「最近スタッフが仕事に不満を抱えているように感じる」「そもそも何に不満を感じているかわからない」このような悩みを抱えていませんか。
クリニックでは日々の仕事の忙しさから、スタッフが不満を抱えることも少なくありません。しかし、その原因となる問題を棚上げ(先送り)していると、スタッフの不満はさらに大きくなり、トラブルに発展することもあります。
問題の棚上げを防ぐためには、スタッフの不満を検証することが大切です。そこで今回は、スタッフの不満を検証する際のポイントを解説します。
スタッフの不満が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
問題の棚上げによって引き起こされる悪影響とは
クリニックに限らず、職場では人間関係や仕事上のトラブルなど様々な問題が発生します。とりわけ医療機関であるクリニックは、日々数多くの患者さんが来院される上、少人数のスタッフで業務をこなす必要があるため、ちょっとした問題やトラブルは日常茶飯事です。
軽微な問題であれば、チームワークを発揮することで解消できますし、大きなトラブルに発展することもありません。むしろ、一人のミスをチーム全体でカバー出来るということが職場の良さでもあります。
また、軽微な問題であっても原因を究明し、同じことを繰り返さないために、運用を見直すことこそが、より健全なクリニック運営に繋がります。
しかしながら、発生した問題を棚上げ(先送り)し、何事もなかったかのように放置してしまえば、いつまでも同じような問題が繰り返し発生します。また、問題を棚上げし続けることで、スタッフは「何も改善してくれない」と感じてしまい、クリニックに対して不信感を募らせるでしょう。
問題の棚上げは、スタッフとの信頼関係が失われ、モチベーションの低下や辞職にも繋がるリスクがあります。
クリニックのスタッフの不満を検証する際のポイント
スタッフが不満を抱えすぎないようにするには、不満が小さなうちから問題解決に向けて働きかけることが大切です。問題の芽が小さいうちに解消すれば、大きなトラブルを防ぐことができます。
しかし、問題が小さいうちはスタッフも声に出しませんし、何となく違和感を持ったとしても「大丈夫だろう」と問題を棚上げしてしまいがちです。ここではスタッフの不満を検証する際のポイントを解説します。
スタッフの意見に耳を傾ける
スタッフの意見を聞く機会を設けることです。
一人ひとりと個別の時間を取った上で、
といったように意見を聞くようにしましょう。その際、やみくもに注意したり、「こうしろ、ああしろ」と指示をしたりはしません。まずは、スタッフの言葉をしっかりと傾聴します。
相手の意見を尊重し、良好な人間関係を保つことを、心理学では「ラポール形成」と呼びます。良好な信頼関係が築ければ、悩みや不満を打ち明けてくれるようになります。また、信頼を寄せてくれる人の期待に応えようと、より一層活躍してくれるでしょう。
スタッフ自身で解決策を考える機会を作る
何か問題が起きたときに、なんでもかんでも指示をせず、あえてスタッフ自身で考える機会を作ることも大切です。もちろん、院長や事務長が解決策を提示し、それに従ってもらった方が話は早いかもしれません。
しかし、それではスタッフは指示がなければ動けない「指示待ち人間」になってしまいます。クリニックでは、さまざまな問題が起きますので、問題の程度によってはスタッフ自身で解決してもらう場面も必ず出てきます。
ただし、「それくらい自分で考えなさい」というように突き放す態度を取るのはNGです。
スタッフの目線に立って、
といったように、相手の意見を尊重する姿勢を意識しましょう。
直接的な解決策だけを示さない
問題が発生した際に、過去の経験などから直接的な解決策を示すことは多いでしょう。ただし、これは答えを教えているようなものなので、本人が成長を実感しにくいアプローチです。
もちろん、経験が浅いうちは、具体的な内容を指導する「ティーチング」は大切です。しかし、ある程度業務に慣れてきたスタッフは、次第に教わることも少なくなります。細かな指示ばかりしていると「信じてくれてないのかな」「毎回同じことばかりでしつこいな」と不満を感じてしまうでしょう。
ベテランのスタッフには、主体性や自発性を高める「コーチング」が重要です。スタッフの力量にあわせて、ティーチングからコーチングスタイルにシフトすることで、伸び伸びと働いてくれるようになります。
当院で実際にあった事例
当院では、定期的にミーティングをしたり、懇親会を開催したりして、スタッフの声を聞く場を設けています。
すると、スタッフからは少なからず不満の声が上がってきます。中には院長や事務長の意図が十分に伝わっておらず誤解しているものもあれば、「それは盲点だった」と反省させられることもあります。
スタッフの声にしっかり耳を傾けて、改善すべきことは改善するのがクリニック運営のポイントです。ここでは、当院で実際にあったスタッフの不満をいくつか紹介します。
1.有給休暇が取りづらい
業務が忙しい、人員不足、どのタイミングで取得していいか分からないなどの理由で、有給休暇を十分に消化できないという不満を持っていました。
そこで当院では、「お誕生日休暇制度」を作りました。この制度は、お誕生日を迎えるスタッフに半強制的に有給を取得してもらうというものです。
続いて、完全電子化による業務効率化を実施しました。この結果、スタッフの業務負担が減り、周囲に気兼ねなく休め、有休消化率100%を実現しました。
2.育児しながらの正社員勤務
小さいお子さんがいるスタッフは、拘束時間が長い正社員勤務では労働条件が厳しく、子育てを優先したいという希望から、パート社員(非正規社員)に契約変更をしていました。
しかし、正社員としてずっと社会保険を支払っていたスタッフからすれば、契約変更で社会保障が手薄になるのは不満という声もありました。
また、パート社員に契約変更したスタッフは、業務に対するコミットメントが低くなる傾向が見られ、これは医院にとっても不利となりました。
そこで、「時短勤務の正社員制度」を新たに設け、子育て中のスタッフでも社会保障を維持しながら、働けるようになりました。
3.仕事の覚えが悪いスタッフへの対応
キャリアの浅いスタッフに対して、指導するスタッフから不満が上がるケースです。何度教えても仕事を覚えないスタッフは、機転が利かない、応用ができないケースが多く、さらにミスも目立ちます。
稀に、分からないのに質問をしないというケースもあります。こうしたスタッフは、自己判断で仕事を進める傾向があるため注意が必要です。患者さんに何かあったら取り返しがつかないため、仕事ができないスタッフへの指導は慎重かつ厳しくならざるを得ません。
さらに、能力が低いスタッフによって、能力が高いスタッフのストレスが大きくなっては本末転倒ですので、指導するスタッフの負担が大きくならないよう配慮することも大切です。
何度指導しても改善が見られない場合は、適材適所でそのスタッフに向いた仕事を振り分けることも検討しましょう。その際、雇用条件(給与)を再査定し、他のスタッフとの公平性を保つことが大切です。
まとめ
日々数多くの患者さんに対応するクリニックは、スタッフの存在によって成り立っている部分が大きいでしょう。しかし、スタッフも人間ですので、不満や悩みを抱えているケースは少なくありません。
すべての不満を解消することは難しいかもしれませんが、まずはスタッフに歩み寄って、不満の原因を把握することからはじめましょう。
スタッフの不満が解消されれば、モチベーション高く働いてくれるようになるため、患者さんの満足度が向上し来院数が増えることにもつながります。また、スタッフの辞職率が低下することで、人材採用コストや教育にかかるコストの削減にもつながります。
不寛容でギスギスした職場よりも、お互いに信頼し合っている職場は、雰囲気も明るく居心地が良いものです。まずは、目の前で起きてる問題を棚上げせず、スタッフに対してコミュニケーションを図ることから始めてみてください。