり)
スタッフ研修で押さえるべきポイントの1つめは、研修スケジュールで全体像を把握することです。
まずは研修スケジュールを作成して研修の全体像を把握し、開院までの研修を計画的に進めましょう。
「業務研修」「意識研修」「診療シミュレーション」「院内感染対策」の4つに分けて研修を進め、研修と並行して接遇マナー講習や備品の発注、適宜必要なミーティングを行うと想定すれば、スケジューリングがしやすくなります。
以下に示す表は私のクリニックで実際に行った「開業スケジュール」と「研修スケジュール」のサンプルです。
なお、「業務研修」「意識研修」「診療シミュレーション」それぞれの詳細は後述します。
研修内容一つひとつを着実に進めるために、開業に向けて余裕を持ったスケジュールで進めましょう。
2.「業務研修」で業務をマスター
スタッフ研修で押さえるべきポイントの2つめは、「業務研修」で業務をマスターすることです。
「業務研修」は、ひととおりの業務を身につけるための研修。開業時からスムーズな運営を行うためには欠かせません。
まずは「受付→案内→診療→会計」の流れにおける業務の手順を確認し、各部署ごとでの業務プロセスを理解するところから始めましょう。
その上で、
- 接遇マナーの習得
- 院内設備の把握
- 電子カルテや医療機器の使い方
など、スタッフ全員に共通した内容の研修を実施してひと通りの業務内容を習得します。
ただし、すべての研修内容を自分で手がける必要はありません。
スタッフに正しい知識を身につけてもらうためにも、関連処方薬の指導は製薬会社さんに、医療機器や電子カルテの扱い方は医療機器メーカーやシステムベンダーの方に力添えをお願いするなど、プロの手も借りましょう。
開業直後から質の高い仕事ができるよう、業務研修で準備しておきましょう。
3.「意識研修」でモチベーションアップ
スタッフ研修で押さえるべきポイントの3つめは、「意識研修」でスタッフのモチベーションアップを図ることです。
「意識研修」とは、クリニックへの愛着を育む研修のこと。
一般企業では「インナーブランディング」「インターナルブランディング」などと呼ばれ、ブランドのポリシーや本質的な価値をスタッフに深く理解してもらい、ブランドに対する誇りと愛着を育むことを目的として実施されています。
そして、クリニックにおいても「意識研修」は非常に役立つもの。意識研修を行うことで、スタッフ全員が同じ目標を目指し、行動がクリニックの理念に基づいたものになるからです。
開業への思い、どのような思いでクリニックを立ち上げたのか、どのような医療を提供したいのかを真っ直ぐに伝えるだけでも十分効果的です。
クリニックの開業研修では業務研修が重視されがちですが、意識研修を行うことでクリニックへの愛着が湧き、働くことへの誇りが高まるためスタッフのモチベーションもアップします。
仕事の質の向上にもつながりますので、ぜひ研修の中でおこなってみてください。
4.診療シミュレーションで心の余裕を作る
スタッフ研修で押さえるべきポイントの4つめは、診療シミュレーションで心の余裕を作ることです。
「診療シミュレーション」とは、実際の診療を想定しておこなうリハーサルのこと。
開業直後のクリニックは、スタッフ誰もが新たな環境に不慣れなため、どうしてもバタつきがちになります。
そこで、実践的な診療シミュレーションをおこなうことで、提供するサービスがより確実なものとなり、開業直後から運営がよりスムーズになるのです。
さらに、数回リハーサルを行っておくことでスタッフの自信につながり、心に余裕ができるため、より配慮の行き届いた接遇ができます。
また、人員配置もチェックし、無理なく無駄もない、クリニックにとって理想的な配置を実現させれば、経営負担の軽減にもつながるでしょう。
5.「院内感染対策」の知識を身につける
クリニックにはさまざまな不調を抱えた患者さんが来院します。中には感染症を患った方がいらっしゃることもあるでしょう。
患者さんからスタッフへ、スタッフからほかの患者さんへと感染を広げないためには、正しい「院内感染対策」の知識が必要です。
特に、他業種から採用したスタッフは、院内感染対策の知識を持ち合わせていない人がほとんどですので、研修でしっかりと身につけてもらいましょう。
6.スタッフを大事にする
スタッフ研修で押さえるべきポイントの6つめは、スタッフを大事にすることです。
クリニックの運営はスタッフに働いてもらってこそ叶うもの。そのため研修においても、スタッフを大事にすることを意識しましょう。
たとえば、
- スタッフが理解しやすいよう、研修資料や説明時の言葉選びを丁寧におこなう
- 業務に対する不安がなくなるよう、充実した研修プログラムを作成する
- 精密なシミュレーションをおこない、適切な人材配置をすることで、スタッフに無理な業務を強制しない
など、働くスタッフに寄り添った工夫を研修に施すことで、より働きやすい環境が整うはずです。
ただし、スタッフを信頼して指示を出しすぎないことも大切。
しかし、指示が細かすぎると、スタッフにとっては自分が信頼されていないように感じられたり、自分で判断する部分が少なく仕事に物足りなさを感じたりする原因になります。
クリニックで働いてくれるスタッフに敬意を払い、尊重し、スタッフを信頼して業務を任せることも意識するといいでしょう。
スタッフを大事にするポイントはこちらの記事にも記載してありますので、ぜひご覧ください。
充実した研修でスタートから上手く回るクリニックへ
この記事では、私の16年間におよぶクリニックの経営経験を元に、スタッフ研修で押さえるべき6つのポイントをご紹介しました。
- 研修スケジュールで全体像を把握する
- 「業務研修」で業務をマスター
- 「意識研修」でモチベーションアップ
- 診療シミュレーションで心の余裕を作る
- 院内感染対策の知識を身につける
- スタッフを大事にする
クリニックの運営はスタッフがあってこそのもの。ご紹介したポイントを抑えて研修を充実させることで、いいスタートダッシュがきれるはずです。
しかし、開業時のスタッフ研修の内容は実際には想像以上に煩雑で、これまで説明した内容をきちんと研修に組み込めるか不安な方も多いでしょう。
その場合は、社労士やクリニック向けの研修講師の方の力を借りると、よりスムーズ進みますので依頼することをおすすめします。
充実した研修でスタートダッシュが上手く切れれば、ご自身のクリニックをより成長させられるはずです。ぜひ参考にしてみてください。