クリニック経営においては診察や治療はもちろんのこと、裏方の経理業務もとても重要です。しかし、その業務の多さや煩雑さゆえに手間がかかることも多いでしょう。
そんな中、IT技術の進化により、経理業務を効率的に行うことが可能となっています。経理業務の効率化を図ることで、経営やマーケティングの学びといった、さらなるクリニックの発展のための時間を増やすことが可能です。
開業当初の私は、ITツールやパソコン操作に疎く、経理業務に時間を取られていました。そこで、パソコンスクールに通ってイチからパソコン操作を学習し、さらに45歳頃には大学に入学し、経営やマーケティングの深い知識を身につけたのです。
そのおかげで、現在では様々なデジタルツールを駆使しながら、あらゆる面でクリニック経営をサポートしています。
本記事では、私が実践してきた経理業務の効率化方法とITツールの活用についてお伝えします。あなたのクリニックで経理業務の効率化にお悩みでしたら、今回の内容が参考になれば幸いです。
クリニックの経理業務を効率化すべき理由
クリニック経営は、単に医療行為を提供するだけでなく、経営戦略やマネジメント、広報・マーケティングなどその業務範囲は多岐にわたります。
中でも経理業務は、院長夫人が担うことが多いですが、慣れない会計に四苦八苦する方も多いでしょう。煩雑で複雑な経理業務は積極的に効率化すべきです。ここでは経理業務を効率化すべき理由を3つ解説します。
信頼できる事務長の存在が院長の孤独を和らげる
クリニックの経営において院長1人で全てを担うことは、大きなストレスとなり孤独感を増長させる要因となります。特に、事務長が不在のクリニックでは、この感覚はさらに強まる傾向にあります。
外部の経営コンサルタントに委託するクリニックも少なくありませんが、あくまで外部の人間であり当事者ではありません。
そのため、院長が診療に専念するためには、日常業務や経営の中で信頼できる事務長の存在が不可欠です。したがって、院長夫人は経理業務に専念するのではなく、事務長として院長を支えることが求められます。
経理専業では院長との視点のずれが生じるリスク
院長夫人が経理業務を専門に担当することで、その視点が固定化し、経営全体の視点と乖離するリスクが増えます。経理の細かな視点と経営の大局的な視点は異なるため、両者の間で衝突が起こる可能性が高まるでしょう。
このような状況は、クリニック経営の効率やスムーズな意思決定を阻害する要因となり得ます。また、夫婦間に亀裂が入るなど、お互いにストレスの原因になりかねません。実際、クリニック経営は数字だけで見えない課題や問題が多岐にわたります。そのため、同じ視点で見ることが大切です。
実務専業がスタッフとのコミュニケーションの障壁となる
経理やその他の実務を専門とする院長夫人が、たまにクリニックを訪れるだけでは、スタッフとの距離感が生まれやすくなります。
特にスタッフは、クリニックの日常業務を知らない院長夫人を前にすると、無意識に気を使い、働きづらさやコミュニケーションの障壁を感じることがあります。
ITツールを活用するメリット
クリニック経営の現場において、効率的な業務遂行のためにITツールの活用は特に大切です。ここでは、クリニック経営におけるITツール活用のメリットを3つの視点からご紹介します。
戦略的なマーケティング活動への注力が可能
経理などの日常業務をITツールで効率化することで、マーケティングなどの戦略的な業務に集中的に取り組む時間が生まれます。
オンラインでは、Googleビジネスプロフィール(MEO)のほか、LINEやFacebookといったSNSを駆使した情報発信や予約管理を行うことで、新規の患者さんの来院数向上へと繋がるでしょう。
一方、オンライン以外でも院内掲示やパンフレットの制作、さらには院内インテリアの工夫を通じて、患者さんとの信頼関係を築くことができます。
院長のサポートに専念できる時間の獲得
院長夫人の業務効率が向上することで、院長のサポートに専念する時間が増えます。経営のサポートはもちろん、院長の日常の業務管理、スタッフのマネジメントなど、さまざまな面でのバックアップが実現可能となります。
とりわけ院長は患者さんへの診療のほか、クリニック経営に関するあらゆる意思決定を行う立場です。ストレスを抱えないように、なるべく院長夫人が側にいて献身的にサポートすることが望ましいでしょう。
ワークライフバランスを保てる
クリニック業務の効率化により、総労働時間の短縮や仕事のストレスが減るため、ワークライフバランスを保つことにつながります。クリニック経営にとって最も大きな資本は院長の健康ですので、業務に追われて家事が疎かになってしまっては本末転倒です。
ITで置き換えることができる業務は積極的にIT化を進め、家庭で院長がリラックスできる環境作りに努めましょう。
おすすめのデジタルツールを紹介
クリニック経営における効率的な業務遂行のためのデジタルツールは多岐にわたります。ここでは、私が実際に使って業務効率につながったおすすめのツールを紹介します。
オンライン会計ソフトウェア
オンライン会計ソフトウェアを利用することで、従来の手書きやExcelによる経理作業と比べて、記帳の手間が大幅に減少します。しかし、現在は税理士に入力作業を任せています。
クラウド会計システムを採用しているので、常に最新のデータを元に経営判断ができるため、よりスピーディな意思決定が可能です。
クラウドソーシング
ランサーズ、クラウドワークス、ココナラなどのクラウドソーシングを活用すれば、特定の業務を外部のプロに委託することが可能です。自分で全てやらなくとも部分的にプロに任せることで、作業の質を上げつつ、空いた時間を他の業務に費やすことができます。
例えば、広告デザイン、Web広告の運用、ブログのライティングなど、多岐に渡る業務を任せることが可能です。
インターネットバンキングの活用
インターネットバンキングを活用することで、銀行に出向く必要がなくなります。これにより、振込や残高照会などの業務をいつでもどこでも行うことができ、時間の節約に繋がります。
また、郵便局の「Webゆうびん」を使えば、郵便局へ行かずとも請求書や各種書類の発送をインターネット上で行うことが可能です。
ECサイトの活用
備品購入や消耗品の注文など、クリニック運営に必要なアイテムをECサイトを通じて購入することができます。まとめ買いをすることで割引されることもあるのでとてもお得です。
また、定期購入の設定もできるので、注文忘れの防止や自動化による業務効率化にもつながります。
行政システム(eLTAX)の活用
「eLTAX(エルタックス)」は、税務署への税金の申告や納税がオンラインで行えるシステムです。従業員の住民税の特別徴収などもオンラインで行えるため、銀行に出向く手間がなくなります。
院内コミュニケーションツールの活用
スタッフとのコミュニケーションツールとして「LINE」「LINE WORKS」などを活用することで、日々の情報共有やコミュニケーションが円滑になります。
特に、LINE WORKSはビジネス向けのアプリケーションなので、プライベート利用のLINEと切り分けて利用することが可能です。
まとめ
本記事では、ITツール活用による経理業務の効率化について解説しました。これまで、院長夫人の役割といえば、経理業務が大半で、他の業務はほぼ全て院長が担っているといったケースが多く見られました。
しかし、近年のクリニック経営は単に医療行為を提供するだけでは患者さんから選ばれにくくなっています。そのため、院長夫人がしっかりと現場に出て、マーケティングやマネジメント、経営戦略の立案、業者や金融機関との交渉など、経営参謀としての役割を果たすことが求められます。
したがって、面倒で手間の掛かる経理業務はデジタルツールを活用し、他の業務に費やす時間を捻出しましょう。さらに、経理業務以外にもクリニック経営をスムーズに進めるためのITサービスは数多く存在します。
ITツールを活用して業務の効率化を図ることで、あなたのクリニックがより質の高いサービスを提供し、クリニックの発展に繋がることを願っています。