「スタッフが思うように動かずクリニックの業務が上手く回らない」「スタッフはもっと周りを見て動いて欲しい」このような不満をお持ちではないでしょうか。
しかし、こうした人材にめぐり合うことはなかなか難しいものです。自院にとって都合の良い人材を探すよりも、もっと大切なことがあります。それは、今いるスタッフと信頼関係を築くことです。
スタッフと深い信頼関係を築くことができれば、コミュニケーションが円滑になり、クリニック全体の業務効率化に直結します。本記事では、スタッフとの信頼関係の重要性から、信頼関係を築くためのポイントまで解説します。
後半では当院の事例も紹介していますので、ぜひ参考になさってください。
院長とスタッフの信頼関係の重要性
クリニックを円滑に運営するには、何よりも院長とスタッフの信頼関係が重要です。もちろん雇用主と従業員というように立場は違います。
しかしながら、「雇っているのはこっちなんだから」といったように、上から目線の態度で接してしまえば、いつまでも信頼関係は深まりません。一方、信頼関係が深まることで、あらゆる場面で好影響がもたらされます。
意見やアイデアが活発になる
信頼関係が築かれていると、スタッフは自由に意見やアイデアを共有しやすくなります。これにより、新しい視点や課題解決策が生まれる可能性が高まるでしょう。そうすることで、なにか問題が生じた際にも早期に対応できるようになります。
モチベーションが向上する
院長との信頼関係があることでスタッフのモチベーションが向上します。自分の意見が尊重されたり、行動を認められたりすれば、承認欲求が満たされるものです。
人は自分のことを認めてくれる相手に対して、安心感や信頼感を覚えます。結果として自信や意欲が高まり、より良いパフォーマンスの発揮が期待できるでしょう。
スタッフ満足度が高まり離職率が低下する
院長とスタッフが深い信頼関係で結ばれていれば、就業満足度や帰属意識が向上するため、離職率の低下にもつながります。
スタッフに長く働いてもらえれば、人材採用コストや育成に掛かる費用や労力を大きく減らすことができます。
院長とスタッフの信頼関係を深めるポイント
そもそも信頼関係とは、「お互いに相手のことを頼りにし合える関係」のことです。
あれこれ細かく指示することで、スタッフは「信頼してもらえていないのかな」と感じてしまうため、信頼関係は深まっていきません。
それでは信頼関係を深めるには具体的にどのようにしたら良いのでしょうか。ここでは、信頼関係を深めるポイントを5つ解説します。
1.スタッフの意見を尊重し理解を示す
スタッフの視点に立ち、その意見や要望に理解を示すことは信頼関係の土台になります。スタッフに、「自分の意見やアイデアを尊重されている」と感じてもらうことで、クリニックへの帰属意識が高まります。
定期的に意見交換する場を設け、アイデアや提案を歓迎する風土を育てることが重要です。
2.コミュニケーションの円滑化に取り組む
風通しが良いコミュニケーションは、互いの理解を深めることはもちろん、信頼関係を強化します。一方、必要最小限の指示しかしていないと、意図や目的が伝わらなかったり、誤解を招いたりすることがあります。
そのため、定期的にミーティングを開催したり、情報共有のためのコミュニケーションツールを活用し、コミュニケーションの円滑化に取り組むことが大切です。
3.スタッフのキャリアとスキルアップを支援する
スタッフのキャリアアップやスキルアップを支援することで、医療従事者としての能力開発と本人の自信を高めることにつながります。また、スタッフが将来なりたい姿や仕事で実現したい目標を聞き、院長や事務長はその実現に向けてさまざまな機会を提供することも大切です。
そうすることで、スタッフは「ここにいると成長できる」「私を理解しサポートしてくれる」と感じるため、モチベーションが高まり、信頼関係が深まります。
4.コンプライアンストレーニングを実施する
クリニックがコンプライアンス(法令や規則をよく守ること)を徹底し、継続的にトレーニングを実施することもスタッフの信頼関係につながります。とりわけ医療分野では、法律以外にも論理規範など守らなければならないものが数多くあります。
不祥事やコンプライアンス違反が明るみに出た場合、患者さんからの信用も落ちますし、最悪はネットで炎上する可能性もあります。
コンプライアンストレーニングを定期的に実施することで、こうしたリスクを防ぐことはもちろん、「自分たちはコンプライアンス意識を徹底している」というインナーブランディングにもつながります。
その結果、スタッフは院長を信頼するようになり、自分たちの仕事に誇りと自信を持って働いてくれるようになります。
5.クリニックのビジョンや目標を定める
クリニックのビジョンや目標を設定し、その実現に向けて互いに協力し合うことは、信頼関係を深める大切な要素です。
「地域で最も信頼されるクリニックを目指そう」「スタッフが休みやすい職場を作ろう」といったように、ありたい姿や実現したい目標を掲げることで団結力が生まれます。そして、スタッフ一人ひとりが、クリニック全体に対して自分の仕事ぶりがどのように貢献しているのかを認識することにもつながります。
当院の事例
開業当初、院長自身が医療の業務に精一杯でスタッフの意見に耳を傾ける余裕がなく、事務長としての私も経理と雑務に追われてスタッフマネジメントまで手が回らない状態でした。その結果、スタッフとの信頼関係が築けず、一部のスタッフが反抗的な態度を取るなど院内に悪い空気が流れるようになったのです。
そこで私たちは、まずはスタッフが抱えている不満を引き出すために社会保険労務士に入ってもらい、個人面談を行いました。そして上がってきた課題に対して一つずつ丁寧に対応していったのです。すると、「休みにくい」という声が多かったことがわかりました。それに対して、スタッフ増員や予約受付方法の変更、さらにシステムの改善などに着手しました。
その結果、「休みにくい」クリニックから「休みやすい」クリニックへと変貌を遂げ、現在では有休消化100%を達成しています。また、コロナで複数のスタッフが病欠した時でもクリニックは順調に稼働でき、スタッフにとって強い自信となりました。
まとめ
クリニックの業務効率化は、特別なツールを導入したり、優秀な人材を採用することではなく、院長とスタッフの間の良好な信頼関係から生まれます。もちろん仕事である以上、必要以上に甘やかす必要はありませんし、時には厳しく注意することもあるでしょう。
しかし、院長や事務長が一人ひとりのスタッフに向き合い、それぞれの想いや考えに理解を示すことで、スタッフは信頼してくれるようになります。そして、信頼関係があれば多少厳しいことを言っても理解してくれるものです。
信頼関係に結ばれチームワークが発揮されれば、結果的に患者さんからも信頼されるようになります。本記事を参考にスタッフとの信頼関係を深め、より良いクリニックの運営を実現して参りましょう。