クリニックスタッフが一斉退職して悩んでいませんか?
私も16年間経営に携わっていますが、一斉退職は一度起きると経営が一気に傾くと思っています。実際に友人に相談されたこともあり、本当に深刻な状況に陥っていると感じました。
一斉退職が起きてしまった場合は、原因を明確にし、二度と起きないよう対策しましょう。
本記事では、クリニックのスタッフが一斉退職する理由や対処法を紹介します。
また、一斉退職後のクリニックの立て直し方についても解説しますので、多くのスタッフが辞めて悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
一斉退職の再発を防いで、クリニックの経営を安定させましょう。
クリニックのスタッフが一斉退職してしまう理由
クリニックのスタッフが一斉退職してしまう理由は、主に2つ考えられます。
- 経営陣への不信感
- 人間関係や働く環境
経営陣への不信感
クリニックスタッフの一斉退職の理由として「経営陣への不信感」が挙げられます。現場のことを考えない経営は、スタッフの不信感を募らせる危険があるので注意しましょう。
ここでは、参考事例を1つ紹介します。規模が大きくクリニック経営の一斉退職とは少し異なりますが、経営陣への不信感が原因で起きた一斉退職です。
東京女子医科大学の3つの付属病院では、2021年に100人を超えるスタッフが一斉退職しました。この事例では、以下の経営陣の一方的な方針転換による収入の減少が退職の理由になりました。
- 「研究日」に医師の「外勤」をあてる慣例があったが、国が推進する「医師の働き方改革」に合わせて、今年3月末で廃止する
- 東京女子医大に勤務する医師は「週39時間」の労働義務を負う
- 「外勤」を継続する医師には「週32時間」勤務の選択肢を用意するが、給与は相応の水準とする
引用:東洋経済ONLINEより
人間関係や働く環境
人間関係や働く環境も一斉退職の原因になります。看護師の転職に関する調査では、転職理由の1位は経営の不信感につながる「給料が低い」でしたが、2~4位は全て働く環境に関することでした。
引用:産経新聞より
人間関係はもちろん、業務の多さや休みの取りにくさも退職理由につながることが分かります。
これまでに紹介した2つの例の様に明らかに問題がある場合ではなくても、閉鎖的なクリニックでは些細なことが火種になりかねません。
これから紹介する一斉退職の対策を実施して、万全の体制を整えてください。
クリニックのスタッフの一斉退職を防ぐ3つの対策
次に、クリニックスタッフの一斉退職を防ぐ方法を紹介します。これらの対策を行うためにやるべきことも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- スタッフへの指導方法の工夫
- 労働環境の整備
- スタッフ採用の工夫
スタッフへの指導方法を工夫する
スタッフの一斉退職を防ぐためには、「指導方法の工夫」が大切です。厳しすぎる指導は、パワハラなどにつながりスタッフの不満が募りやすくなります。しかし、間違っていることははっきりと注意し、正しい指導を行わなければいけません。
スタッフへ指導するときは、間違っている理由や正しいやり方を行う目的などを丁寧に説明しましょう。スタッフが納得のいく注意であれば一斉退職を招くほどの不快感は感じません。
また、業務の効率を上げる方法など気軽な提案は、相手の意見を尊重しながらやわらかい言い方にするとスムーズに指導ができるでしょう。
労働環境を整える
労働環境を整えることはスタッフの定着に欠かせません。労働環境については、以下の4つを整えましょう。
- 社会保険
- 退職金制度
- 福利厚生
- 教育制度
社会保険を完備すると、常勤スタッフが働きやすくなるためスタッフの定着率が上がります。ただし、人件費が増加するため慎重に検討するようにしましょう。
また、退職金制度や福利厚生、教育制度などが充実しているクリニックは少ないので、他のクリニックとの差をつけるためにも力を入れることをおすすめします。
定期的な研修や学会の参加を促してスタッフの意欲を高め、旅行やレジャーなどリフレッシュする機会を与えることで、働きやすい環境を作ることができるでしょう。
最初から良いスタッフを採用する
最初から良いスタッフを採用することも重要です。すぐに辞めてしまうスタッフは、採用の時点で見抜くことができる場合も多いです。
また、クリニック側の求人募集の書き方や採用試験の内容を工夫することで、良いスタッフを採用することができます。
以下の記事では、辞めない人材と出会うためのスタッフ採用のポイントを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
>>参考:クリニックスタッフ採用時のポイント3選【辞めない人材と出会う】
一斉退職を招くスタッフの特徴と見抜き方
一斉退職を招きやすいスタッフは、以下のような特徴があります。
- ネガティブな言動が多い
- 「こうあるべき」という思考が強い
- 感情で物事を判断する
このような特徴があるスタッフはまず採用しないこと、また採用してしまった場合は対応を工夫してトラブルを未然に防ぎましょう。
ネガティブな言動が多い
ネガティブな言動が多いスタッフには気を付けましょう。問題が起きた場合に何でも否定したり不満と捉えたりするスタッフは、トラブルを起こしやすいので要注意です。
さらに、ただネガティブなだけでなく自分本位だと、他人にも迷惑をかけて一斉退職を招いてしまいやすいでしょう。
また、ネガティブな言動が多いスタッフがいると、現場全体の雰囲気が悪くなりスタッフ全体の働く環境の悪化につながってしまいます。
このようなスタッフを見抜くためには、採用段階で「問題が起きたときの対処法」を聞くのがおすすめです。前向きではないものやその場しのぎの回答をする場合は、ネガティブな言動が多い可能性があるので注意しましょう。
「こうあるべき」という思考が強い
「こうあるべき」という思考が強いスタッフにも注意が必要です。自分の考えを曲げずに他人に押し付けるようなスタッフがいると、事実ではない噂が流れたり反発的な行動が起きたりしやすくなります。
このようなスタッフを雇わないためには、採用時に前の職場の退職理由を聞いておくことが大切です。このときに「自分のやり方を受け入れてくれなかった」「上のやり方が良くなかった」など主観的な考えを理由に挙げる場合は気を付けましょう。
感情で物事を判断する
一斉退職を招きやすいスタッフは、「感情で物事を判断する」という特徴を持っていることが多いです。自分のマイナスな気持ちだけで動くスタッフは、冷静な判断をせずに感情だけで周りに話してしまいます。
一時的な感情であっても、周りのスタッフは事実だと勘違いして一斉退職を招いてしまう可能性があります。日頃のスタッフへの接し方から感情的な側面がないか見ておくことで、このようなスタッフを見抜くことができます。
もしこのようなスタッフがいる場合は、相手を刺激しないようにしながら経営方針を伝え続けるとよいでしょう。クリニックのやり方とは違うということを伝えることで、自分の問題点に気が付く可能性があります。
一斉退職後のクリニックの立て直し方
一斉退職後のクリニックを立て直すときは、以下の方法がおすすめです。
- 社労士やコンサルタントを介入し退職スタッフとの面談を行う
- 人事採用や職場づくりの見直し
- 経営について学び直す
まずは、社労士やコンサルタントなど第三者を介入し、退職理由を聞き出します。そこから問題の原因を突き止め、それぞれに合った対策を行いましょう。
同時に、人事採用のやり方や職場づくりの見直しを行うことが重要です。職場づくりでは、社会保障や福利厚生の充実のほか、就業規則などをしっかり定めておくことで落ち着いた労働環境を作ることができます。
また、経営者は経営について学び直しをして、よりよいクリニック作りを行いましょう。経営では、お金だけでなく人を雇うことの責任や対応の仕方を学び、真摯に経営と向き合うことで、一斉退職が起きないクリニックを作ることができます。
私は強いクリニックを作るためのオンラインセミナーも行っています。経営を学びたいと考えている方はぜひ活用してください。
>>参考:事務長鈴木による無料のクリニックオンラインセミナー
【おわりに】円満退社ができなければよいクリニックとはいえない
ここまでスタッフの一斉退職の原因と対策についてご紹介しました。
しかし一斉退職ではなくとも、スタッフが円満に退社できないクリニックはよいクリニックとはいえないと私は考えています。
円満退社ができないと、スタッフ本人にネガティブな感情が残り、クリニックの悪い評判につながるため、その後の人材確保にも影響が出てしまいます。
こうなると、人手不足でさらに円満退社が難しくなるという悪循環に陥ってしまい、クリニック経営が上手くいきません。
安定したクリニック経営を実現させるなら、一斉退職の理由や対処法を知ってスタッフが円満退社できる環境を目指しましょう。
まとめ
今回は、クリニックスタッフが一斉退職する理由やその対処法を紹介しました。一斉退職は頻度は多くないものの、起きると悲惨な状態に陥ってしまいます。
一斉退職が起きてしまった場合は採用の仕方や労働環境を見直し、スタッフのことを考えた経営を行いながら立て直すようにしましょう。