「開業医の妻は、経理や雑務で院長をサポートすべき」とお考えではありませんか?
開業医の妻には、もっと大切な役割があります。それは、開業医の夫を孤独にさせないことです。
開業医にはあらゆる物事の判断が必要で、それを院長1人が担うのは大変なストレスであり、孤独感に襲われます。
行き場のないストレスは妻に向けられ夫婦ともに不幸になり、最悪の場合、離婚に至るというケースも珍しくありません。
この記事は、17年前に専業主婦からいきなり開業医の妻となった私の経験をもとに
- 開業医の夫婦が幸せになるために妻が担うべき役割
- 開業医の妻が経理を専業すべきでない5つの理由
をご紹介します。
もしよろしければ、パートナーと一緒にご覧ください。
開業医の妻の役割とは?
開業医の妻・院長夫人は「事務長」として院長に変わって経営を主導する立場になることが望ましいです。
その理由は以下の3つです。
<院長夫人が経営を主導するべき理由>
- 院長は診療に専念しなければならない
- 夫婦は最も信頼し合える関係
- 医療スタッフは経営に明るくない
詳細はこちらの記事を参考にしてください。全くの未経験から経営者になるための準備も紹介しています。
>>開業医の妻に求められる役割は?仕事内容と必要なスキルや資格を紹介
開業医の妻が経理専業を避けるべき4つの理由
一般的に院長夫人は経理業務がおすすめされていますが、私はこの考えにはあまり賛同できません。
それは、以下の4つの理由からです。
- 事務長なき院長は孤独になりやすい
- 院長が診療に専念するためには信頼できる事務長が必要
- 経理専業では視野が狭まり院長と衝突する
- 実務専業ではスタッフとの壁を感じやすい
それぞれ詳しく解説します。
理由①事務長なき院長は孤独になりやすい
このサイトにおいて「事務長」とは、院長に変わって経営やスタッフマネジメント等全てを統括する責任者のことを指すこととします。
事務長のように院長以外に統括者がいることで、院長は悩みや困りごとを相談でき、孤独感を感じずに済みます。
事務長を置かずに経営コンサルタントなどに相談するクリニックは多いですが、コンサルタントは外部の人間であるため、どうしても院長との温度差が生じてしまいます。
実際私が相談にのった知人の院長はこんなことをおっしゃっていました。
コンサルタントに相談を持ちかけても、『そこについては私の担当領域ではないので』とお茶を濁され、逃げられてしまう。専門家を何人雇っても、院長は孤独なものだね。。。
コンサルタントと違って院長夫人は身内ですから、自分ごととして経営を考えられます。
この姿勢が、院長を孤独にさせない大きな拠り所になるのです。
理由②院長が診療に専念するには信頼できる事務長が必要
独立開業すると、勤務医時代では必要なかったスタッフのマネジメントやクレーム対応など、さまざまな問題に対応しなければなりません。
これを院長主導で対応にあたっていれば、診療にあてられる時間がどんどん削られていきます。
というのは開業医のよくある悩みです。
院長が診療に専念するには、信頼のおける人間に経営業務を任せる他ありません。
その経営の役割を担うのが、私は院長夫人の役目だと思っています。
理由③院長婦人が経理専業ではスタッフとの壁を感じやすい
経理専業の院長夫人がクリニックにいる、または用事のある時だけ出向く場合、その院長夫人は現場の実情を把握していないことが多いためスタッフは気を使い、働きづらい環境が生まれてしまいます。
またそれを感じた院長夫人自身も居心地の悪さを感じ、あまり前向きに仕事に打ち込めない可能性が高いです。
下手に他のスタッフと同じように働こうとするのではなく、事務長として立場を明確に分けた方が、お互い気兼ねなく付き合うことができると私は考えています。
理由④経理専業では視野が狭まり院長と衝突する
経理を専業にするとお金に対する考え方が院長と食い違うこともあり、夫婦の軋轢を生む可能性があることもデメリットの1つです。
経理業務ではどうしても目の前の数字を追いかけてしまいますので、短期的でも収支がマイナスになれば、支出を抑えようとしてしまいがちです。
しかし経営者は中長期視点の経営計画を持ってお金の使い方を考えますから、価値観の相違が生まれます。
これは経理視点と経営視点で考えが異なるのでどちらが正解・不正解ということではありません。
お互いに自分の考えが正しいと感じながら、相手がなぜ理解してくれないのかと悩み、お互いが不幸な気持ちになります。
院長や院長夫人にとって大切なのは、経営者としての考え方です。ここに、私が院長夫人に経理専業をおすすめしない理由があります。
理想的な事務長とは?医師の夫と最適なパートナーになるポイント4選
ここまで院長婦人は経理専業でなく、事務長としてクリニックの経営を主導するべきということについてご説明しました。
しかし実際に事務長としてどんなことをしたら良いか、なかなかイメージが湧かないと思います。
そこでここからは、私が事務長として働いた経験から特に大事だと思った具体的ポイント4つをご紹介します。
- 院長の不得意領域をカバーする
- 院長の想いを理解する
- スタッフ/患者/業者との仲介役となる
- クリニック発展の牽引役となる
ポイント①院長の不得意領域をカバーする
まず第1に院長の不得意領域となる経営面をカバーしましょう。
勤務医からの独立の場合、院長には経営の知識が乏しい場合が多いため、院長夫人が経営を主導しましょう。
私の場合は全くの未経験のまま事務長になりましたので、オンラインスクールで一般経営学を学びながら、医療の現場に応用する形で独自の経営手法を身につけていきました。
私がこれまでの試行錯誤の末に確立したクリニックにおける経営手法は、こちらのページで無料公開していますので、ぜひ参考にしてください。
ポイント②院長の想いを理解する
経営の大部分は事務長が主導しますが、根幹となるクリニックの方向性について、院長の考えをよく理解することが大切です。院長の考えや想いのもと、それを実現できるように戦略を考えていきましょう。
私の主人もスタッフマネジメントの部分は私にほとんど一任してくれていますが、医療サービスの向上やそれに伴う設備投資などについては積極的に想いを伝えてくれます。
私は事務長として、
- 院長が気持ちよく患者さんに安全な医療を届けられる環境
- スタッフが幸せに働いてくれる環境
を整えるために経営を担っていると言っても過言ではありません。
院長の想いを把握するためには、クリニックの「経営理念」を院長とともに作ることをおすすめします。
経営理念という大きな考えの軸を共有することで、あらゆる判断の拠り所にできるためです。
>>【参考】医院・クリニック開業のステップ①-1「経営理念」の策定方法
ポイント③院長とスタッフ/患者/業者との仲介役となる
クリニック経営をしていく中では
- スタッフからの相談
- 患者さんからの相談・ご指摘
- 関係業者とのやりとり
など、さまざまな事項に対応していかなければなりません。
これを全て事務長が一手に担う必要はもちろんありませんが、一旦整理して院長に相談、報告する必要があります。
事務長がしっかりと整理して方向性をある程度考えてくれるだけでも、院長の負担は大きく減ります。
このように関係者との仲介役となることも非常に大切なポイントです。
ポイント④クリニック発展の牽引役となる
最後に、クリニックが常に前進していけるよう発展の牽引役となりましょう。
毎日同じルーティンワークを繰り返しているだけの組織は必ず衰退します。
かつての医療機関は一生安泰と言われていましたが、今は医療機関の3割が赤字に陥る危機的状況です。
これは赤字経営の医療機関が過去の好景気に慢心し、現状維持を続けた結果だと私は認識しています。
常に時代の変化を機敏にとらえ、新しい取り組みにチャレンジする気概を持ってください。
私は電子カルテの導入などIT化を業界に先駆けて行ったことで、現在も安定した収益を確保しています。IT化の詳細についてはこちらのページを参照ください。
新しい情報を仕入れるためには
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- 院長の学会・医師会の参加
- 関連雑誌
- スタッフの外部研修
などを活用すると良いです。
また、私のクリニックマーケティングアカデミーは、クリニック経営者が集まるコミュニティとなっていて積極的な情報交換が行われています。
私自身も勉強になることが多く、非常に活発なコミュニティとなっています。よかったら参加してください。
まとめ
本記事では、開業医の妻が経理専業になるべきでない理由と、経営者としての具体的ポイントについてご紹介しました。
院長となるご主人の腹心としてサポートしてください。
それが必ずご主人にとってもあなたにとっても、そしてあなたのクリニックで働くスタッフにとっても最良の結果となると信じています。
事務長になる勇気・自信がなくて躊躇しているかたは、ぜひこちらの記事も参考にしてください。私が全くの未経験から事務長となった時の話を紹介しています。