医院・クリニック開業の「理念」が決まったら、開業に必要な外部専門家を探しましょう。
開業には膨大な数の判断や処理が必要なため、必要な部分はその道の専門家に頼る方が一時的にお金はかかっても時間と労力の節約になります。
とはいえ、どの道の専門家が必要で、どうしたら信頼のおける専門家に任せることができるか、不安な方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、医院・クリニック開業に必要な外部専門家と専門家の選び方について、私の経験を踏まえてご説明します。
開業に必要な専門家①:開業・経営コンサルタント
開業・経営コンサルタント任せること
開業・経営コンサルタントはその名の通り、開業や開業後の経営に関わる全般の支援、アドバイスをしてくれます。
また開業に関して幅広いネットワークを持っているので、開業に伴い必要となる様々な業者を仲介してくれます(建設業者、医療機器メーカー、薬品会社、税理士事務所、金融機関、広告業者など)。
さらに経営コンサルタントは、開業後の支援もしてくれる専門家でもあります。
開業・経営コンサルタントの選び方
開業・経営コンサルタントを選ぶための重要ポイントは、開業後の経営までしっかりサポートしてくれるかどうか、です。
「開業は支援するけど、開業してしまったら後のことは知りません。」というコンサルタントを選んでは絶対にいけません。
なぜなら、私たち経営者にとって開業はゴールではなく、そのあとも安定して経営をし理念を実現させることがゴールだからです。
ではどうしたら、経営までしっかりと責任を持ってサポートしてくれるコンサルタントを見つけることができるのでしょうか。
この点については、『【経営に差が付く】クリニック開業時のコンサルタントの選び方』の記事で詳しく解説しておりますので詳細はこちらをご覧ください。
開業に必要な専門家②:税理士
税理士に任せること
税理士に任せることは、主に次の2点です。
- 税務会計、節税対策
- 経営指南
税務会計、節税対策
開業医になると、勤務医の頃と違って確定申告が必要となります。
事業の確定申告は膨大な作業となりますが、 忙しい経営者が不慣れな申告業務を自力で行うのは無理があります。
そこで、そのような税務の関係は経験豊富な税理士に任せる方が時間と労力を節約できます。
また、確定申告をすると驚くのが払う税金の多さです。
「こんなに払わなければならないのか」と驚愕するケースが多いですが、税理士は節税対策もアドバイスしてくれるので安心です。
経営指南
税理士は事業のお金の流れを把握します。
経験豊富な税理士は数多くの企業の財務を見ていますので、当然経営におけるお金の流れというのはプロ中のプロです。
その経験を活かして、財務面から経営を指南してくれます。
税理士の選び方
税理士の選び方は、とにかく信用に足る人を選ぶことです。
上述しましたが、税務会計をお願いするということは、こちらの台所事情を全てさらけ出すことになります。
あなたの税理士が、経営コンサルタントや融資をうける金融機関と繋がっていたらどう感じますか。
あなたにコンサルタント側にとってメリットのある方針を一緒になって推し進めてきたら、融資の交渉が不利になることは確実でしょう。
冷静になって考えれば当然のことなのですが、現実、コンサルタントや銀行から紹介された税理士と顧問契約してしまうケースは少なくありません。
信頼できる税理士をつけるなら、必ずご自身で動いて見つけた税理士に何度か直接あって話を聞き、信頼に足る人かどうかを見極めましょう。
開業に必要な専門家③:建築士
建築士に任せること
クリニック建築にあたって建築士にお願いすることは当然ですが、クリニックの空間のデザインは建築士、設計士に依頼をした方が賢明です。
場合によってはその建築士のネットワークを使って、施工業者の仲介をしてもらうケースもあります。
建築士の選び方
設計士選びのポイントは「クリニック設計の実績」と「感性」をみることです。
クリニック設計の実績を見る
クリニックの建築には、たくさんの法的規制や煩雑な届出書類の作成、医療機器の配置や動線への配慮が必要です。
これらを把握していない建築士や建築業者に依頼してしまうと、後から必要な部分を追加しなければならないということにもなりかねません。
そうなると当然、追加費用や工期の遅れが生じます。
依頼先の選定を行うときには必ずクリニックを設計した実績を詳しく尋ね、実際に過去に立てたクリニックを見学させてもらうなど、慎重な確認が必要です。
感性を見る
建築士を選ぶ上では「その建築士の感性に共感できるか」という点も重要です。
なぜなら、あなたが抱くぼんやりとした理想のイメージを具現化してくれるのが建築士、設計士だからです。
あなたも「こんな雰囲気の設計にして欲しい」というぼんやりとしたイメージをお持ちだと思います。
しかし、それを実際作り、具体化してくれるのは、建築士です。
何度も何度も依頼主とディスカッションを重ね、イメージを固めていく。
この時、建築士の感性が私たちと全く違うものだったらどうでしょうか。
建築士の描くイメージに共感できず、妥協したクリニックになってしまう可能性が高いです。
クリニックの建物はクリニックの「顔」であり、最も大きな印象を患者さんに与える存在です。妥協してはいけません。
必ず感性の合う設計士にお願いし、理想のクリニックを実現させましょう。
建築士を選ぶ際は、クリニックだけでなくその建築士の作品を様々見て、コンセプトの設定やセンスに共感できる建築士を選ぶと良いでしょう。
開業に必要な専門家④:社会保険労務士(社労士)
社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし) 労働・社会保険の問題の専門家として、労働保険・社会保険諸法令に基づいて、行政機関に提出する提出書類や申請書等を依頼者に代わって作成すること、個別労働関係紛争の解決手続(調停、あっせん等)の代理を行うこと、また企業を経営して行く上での労務管理や社会保険、国民年金、厚生年金保険についての相談・指導を行うこと[1][2][3]を職業とする為の国家資格であり、弁護士・弁理士・司法書士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・海事代理士と共に職務上請求権が認められている8士業の一つである。 引用:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
社労士に任せること
社労士には、雇用に関すること全般についてサポートしてもらいます。特に法律関係については必ず頼るようにしてください。
開業して人を雇うということは、雇用者になることであり、当然労働基準法にのっとった働き方をさせなければなりません。
医療について法律や条例が改定されるのと同様、労働に関しても法律は都度変わります。
これらの情報をしっかりと押さえておかないと、意図せず法律違反を犯してしまう可能性もあります。
そうなるとクリニックとしての信用が一気に下がり、質の良いスタッフが集まらず、ゆえに質の良いサービスが提供できなくなり、患者さんが離れていきます。
労働に関する法律に適切に対処するため、社労士との顧問契約を結びましょう。
社労士の選び方
社労士と顧問契約を結ぶ上で大切なポイントは、次の2点です。
- 医療業界での実績を持っているか
- IT技術を積極的に活用しているか
医療業界での実績を持っているか
社労士が関わる業界は広く、どの社労士にも特定の業界を得意としているケースが多いので、当然、医療業界に詳しい社労士を顧問にする方が雇う側からすれば安心です。
業界が違えば就業環境や助成金などの関係も変わりますので、やはり医療分野での実績を見ておくことは重要です。
IT技術を積極的に活用しているか
「電子政府」が発足され、「労働保険」や「社会保険」関連は電子申請が可能となっています。
労務手続きもITを活用して、効率的に行える仕組みが整いつつあります。
しかし、2017年度の申請手続きのオンライン利用率は全体の全体の48.3%にとどまっており、半数以上の社労士がオンライン手続きを活用していない計算になります。
ITを使えば低コスト・省時間になりますが、従来のやり方では当然無駄なコストや時間が発生します。
社労士を選ぶ際は、このようなIT関係の技術の活用にも目を配らせましょう。
- なお、IT技術は社労士だけでなく税理士も然りです。給与計算や納税申告をはじめ、平素の書類の受け渡しなどもセキュリティを確保できるアプリを使えば無駄な時間や労力は回避できます。 ちなみに、設計士やコンサルとのコミュニケーションにおいても、ITリテラシーはビジネスの速さに直結します。
最後に:専門家への「丸投げ」は99%失敗する
ここまでクリニック開業に必要な専門家とその選び方について解説してきました。
これで優良な専門家を見つける方法を知ることができたと思います。
ただ、どれだけ優良な専門家を抱えたとしてもクリニックの経営に関する判断を専門家に丸投げしたのではクリニックの開業・運営は必ず失敗します。
これだけは肝に命じておいて下さい。
専門家は自身の経験に基づき、法律面の指導だけでなく、経営に関するアドバイスもしてくれるケースが多いです。
しかし、これはあくまで専門家としてのアドバイスであり、最終的な判断を下すのはあなた自身です。
あなたが正しい経営者の視点を持って適切な判断をしなければ、どんなに優秀な専門家・コンサルタントを雇っても経営は成り立ちません。
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