- 医院、クリニックを開業したけれど、お客様がなかなか増えない・・・
- 開業コンサルタントの言うとおりにやっているけど結果が出ない・・・
- 院長は忙しいから院長夫人の自分がなんとかしないと・・・
開業医の院長や事務長、院長夫人はこのような悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
医院・クリニックの経営において最も大切なのが、お客様となる患者さんの増やすこと、すなわち集患・増患です。
コンサルタントなどに全てお任せして、良い結果が出ない医院が多いと聞きます。
そこで本記事では、院長夫人が主導するクリニックの集患方法をまとめてご紹介します。
作者プロフィール:鈴木恵子
夫のクリニック開業を機に、知識ゼロのまま事務長に就任。以来、17年間クリニック経営を第一線で担っています。
一般経営学をオンラインスクールで学びながら、医療業界に合わせた独自の経営手法を確立し、年間2万3千人以上の患者さんを受け入れる人気クリニックに成長させました。
また、新卒社員の離職率は過去3年ゼロ、育児休暇後の復帰率も100%であり、患者さんにもスタッフにも愛されるクリニック経営を実践しています。
はじめに:医療機関の3割が赤字経営の現状
まずはじめに認識していただきたいのは、日本の医療施設の3割が経営難に陥っていることです。
「東京商工リサーチ」によれば、2015年に調査した日本の2万5179社の病院・診療所のうち、32.3%が赤字経営だったとのことです。
画像引用:東京商工リサーチ
もちろんこの中には経営状況に危機感を覚え、経営コンサルタントなどを雇ってテコ入れをしている医院もあります。
それにもかかわらず、3割もの施設が赤字経営なのです。
今までの医療業界の常識であった「経営は専門家に丸投げ」では、もはや生き残れない時代です。
院長や事務長は「経営者」として、生き残りのために本気で経営を考えていかなければならないことを肝に銘じてください。
集患・増患戦略の全体像
それでは本題の集患戦略についてご説明します。 下の画像に集患・増患戦略の全体像を図にしました。
集患のポイントはシンプルで、新規もリピーターも獲得するのには、クリニックの『口コミ』や『評判』が最重要ということです。
集患・増患にはネットの口コミが最重要
現代において、人々がサービスを探す場合にはインターネット検索が最も一般的であり、またそのサービスを利用するかどうかの判断基準が、ネットに公開されているいわゆる「クチコミ」です。
例えば、皆さんがお食事のお店を決める際のことを想像してください。
新宿駅近くでイタリアンのお店を探す場合、 「新宿駅 イタリアン」と検索し、候補に出てきたお店のクチコミをチェックするはずです。
もちろん、料理の内容や料金などもチェックするでしょうが、もしクチコミが星1つなどと極端に低ければ行くのを躊躇するでしょう。
逆に星5つ満点であれば多少高くても「行ってみたい」と言う気持ちが芽生えるはずです。
このように、クチコミの評価はお客さんにとって重要なファクターなのです。
そしてこのクチコミは、食事のお店に限らず、医療業界にも反映されています。
試しにインターネットで「あなたの地域+病院」と検索してみてください。
下の図のように、地域にある病院とともにその評判が表示されるはずです。
インターネットの登場により、お店の評判や口コミは全てネット上にさらけ出されることになりました。
過去に訪れた患者さん達のクチコミにより、質の低い医療を提供する医院は淘汰されていくのです。
もしあなたの医院のクチコミが近隣の医院に比べて悪い評価であれば、医療サービスの品質面を根本から変えていかなければなりません。
良質なサービスの提供による好循環で増患を実現
口コミや評判を上げるには、良質なサービスを提供することが大切です。
①良質なサービスを提供
↓
②口コミ・評判UP 、リピーターの獲得
↓
③新規患者獲得
↓
①へ戻る
上記のようにサービスの質が上がればリピーターが増え、口コミにより新規の患者さんも増えるという好循環を起こせます。
オンライン集患3選
それでは本題の集患方法についてご説明いたします。
まずは現代のマーケティングにおいて最も効果的である、オンライン(インターネット)によるマーケティングです。
医療施設の検索方法として、圧倒的多数の人々がインターネットを利用しているからです。
インターネットは若年層のみならず、ご高齢の方々にも広く浸透しています。
2019年の総務省のデータによれば、60代で90%、70代で74%、80代でも57%の方がインターネットを利用して検索を行なっているのです。
画像引用:総務省
もはやインターネットを活用したマーケティングを行わない施設は生き残っていくのは大変厳しい情勢なのです。
オンラインマーケティングの主な施作は、以下の3つです。
- SEO対策
- MEO対策
- SNS活用
SEO対策
SEO対策とは、グーグルやヤフーなどの検索エンジンに対して、自院のホームページを検索結果の上位に表示させるための対策です。
治療を求めている患者さんが「〇〇市 眼科」「〇〇駅 歯科」などで調べた場合、自院のページを上位に表示させ、見つけてもらいやすくします。
検索結果の順位はとても重要で、検索順位によってクリックしてもらえる確率が激変します。
下の画像は検索順位別のクリック率をまとめたものです。
上記画像のデータから、検索結果1位はクリック率28.5%ですが、検索順位が下がるにつれてクリック率が低下していきます。
検索順位が10位の場合、クリック率は2.5%しかありません。
つまり「〇〇市 眼科」と調べた人が100人いたとしても、検索順位が10位の場合は2.5人しかあなたのホームページをクリックしてくれないということです。
ちなみに検索結果11位以下となると、検索結果の2ページ目以降の表示となるため、クリック率はさらにガクンと下がります。
「あなたの地域 〇〇科」で調べてみて、上位に検索されない場合はSEO対策が急務となります。
MEO対策
MEO対策とは簡単にいえばSEO対策の地図版です。
特定の地域の施設を調べたいとき、グーグルマップなどの地図機能を使って調べることがあるでしょう。
その地図機能に自院を表示させるための対策です。
表示された施設は名称や電話番号、診療時間案内、ホームページ、写真など様々な情報が掲載されていますし、スマートフォンからの検索なら予約の電話をワンタッチでかけることも可能であり、大きな集患の入り口となります。
詳細情報はグーグルマイビジネスを活用
Google マップ上で表示される施設の情報は、「グーグルマイビジネス」というサービスを利用して施設の事業主がそれぞれ自分で設定したものです。
あなたが自身で設定をされていないようでしたら、あなたの医院の表示内容はとても寂しいものになっているはずです。
診療時間や外観・内装と言った写真が何もないクリニック。あなたが患者さんだったらそんなクリニックに行きたいと思うでしょうか。
もしグーグルマイビジネスの設定をしていなければ、早急に設定を行ってください。 グーグルマイビジネスの設定方法
SNS活用
医療施設の情報を発信するのに重要なポイントとして、SNSの活用というのも1つ重要な点になります。
SNSはホームページに比べて「更新が容易」であることから、最新の情報を患者さんに届けることができます。
例えば院長の体調不良などにより急遽、休診日以外に休診する場合、その情報を患者さんに事前に届けられなければ、不快な思いをさせてしまうことになります。
そしてそれは悪い口コミとしてインターネットに公開され、他の潜在患者さんにも避けられるようになってしまうかもしれません。
これを解消するのがSNSによる迅速な情報展開です。
ツイートはホームページに埋め込こんで、自動的に最新のツイートを表示することも可能ですので、患者さんにも効果的に情報を伝達することが可能です。
オフライン集患方法2選
続いてはインターネット以外(オフライン)の集患方法を2つご紹介します。
看板設置
看板の設置は開業前や開業直後に効果的です。
先にご紹介したインターネットマーケティングは、潜在患者さんが「意図的」に病院や医院を調べなければ見つけてもらえません。
しかし看板の場合は、その場所を通ると自然に目に入ってくるものなので、近隣住民に広く認知してもらいたい場合に効果的です。
もちろん看板を見てくれた人全員が治療を必要としている人ではないので、即効性のある対策ではありません。
しかし、住民の頭のすみに自院を留めておいてもらえれば、いざ医療サービスが必要になった場合に思い出していただける可能性が高いです。
もしまだ近隣住民に自院の認知度が足りていないと感じる場合には看板の設置も検討してみると良いでしょう。
オリジナルパンフレットの作成
オリジナルパンフレットの作成も効果的オフラインマーケティングです。
パンフレットには主に以下のメリットがあります。
- 患者さんからの信頼度が上がり、リピーター増に繋がる
- 対面での自院の紹介に効果的
患者さんからの信頼度が上がり、リピーター増に繋がる
パンフレットには、自院の理念や診療スタイルなどを記載することになります。
院長や事務長の医院としての想いを患者さんに読んていただきましょう。
私たちの熱意が患者さんに伝われば、きっと「またここで治療を受けよう」とリピーターになってくれる事でしょう。
対面での自院の紹介に効果的
パンフレットは対面で自院を紹介するのにも有効です。
新しい地域に医院やクリニックを開業する場合、近隣住民の方々とは住民としてのお付き合いもあるでしょう。
その際、自身の医院の紹介としてパンフレットを活用するのです。
地域住民の情報ネットワークというのは大変重要であり、井戸端会議などから一気に医院の存在が広まる可能性も高いです。
その時に、口頭でのざっくりとした説明ではなく、詳細な情報をのせたパンフレットがあると、正確な情報を多数の人に広げることができます。
リピーター増戦略
リピーターの存在はクリニックの経営を安定させる上で非常に大切です。 医療業界に限らず、リピーターの創出が経営にとって重要な理由は、集患コストが新規に比べてかなり安くなるからです。
一般的にはリピーター顧客の集患コストは新規患者の5分の1と言われています。
逆に言えば、1人のリピーター患者さんを獲得するために5倍のコストを使っても、経営上問題ないということです。
リピーターが増えるて良いことは集患コストが下がるだけではありません。
リピーターの患者さんは、まわりの人に自院を紹介してくれることが期待できます。
人は、1度しか行ったことのないお店やサービスをまわりの人に紹介することは滅多にありませんが、何回も通っている場所を紹介することは多くあります。
紹介された人もリアルな口コミは非常に信憑性があるので安心してお越しいただける可能性が高いです。
良質なサービス提供は人材育成がカギ
リピーターの増加に必要なのは、この記事のはじめにもご説明したとおり、「良質なサービスの提供」です。
医療、治療に関するサービスが高品質なのは当然のこととして、それ以外にも
- 好意的な接遇
- 待ち時間の少なさ
- 清潔な院内
などなど、良質なサービスには様々な要因があるでしょう。
では一体そんな良質なサービスはどうしたら実現できるのでしょうか??
その答えは私は「人材」にあると考えています。
医院で働くスタッフ全員が
「この医院をもっと良くしたい」
「患者さんに満足して帰っていただきたい」
という想いで働いている職場こそ、良質なサービスを提供できる組織と私は考えています。
良い人材が揃うクリニックの3要素
良い人材が揃うクリニックには、以下の3つのしくみがしっかり整っています。
- 採用のしくみ
→採用の時点で医院と人材のミスマッチを防ぐ
>>参考:クリニックスタッフ採用のポイント3選【辞めない人材と出会う】
- 育成のしくみ
→育成によりスタッフの能力を最大限に引き上げる
参考:クリニックのスタッフが極めるべき7つのこと
- 定着のしくみ
→長く働いてもらえる環境を作り、人材の流出を防ぐ
私の医院「おおるり眼科」においてはスタッフ自身が私たちのクリニックのファンになってもらえるよう考えています。
クリニックを大切に思い、そこで働くことに誇りを感じ、楽しんでいれば業務の質が自然に高まっていくのです。
それが新卒社員の離職率ゼロ、産休育休取得者の復帰率100%という結果にも現れています。
まとめ
本記事では集患・増患のための方法についてまとめてご説明しました。
マーケティングの方法は数あれども良質なサービスを提供し、口コミによる自院の信用を上げていくことがもっとも大切であり、それを支えるのが人材育成です。
多くの経営者は華やかで即効性のある大々的なプロモーションにより集患をしようと試みますが、それでは一時的に増患できても将来にわたって安定的に経営をすることはできません。
クリニックの経営者である院長や事務長が、確固たる理念を持って人材を育成し、自院の信用度を上げていく。
安定経営の実現には、地味ですがこれしか方法はありません。
自分達の理念が人々に共感されるものであり、実現にむけて協力したいとスタッフが思ってくれるものであるかどうか、一度改めて振り返ってみるのも重要なことかもしれないですね。