クリニックのスタッフ教育にお悩みではありませんか?
クリニック経営において、スタッフ教育の重要性は誰しも痛感していることと思います。
しかし、実際にどんな教育をすれば良いのか分かりづらいですよね。
そこで本記事では、私の16年間のクリニック経営の経験から体得した、スタッフ教育のポイントについてお伝えします。
この記事を読むことで
- スタッフ教育の2つのポイント
- 具体的な教育内容
- スタッフ教育に必要な5つの準備
がわかります。
この記事がスタッフの育成に悩む院長先生や事務長さんの助けに少しでもなれば幸いです。
【はじめに】スタッフ教育の目的
本記事でお話する内容は、スタッフの技術的なスキルについてお話するものではありません。
医療技術は、診療科や専門性の高さによりまったく異なるため、一概にお話することはできないからです。
本記事では、技術的なことよりも前提となる、
- クリニックという組織で働くためのマインド
- 患者さんに信頼していただくためのリテラシー教育
の具体的な内容についてお話します。
スタッフ教育の2つのポイント
私の経験から、スタッフ教育を初めて行う場合に重点を置くべきポイントは以下の2つです。
- 組織力(協調性)の向上
- リテラシーの向上
組織力(協調性)の向上
組織の中で働くこと、協調性の部分を教育します。
クリニックは様々な業務の掛け合わせによって成り立っていますので、組織としての力を向上させることが、質の高い医療サービスの提供に欠かせません。
リテラシーの向上
接遇スキルや感染症対策の徹底といった、患者さんからの「信頼」を得るために必要な知識や考え方を教育します。
各スタッフが正しい知識を持って適切な対応をすることで、患者さんが安心してクリニックをご利用してくださいます。
組織力向上の具体的教育内容
それではここから具体的な教育の内容についてご説明します。
組織力の向上のために私がおすすめするのは、以下の3点です。
- 理念の共有
- 院内ルールの共有
- 業務フローの見える化
理念の共有
組織力向上にもっとも大切なのは、経営理念の共有だという考えに私は行きつきました。
経営理念こそが、組織が一丸となって実現を目指す理想の姿だからです。
理念が共有されていない組織は、いわば目的地のない船のようなものでしょう。
船員が自分勝手に行きたい方向にオールを漕ぐので、船は全く進みません。
しかし全員が同じ目的地に向かってオールを漕げば、目覚ましい速度で舟は動き出します。
わたしは経営理念は、このように組織が同じ方向を向いて最大限のパワーを出すために欠かせないものと考えています。
院内ルールの共有
就業規則や身だしなみに関するルールやコンプライアンスなど、院内のルールをしっかりと作りスタッフに共有することも大切です。
明確なルールを作らずにスタッフ個人の判断に任せると、スタッフ間のトラブルのもととなり、組織の結束力が下がるからです。
たとえば髪の毛の長さです。
本人はクリニックスタッフとして差し支えない長さだと思っていても、それを不快に思うスタッフもいるかもしれません。
このため私のクリニックでは「髪の毛の長さは肩に当たらない長さとする」と明確に定めています。
院内ルールはスタッフ自らが作るとより効果的
私のクリニックでは、就業規則をはじめ、院内ルールはスタッフとともに作りました。
そうすることで、以下のように非常に大きなメリットがありました。
- 自分たちの決めたルールなので、納得感がある
- クリニックのスタッフとしてあるべき姿を真剣に考える機会となる
ぜひ一度、スタッフとともに院内ルールを考える機会を作ってみることをおすすめします。
就業規則は一度作って終わりではありません。クリニックが良くなるように、何度も改善を繰り返しましょう。
具体的な方法については、こちらのページをご確認ください。
<補足>
就業規則は社会的な価値観の変化に合わせて都度修正が必要です。
当クリニックでも髪の毛の明るさの限度を近年変更しました。
- 変更前:カラーサンプルの番号で明示
- 変更後:染髪をする場合は清潔感・好感を持てる色とすること
規則の変更にあたって相談した社労士曰く、「昨今は茶色い色の方が似合う人もいる。」とのこと。
時代の変化とともに価値観は変わります。柔軟に対応したいですね。
業務フローの見える化
業務フローを見える化して、自身の業務の前後のつながりを理解してもらいましょう。
業務フローを把握していると、次の工程がやりやすいように工夫が生まれ、全体としての業務効率が格段にアップします。
また、業務フローの見える化は、業務のボトルネックの発見を容易にさせます。ボトルネックを改善することで、業務効率を向上させることにもつながります。
リテラシー向上の具体的教育
続いてリテラシー教育の具体的な内容をご紹介します。ポイントは以下の3つです。
- 接遇スキルの向上
- 衛生管理の徹底
- 感染予防対策
接遇スキルの向上
まず第1に接遇スキルの教育です。スタッフの接遇スキルは、患者さんの満足度に直結するからです。
そして患者さんの満足度は、口コミという形でクリニックの集患に大きく影響を及ぼします。
私のクリニックでは開業当初より接遇スキルの教育には外部講師を招いて継続した訓練を行っています。接遇の大切さを認識しているため、患者さんの来院理由の第一位は常に口コミによるものです。
JALで接遇マナーを教えている講師を招いたり、元アナウンサーを招いて発声や滑舌を良くするトレーニングを学んだりしています。
私のクリニックでは1年に3~4回、外部講師を招いて半日間の接遇研修を全スタッフに受けてもらっています。
さらに、
・週一回の朝礼
・月一の院長ミーティング
にて課題を抽出し、接遇にさらなる磨きをかけています。
私はクリニックにとって、接遇は最も大切なスキルだと考えています。
衛生管理の徹底
2つ目にクリニックの衛生管理に関する教育です。
クリニックが衛生的であることは、患者さんからの信用に大きく影響するからです。
患者さんにとって、クリニックは清潔で衛生的であるということは大前提であり、もしかかりつけのクリニックが不衛生だと知ったら、失望して二度とそのクリニックには行かなくなるでしょう。
しかし、衛生管理は正しい知識を持っていないと、しっかりと管理ができません。
そのためクリニックで教育のカリキュラムを設け、正しい知識を身に着けることが重要です。
感染予防対策
最後に、感染症予防に関する教育です。
新型コロナウイルスの世界的な拡大により、どの業種においても感染症への対策が求められています。
また院内感染対策の研修は、医療法により年2回程度が義務付けられていますので、コンプライアンスの面からも必ず行ってください。
私のクリニックでは、衛生面や感染症対策については、マニュアルを作成し、それをもとに入社時に徹底的に教育します。
また、定期的な勉強会を開催するなかで、毎回テーマを決めて、そのテーマでの感染対策・衛生管理について掘り下げて学んでいます。
スタッフ教育に必要なもの
これまでスタッフ教育の具体的な内容についてご説明してきました。
ここからはその教育を実施する上で準備しておくと良いものを5つご紹介します。
<スタッフ教育に準備すべきもの5つ>
- 教育スケジュールの作成
- メンターの設置
- スキルマップの作成
- 業務マニュアルの作成
- 教育レポートの管理体制
教育スケジュールの作成
誰が、いつ、何を教えるかを明確にした教育スケジュールを作成しましょう。
これにより、教えるスタッフが準備できるので、教育がスムーズに進みます。
メンターの設置
メンター制度とは、年齢の近い先輩スタッフが、仕事だけでなく私生活などの面でもサポートする制度です。
特に新卒スタッフを教育する際にはメンター制度の導入をおすすめします。
新社会人となる新卒スタッフは、学生時代から環境がガラリと変わり、精神的に不安定だからです。気軽に相談できるメンターがいることは、非常に心強いはずです。
メンター制度には
- 新人スタッフが悩みを気軽に打ち明けられる
- メンタースタッフに教育者として自覚が芽生える
など様々なメリットがあるので、初めの3ヶ月だけでも導入しておくことをお勧めします。
スキルマップの作成
スキルマップの作成は、
- 誰にどんな教育が必要か
- 誰がその教育を行うことができるか
などをすぐに把握できるので、長期的な教育計画を立てる上で非常に便利です。
業務マニュアルの作成
定例的な業務には、マニュアルを作成しましょう。
マニュアルを作ることで
- 教育の担当者がいなくても学習できる
- 久しぶりの業務の場合に復習できる
- 仕事の質が均一化される
など、様々なメリットがあります。
教育レポートの管理体制
教育を受けたスタッフには、理解度確認のために教育レポートを提出してもらいましょう。
インプットしたことをレポートとしてアウトプットすることで知識の定着効果もあります。
私のクリニックでは、教育レポートは電子化しスタッフ全員と事務長、院長が全て即時確認できる体制を整えています。
そして、その記録をもとに年2回の面談を通じて今後のキャリアプランを一緒に考えていきます。
スタッフの成長度を院長や事務長が知ることはとても大切なことですので、「書かせて終わり」
にならないよう活用しましょう。
【終わりに】スタッフ定着への努力も怠らないこと
スタッフ教育は、クリニックが患者さんに支持され、長期に安定して経営するために必要不可欠です。
しかし、せっかく教育して成長したスタッフにすぐに辞められてしまっては、教育が無駄になってしまいます。
クリニック経営には、 スタッフを教育するだけでなく、スタッフが長期で働ける労働環境を用意することも同様に大切です。
私の経験に基づいた、スタッフ定着のポイントについて紹介しているこちらの記事も是非参考にしてください。
まとめ
本記事では、クリニックスタッフの教育のポイントについてご紹介しました。
<組織力向上の教育>
- 理念の共有
- 院内ルールの共有
- 業務フローの見える化
<リテラシー向上の教育>
- 接遇スキルの向上
- 衛生管理の徹底
- 感染予防対策
スタッフ教育により頼もしく育ったスタッフとともに医療サービスの質を上げ、地域の患者さんに絶大な信頼を置かれるクリニックを実現させてください。