こんにちは。おおるり眼科 事務長の鈴木恵子です。
「その広告、本当に今の時代に届いていますか?」
私たちは、10年以上掲載している、島田駅構内の広告看板をやめる決断をしました。
これだけ聞くと、
「経費削減?」「経営がまずいの?」と思われるかもしれませんが。。。
実はこれ、今後のクリニックの広告戦略の大きなヒントがある出来事でした。
駅広告をやめる理由:現場で調査
15年前、うちのクリニックが所在する島田駅は木造の古い駅舎から一変、エレベーターやエスカレーターが設置され、コンコースにはベンチや売店もある近代的な駅に生まれ変わりました。しかも、旧駅舎の改札口は北口しかない不便なものでしたが、現在では南北に改札口ができました。島田駅は静岡県の中部で1日約9,000人が利用します。この駅は、地域に寄り添う大切な交通の拠点として親しまれています。
15年前、地域のハブとなっていたこの駅に広告を掲載することは、クリニックのブランディングと周知のために大きな意味がありました。そんな島田駅が新しくなった頃から、当院は駅構内に看板を出しています。上記画像の通り、一番目立つ場所で当院にとっては掲載料も高額です。
ある時、院内ミーティングでクリニックの広報について話題になりました。ある若いスタッフがふと思いついたように発言しました。土曜日の診療後の月例ミーティングで、業務の振り返りや情報共有について話し合っていた時のことです。
「駅の広告って、正直あまり見ないですよね…」彼女は少し躊躇いながらも「効果あるんでしょうか?」と話しました。
その素直な一言が、結構なショックで「確かに」と頷いてしまいました。自分自身の行動を思い返す中で、私自身が駅を利用する時、看板をほとんど見ていないことに気づきました。
そこで、実態を確かめるために現場へ直行です。朝の通勤ラッシュ時や休日の昼など、時間帯を変え、私は実際に駅に足を運ぶことにしたのです。例えば、週末の午前11時から11時40分までの40分間、約100名の駅利用者を観察したところ、その中で当院の広告に目を向けた人はわずか3名しかいませんでした。これは、私の予想をはるかに下回る数字でした。
さらに、次の事実が判明しました。
- 看板がある階段側には始発列車が少なく、半分以上の人が反対のホームに行っている
- キャリーバッグを持つ人はエレベーターを使うため、看板前を通らない
- スマホを見ている人や会話をしている人が多く、そもそも看板に目を向けていない
広告費の見直しと新しい活用法
こうした状況を見て、「これでは看板の意味がない」と正直、驚き、情けなくなりました。年間52万円、一番目立つ場所に設置されているにもかかわらず、効果が見込めていないかもしれない。この広告の掲載は今年の8月迄ですが、更新に価値を感じなくなりました。この広告費があれば次の様な施策をすることもできます。
- クリニック広報のオンライン対策を強化
- 診療圏内外からの患者増加が期待できる
- スマートフォンでの検索にも対応
- 費用対効果を随時測定
- 設備投資で患者満足度を上げる
- 待合室の快適性向上
- 最新の医療機器導入
- 口コミ評価の向上につながる
- 働く人にやさしい職場づくり
- 接遇研修などの人材育成
- 働きやすい環境づくり
- 長期的な人材確保
これら3の施策は新規患者の獲得と質の高い医療サービスの提供がつながります。例えば、Googleマップの検索上位表示になれば、「近くの眼科」と検索する方からの予約が月平均15件程度、増加するかもしれません。
また、医療機器の更新では最新の眼底カメラを導入予定で、より精密な検査が可能になることで、患者さんからの信頼の向上が期待できます。
さらに、接遇研修やスタッフ教育を定期的に実施することで、「スタッフに親しみがある」「スタッフの質が高い」という口コミも増えていくはずです。
加えて、待合室の環境改善により、特に高齢の患者様やお子様連れの方々により快適に過ごしていただけるようになると考えられます。このように、投資の方向性を変えることで、より実践的で測定可能な成果を得られると考えます。
駅看板のような”目に見える広告”から、“広告として見えなくても価値あるもの”へ経費を使った方が賢明ではないでしょうか。
広告のあり方が変わった
最後に、私が最もお伝えしたいことがあります。それは、「広告のあり方自体が大きく変化している」ということです。
【以前】以下の様な広告手法が主流
・駅の構内での看板広告
・新聞やチラシでの宣伝
・地域情報誌への掲載(タウンページやイエローページを含む)
・電柱広告
・バス停での広告
【いま】広告を取り巻く環境が大きく変化
- 生活様式の変化
- 通勤・通学中の視線は本からスマホ
- 移動中は音楽や動画を楽しむ
- 周りにある広告を見る機会は激減
- 手元のスマホでサクッと検索
- SNSで医療機関の雰囲気をチェック
- Googleマップで実際の写真を確認
- ネットの口コミ評価で判断
- 予約の仕方のデジタル化
- ネット予約が一般的
- 複雑なネット予約は敬遠される
- 問い合わせはWebが主流
2025年5月時点での効果的な広告は”駅の壁”ではなく“スマホの画面”の中へ移っているかもしれません。実際、この流れはずっと前から始まっています。
この変化への気づきと適切な対応が、今後のクリニック経営の集患対策には不可欠だと私自身痛感しています。
ただし、地域性や患者層によっては、従来型の広告手法が依然として有効なケースもあるため、各クリニックの状況に応じた最適な手法を選択することも重要です。
まとめ
本記事では、クリニックの広告戦略について重要な変化とポイントを見てきました。広告環境は大きく変化していて、従来の駅広告や紙媒体からデジタル媒体へとシフトが進んでいます。これは現代人の生活の様式の変化に伴う、求められる広告のあり方に変化が現れているのではないでしょうか。
それは患者さんの行動にも変化が見られます。情報収集の中心がスマートフォンとなり、オンライン予約やWeb問い合わせが標準的になってきました。特にGoogle検索での表示順位や口コミサイトでの評価が、医療機関選択の重要な判断材料となっています。
広告費の活用方法においても、新たな視点が必要です。デジタルマーケティングへの適切な投資、医療サービスの質を支えるスタッフ教育や環境整備、そして長期的な視野での人材確保など、総合的なアプローチが求められています。
駅広告に限らず「なんとなく続けている広告」があるクリニック経営者の方、ぜひ一度、見直しをされるとクリニック経営の流れが変わるかもしれません。
これらの変化を踏まえ、それぞれの状況に応じた最適な広告戦略の見直しが、これからのクリニック経営の成功につながるものと考えています。