勤務医から独立して、自分の医院・クリニックを持つ。医師であれば誰もが抱く夢ではないでしょうか。
しかし実際に開業に至るまでには、綿密かつ膨大な準備が必要であり、何から手をつけて良いのかわからないかたも多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、独立を目指す医師のかたにむけて、独立開業までのロードマップを私の経験とともにご紹介します。
【はじめに】クリニック開業に必要なこと
クリニック開業に必要な準備は大きく分けて下記の8点です。概ね1年〜1年半をかけて、開業を目指します。
フローチャートにすると、以下のようになります。
ではそれぞれ詳しく説明していきます。
医院・クリニック開業のロードマップ
①事業計画の策定
開業への第一歩にして、最も重要な部分になります。
まずは開業の「本当の目的」=「理念」心の中から探り出すことから始めましょう。
この理念が、診療スタイルの決定や建築設計、内外装デザイン、導入する設備計画、人材採用計画にも役立ち、それらを成功させる助けとなります。
逆に言えば、「理念」のないクリニックは医療業界の3割が赤字と言われるこれからの時代を生き抜いていくのは非常に厳しいと言えます。
>>医院・クリニック開業のステップ①-1「経営理念」の策定方法
また、このタイミングで税理士や経営コンサルタントなど、最強の態勢を整えた「開業チーム」を結成しておくことがスムースな開業、そして開業後の安定経営に重要な要素となります。
>>医院・クリニック開業のステップ①−2必要な外部専門家と選び方
②開業地の選定
医院・クリニック経営で失敗しないために重要なポイントのひとつが立地の選定です。
その土地の人口は集患にダイレクトに影響します。そもそも患者さんとなる住民が少ない、あるいは減っているエリアでどんなに宣伝をしても患者さんは増えません。
また多くの住民が公共交通機関で移動するエリアなのに最寄り駅からの距離が遠い場所で開業しても、「通いづらい」と 患者さんの足は遠のいていきます。
後からその土地の実態を知ってもクリニックを違う場所に移動することはできません。
開業前の徹底的なリサーチで最適な立地を決めることがクリニック経営には必須です。
>>医院・クリニック開業のステップ②開業地選定の方法と重要なポイント
③資金調達
クリニック開業には初期投資として莫大な資金が必要で多くの場合は自己資金だけでは足りず借入資金でまかなうことになるでしょう。
しかし、貸し出す側は投資として、見込みのある事業に、回収できる資金額しか貸し出してくれません。借入で資金を作るのも相当なハードルがあるのです、
必要な資金を調達するには、貸し出し側を納得させるだけの事業計画と開業チームの熱意が必要です。
>>医院・クリニック開業に必要な資金の調達のために必要なこと
また、借入には当然利息がついてきます。医院開業の場合、借入金が億単位になることもあり、利息だけでも負担は大きいため、いかに良い条件で借入ができるか、ということも非常に重要になってきます。
>>医院・クリニック開業の借入資金の利率を下げるためにやるべきこと
④建築・デザイン選定
次はクリニックの建物のデザインや内装、レイアウトなどの検討に入ります。
人の第一印象の9割は「見た目」で決まると言われますが医院・クリニックも同様です。建物の外観を中心として、内外装のデザインはクリニックの印象の9割を決めることになります。
>>人気クリニックは建物に理念が宿る。建築デザインの考えかた
また、デザインを考える上で注意をするのが動線です。ここをしっかり考えない設計では、スタッフの作業効率が著しく低下します。働きにくい職場は、スタッフにも敬遠され人材も集まらず、悪循環になりかねません。
この動線については、一般の設計士では難しいかもしれません。クリニック設計を熟知した設計士を見つけなければ、開業後に後悔するかもしれませんので注意してください。
>>医院・クリニックの設計士選定のポイント
⑤医療機器の導入
開業医にとって、医療機器の選択は大きな悩みどころとなります。
最新の機器を揃えれば、質の高い医療の提供が可能になりますが、当然費用は膨らみます。
一方で、費用を極端に下げた医療機器では、提供できる医療の幅・質が限定され、患者さんに満足してもらえるサービスを提供できない可能性があります。
>>医院・クリニック開業時の機器導入手順を徹底解説!貴院にあった最善の医療機器が分かります。
また医療機器だけでなく、医療システムの導入も忘れてはいけません。システムは高額なものもありますが業務の効率化によるコストダウンが見込めます。システム導入の際は費用対効果を十分に検証した上で、積極的な活用をおすすめします。
>>強いクリニックはITに強い!導入すべきシステムと導入計画の考え方
⑥人材確保
土地や建物のハード面が決まったら、労務や採用のソフト面に取り掛かります。
人材はどの業種にとっても、会社の最も重要な経営資源です。特にクリニック経営はサービス業的な側面も大きいため、良い人材を確保することが経営に直結する要素となります。
良い人材を採用・育成して長くその力を発揮してもらうためには、経営側の努力が必要です。人材育成・スタッフマネジメントは特に重要なポイントになりますので、このサイトでも大きく取り上げています。
>>新卒3年間の離職率0%、育児休暇後の復帰率100%のスタッフマネジメント方法
⑦広報・プロモーション
広報・プロモーションは開業前から行うことが重要です。
地域には既存の競合医院やクリニックがあり、住民の方々にはずっとそこに通ってきた習慣性があります。このような患者さんが、これまでお世話になったクリニックを変えるには、かなり強い動機が必要なのです。
しかし開業後にかかるお金は待ってはくれません。患者さんが見えなくても、融資の返済、スタッフの給料、土地代光熱費など、たくさんのお金が月々掛かります。
そのため、開業前からプロモーションに力を入れ1日でも早く損益分岐点を超えるようにしたいものです。
また、開業直後のスタートダッシュに成功しても、長期的に安定した経営を続けるには戦略的なプロモーション、広報活動が不可欠です。
>>17年で患者さんが800%増。おおるり眼科クリニックのプロモーション戦略
⑧開業手続き
最後に開業手続きです。ここまでくればもう開業は目前ですが、油断してはいけません。手続きの書類が一つでも不足すると開業はできません。
開業が遅れればその間の収入はゼロです。しかし支出は待ってくれません。この開業初期の損益が最後まで後を引き、廃業せざるを得なくなってしまったケースも聞かれます。
開業手続きの失敗は、後の経営に大きな影響を及ぼすことを忘れてはいけません。
開業コンサルタントに全てを依頼していたとしても、必ず日程や保証人の有無などを確認することが大切です。
>>開業直前の医師必見!開業手続きの抜け漏れを防ぐ確認項目
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ここまで、開業までのロードマップをざっくりとお伝えいたしました。
しかし、上記は本当にざっくりとした流れであり、実際にはさらに細かく、その時々で重大な判断を下さなければなりません。
そこで、ここまで記事を読んで頂いたあなたに特別に、私が実際に経験した開業から経営までの17年間をまとめたセミナーを無料配信いたします。
2003年、勤務医であった夫と開業を決意した時、私は3歳と6歳の子供を育てる専業主婦で、もちろん経営の知識はゼロ。それどころか、わずか2年間の社会経験をもつのみで、全く苦労を知らない能天気な人間でした。
それでも、患者さん・スタッフを幸せにできるクリニックとはどういうものか、必死に考えながら、なんとか開業まで漕ぎ着けました。
開業後も幸いにも多くの患者さん、スタッフに愛されるクリニックに成長させることができました。
この記事を読んでいただいているあなたもきっと、独立開業を視野に入れいている、医療仲間でしょう。
あなたが独立して提供したいとお考えの医療サービスの実現に、私の経験があなたの一助となれたらこれほど幸せなことはありません。