「クリニックで働くスタッフがやる気がなくて困っている」「何か不満がありそうだけれど、どんな不満を抱えているのかわからない」
このように、スタッフとの関わり方にお悩みの方も多いでしょう。
院長や事務長からすれば、自院のスタッフには毎日モチベーション高く働いてもらいたいもの。もちろんスタッフも人間である以上、多少の不満があるのは仕方ありません。しかし、小さな不満を放置しておくと、スタッフの突然の離職や問題行動につながるため注意が必要です。
こうした事態を未然に防ぐためにも、自院のスタッフ達がどんな不満を抱えやすいか、理解することが大切です。今回は、当院の事例をもとにスタッフが抱えている不満を解説します。
人間関係の不満
大人数が働く病棟と異なり、クリニックは少人数で運営するため、人間関係の不満が生じやすいのが特徴です。
人間関係のこじれたままではチームワークが発揮されず、業務生産性の低下にもつながります。ここでは具体的な人間関係の不満を3つ解説します。
スタッフ同士の人間関係が悪い
「先輩スタッフの態度が高圧的でコミュニケーションがとれない。」「陰で他のスタッフの悪口を言っている。」といったように、スタッフ同士の人間関係が悪いままでいると、お互いにストレスが高まり、早期離職にもつながります。
スタッフ同士が信頼しあい、全体として業務が回るように支えあうことで、クリニック運営がスムーズに回るようになります。普段からスタッフ同士のコミュニケーションが円滑になるようにミーティングや懇親会などの機会を設けることが大切です。
医師や院長との関係が悪い
「医師や院長がスタッフに対して横柄な態度を取る。」「スタッフによって、あからさまに態度を変える。」といったように、医師・院長とスタッフ間の人間関係の悪さも、不満やストレスの温床となります。
もちろん、日々の医療現場は真剣勝負なので、毎回懇切丁寧に接することが難しく、言葉がきつく感じられてしまう場合もあるでしょう。しかし、就業後には労いの言葉を一言かけるだけでも、スタッフにとっては安心感につながるものです。
指導が厳しい、十分に教育してくれない
指導が厳しすぎたり業務に必要な教育機会を提供しなかったりする場合は、スタッフのモチベーション低下に大きく影響します。
例えば、働き始めたばかりの新人スタッフからすれば、そのクリニックのルールや業務の進め方がわからなくて当然です。そのため、マニュアルを用意したり、診療時間外に研修をしたりなど、十分な教育機会を提供した上で、スムーズに業務に慣れるようにサポートしていくべきでしょう。
設備の不満
クリニックはスタッフが1日の大半を過ごす場所です。そのためクリニック環境の良し悪しは、患者さんの満足度だけではなく、スタッフの就業満足度にも影響します。ここでは具体的なクリニックの設備に関する不満を2つ解説します。
建物が老朽化し、清潔感がない
建物は年数を追うごとに老朽化が進むため、メンテナンスや修繕が必要です。建物自体が古くなるのは仕方ありませんが、壁や床の汚れや染み、破損などを放置したままでは、清潔感がなくなってしまいます。
清潔感がない環境は居心地が悪く感じるものですし、誰でも清潔で新しい環境で働きたいと思うものです。もちろん、建物をリフォームしたり建て替えるのは莫大な費用が掛かるため、容易にできるものではありません。
しかしながら、日々清掃が行き届いていれば清潔感は保たれますし、傷や汚れなども部分的に補修や修繕をすれば維持管理コストも抑えられます。クリニックが患者さんやスタッフにとって居心地の良い環境であるために、清潔感を保つことを心がけましょう。
医療機器が古い
古い機器を使い続けることは必ずしも良いことではありません。もちろん、使い慣れた医療機器は使用者側からすれば安心感があるものです。
しかし、医療機器は日進月歩で進化しています。例えば、最新機器を導入することで、今まで数分掛かっていた作業が数秒で完了できるようになるケースもあります。そうした医療機器を使わずにスタッフに負担を強いるのは、モチベーションを下げるきっかけにもなります。
また、時代の進化に合わせず、今までのやり方に固執しすぎると、スタッフからすれば「新しいことにチャレンジしない」とネガティブに捉えられる可能性もあります。院長はクリニックをより良く改善するためにも、常に最新の医療機器に関する情報のキャッチアップを欠かさないようにしましょう。
制度・待遇の不満
報酬や休暇、福利厚生といった制度・待遇の内容もスタッフのモチベーションに影響します。具体的にどのような不満を抱えやすいか、ここでは4つの例を解説します。
一人当たりの業務量が多い、残業が多い
クリニックは少人数で運営するため、一人が複数の業務を臨機応変にこなすケースがほとんどです。そのため、業務量の多さは不満につながりやすい事柄の一つといえます。また、残業が常態化している場合や、休憩時間がほとんど取れないといった場合も、不満が大きくなる要因のひとつです。
万が一、スタッフが体調を崩してしまったり、急に離職をしてしまったりして、業務が回らなくなってしまえば、患者さんはもちろん、スタッフにも迷惑が掛かります。そのため、一人あたりの業務量として適切なのかどうかを正しく把握することが大切です。
また、基本的には定時帰りや休憩時間の確保は遵守すべきです。診療受付時間を遵守し、それ以外の受付はできないことを患者さんにも周知徹底するなどして、オンオフのメリハリを付けるべきでしょう。
給与、待遇が良くない
「業務量の割に給与が少ない」「他院と比べて福利厚生が充実していない」といったことも不満につながります。スタッフは常に「転職」を意識して、他に好条件の職場がないか求人サイトをチェックしているものです。
もちろん、条件・待遇だけが転職理由とは限りませんが、明らかに他院と比べて見劣りする場合は不満の温床になりかねません。そのため、院長は常に近隣のクリニックがどういった募集条件を提示しているかチェックし、相場に見合った給与・待遇を用意すべきでしょう。
評価基準があいまい
評価基準があいまいである場合、「どういう基準で評価しているのかわからない」といったように、不満に感じられるケースが少なくありません。場合によっては、「◯◯さんよりも自分の方が仕事量が多いのに評価が低いのは納得できない」といったように、余計な詮索が行われたり、勝手な憶測で信頼関係がこじれたりする場合もあります。
スタッフに対して評価基準をオープンにすることで、クリニックとしてスタッフに何を求めているかが明確になります。評価基準が伝われば、スタッフは自分が足りていないことや課題が把握できるため、それを補うために一層業務に取り組んでくれるでしょう。
就業ルールが厳しい
就業ルールが厳しすぎてゆとりがないことも、スタッフは不満を感じやすくなります。特に近年は厳しく押さえつけるようなマネジメントは通用しません。個人の主体性を伸ばしたり、日々の成長を承認していくことが本人のモチベーションにつながります。
就業ルールに関しても過去の慣習でやっているものであれば、いっそのこと廃止し、時代に合わせて作り変えるべきでしょう。新しいルールを策定する場合も、院長が独断で決めるのではなく、スタッフを交えてミーティングをする中で、全員が納得する形にすることが望ましいと考えます。クリニックのスタッフが抱える不満とは?よくある不満や解消法を紹介
まとめ
今回は、クリニックのスタッフが抱えやすい不満について解説しました。何に不満を感じるかは人によって異なるものですし、スタッフ全員の不満をゼロにすることは難しいかもしれません。
しかし、それでも不満の声を放ったらかしにするのではなく、どんなことに不満を抱えているか理解に徹することが大切です。スタッフによっては、話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなることもあるでしょう。
クリニックにとってスタッフの存在は欠かせないものです。だからこそ、一人ひとりのスタッフを信頼し、不満も含めて気持ちに寄り添うことがスタッフの定着にもつながります。