
自分なりに計画を立てながらクリニックを経営しているものの、働き方から患者さんの満足度まで行き届いた経営が難しいと感じていませんか?
安定した集患で地域からも愛されるクリニックを作るためには、三方よしの考え方を取り入れた経営が大切です。三方よしとは江戸時代の商人が考えた商売の考え方を表す言葉で、現在では多くの企業が経営の軸として取り入れています。
この考え方はクリニック経営にも活かすことができ、三方よしを意識することでスタッフや院長はもちろん、地域から信頼され、愛されるクリニックを作ることができます。

江戸時代に誕生した言葉「三方よし」

三方よしとは江戸時代中期に商人として世界的に活躍した近江商人の言葉で、商売を成功させる上で大切な理念を表しています。
三方よしは次の3つが満たされることが大切であるという意味があります。
- 売り手よし:商品やサービスを売る商人側が利益を出すこと
- 買い手よし:商品やサービスを買う客が買ったものに対して満足すること
- 世間よし:環境や地域、業界など社会全体によい影響を与えること
売り手や買い手の利益や満足度に加えて、社会全体の発展によい影響を与えたり環境問題に配慮したりと、社会貢献ができる商売こそ成功するという考え方です。
企業の経営でも利用される現代における三方よしとは

三方よしは江戸時代の商売の考え方として生まれた言葉ですが、現代では企業経営の軸となる考え方として利用されています。
三方よしを取り入れている有名企業は次の通りです。
- 高島屋
- 伊藤忠商事
- 住友財閥
これらの企業は理念や経営方針に三方よしを取り入れており、企業として大きな成長を遂げています。
売り手・買い手・世間が満足できることをベースにした事業戦略や改革は安定した経営につながります。三方よしの考え方は自分たちの利益や働きやすさだけでなく、公益性の高い経営を生み出すので周囲からの信頼性も高くなるでしょう。
三方よしはクリニック経営に当てはめることができる
多くの企業が取り入れている三方よしですが、この考え方はクリニック経営にも活かすことができます。3つの言葉をクリニックに当てはめることで、自ずと経営の軸が見えてきます。
売り手よしは「スタッフよし」
売り手よしをクリニック経営に当てはめると「スタッフよし」といえます。スタッフよしはスタッフが働き方や環境に対して満足していることを表しています。
企業の考え方と同じように医院が利益を出しているかということも重要ですが、クリニック経営ではそれ以上に働いているスタッフが不満なく楽しく働いているかが大切です。
スタッフの満足度は利益の有無という一般的な売り手よしの考え方とは少し違いますが、安定した経営を行う上で非常に重要だと考えています。
買い手よしは「医院よし」
買い手よしは「医院よし」に言い換えることができます。医院よしとは安定した集患と高い評判で医院が繁盛することです。
買い手が商品やサービスに満足してリピートするように患者さんがクリニックのサービスに満足し、困ったときに頼るようになると買い手よしと同じような状況が生まれます。
また、口コミなどで評判が高まることも買い手の満足度を表しており、クリニックが繁盛することにつながります。そのため、買い手よしをクリニックに当てはめる場合は集患と評判によって医院が繁盛しているかを意識しましょう。
世間よしは「地域よし」
世間よしはクリニックに当てはめた場合「地域よし」になります。地域よしの考え方は、患者さんだけでなく地域住民の方にも愛されることを表しています。
世間よしよりも狭い範囲になりますが、いきなり環境や社会全体などの大きな問題から解決するより挑戦しやすく、クリニック経営の安定につながりやすいでしょう。
クリニック経営で三方よしを活用する考え方
私が当院で実践している三方よしを活用したクリニック経営の考え方を紹介します。具体例を挙げながら解説するので、三方よしの考え方をどのように活かしたらいいか分からない方は、ぜひ参考にしてください。
スタッフよし
当院のスタッフよしの考え方は、スタッフがそこで働きたいと思う職場であることが前提となっています。
クリニックは院長と事務長の2人きりでは到底経営はできず、スタッフの助けが必要です。そのため、当院で働くことでスタッフ自身が成長でき、その成長を患者さんが享受できるという循環を作ることを意識しています。
そして、スタッフが豊かな人生を送るための経済的報酬のほかに、やりがいや成長を感じさせる意味的報酬を意識的に与え続けていくことも大切です。
例えば、女性スタッフの場合は人生のさまざまなイベントにより、働き方が変わることがあります。当院のスタッフは全員女性のため、クリニック側が柔軟な対応をすることでスタッフからの絶大な信頼を獲得できるようにしています。

このような対応は、当事者スタッフだけではなく他のスタッフにとっても安心して働ける材料となり、スタッフよしの実現につながるでしょう。
医院よし
医院よしでは、クリニックの評判を上げて多くの患者さんに来院していただくことが重要です。クリニックが繁盛しなければスタッフの給与や諸々の経費、そして設備投資も叶いません。
これらを可能にするためには収益を上げ、クリニックを成長させていかなければいけませんが、利益だけを重視しないよう注意しましょう。
患者さんのお財布も心配しながら通いやすい通院計画を立てたり無駄な検査をいれないようにしたりと、道徳的な経営をすることで長期的に安定した経営ができるようになります。
地域よし

来院される患者さんをはじめ、地域住民の方にとっても信頼できる眼科でありたいと考えているため、当院では来院患者さんの治療だけでなく、医師会の会員として市内8校の校医や日曜・夜間の当直をして地域の方の目の健康を守っています。
また、心配な患者さんがいらっしゃれば日曜日でも診察をするようにしています。なぜなら、患者さんの目の健康が本当に大切だからです。
さらに、学校保険医や静岡視覚障害者のある方の生活向上を推進させる協会の会長としてさまざまな活動に積極的に取り組んでいます。
今後、静岡エスパルスのサポーターとして幼児の目の健康教室の開催なども行う予定です。このように、地域住民の方の視界を守ることをモットーに活動することで地域よしが実現できると考えています。
三方よし経営をするときの注意点
三方よしを軸にしながらクリニック経営を行うときは、次の点に気を付けましょう。
- 三方よしそれぞれのバランスを取る
- 患者ターゲットを明確にする
- スタッフや院長の働き方も意識する
これらに注意しながら経営を行うことで、思わぬ失敗や経営の難航を防ぐことができます。
それぞれのバランスを取る
三方よしはどこかに偏ってしまうと上手くいきません。自分たちの利益ばかりを意識すると患者さんは離れていきます。反対に、地域貢献や患者さんのことばかり考えていても利益が出ないのでクリニックの存続が難しくなってしまいます。
今後の事業戦略や経営方法を考えるときは、それぞれのバランスが取れているか確認しながら進めるようにしましょう。スタッフの働き方やクリニックの利益、地域への貢献度などのバランスが取れた経営を行うことで、三方よしのメリットを最大限に活かすことができます。
患者ターゲットを明確にする
クリニック経営を行う上でターゲットを明確にすることは非常に大切です。なぜなら、ターゲットに合わせた経営を行うことで、より安定した集患と患者さんの高い満足度を獲得できるからです。
特に、医院よしを実現するためにはターゲットをはっきりさせておくことが重要です。ターゲットを決めるときは次の項目を明確にしましょう。
- 年代
- 性別
- 働き方(土日しか来院できない会社員など)
- 性格
これらが定まった状態だと医院よしでクリニックの利益が上がりやすくなるだけでなく、信頼や満足度が上がって地域よしにもつながります。
スタッフや院長の働き方も意識する
スタッフよしを目指すためにもスタッフや院長の働き方を定期的に見直すようにしましょう。経営を進めていると、ついついクリニックの利益や患者さんの満足度が優先されてしまいます。
しかし、安定した利益を生み出す質の高いクリニックを作るなら、まず働いているスタッフが満足していなければいけません。
クリニックの存続を意識した改革や戦略も重要ですが、スタッフのライフスタイルの変化や時代に合わせた働き方を考えることも非常に大切です。
まとめ
三方よしの考え方は地域やスタッフから愛されるクリニックを作るために大切な考え方です。長期間繁盛するクリニックを作るなら、三方よしの考え方を取り入れることをおすすめします。
スタッフや地域住民に対する考え方を理解し、医院の利益・スタッフの働き方・地域貢献のバランスが取れた経営を行いましょう。
