スタッフを大事にしているはずなのに、定着率が一向によくならない・・・こんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
スタッフを大切にすることは、長く働いてもらうために非常に大切なことです。
しかし、経営者が良かれと思ってやっていることが、スタッフにとっては「大事にされていない」と不満に感じるケースが少なくありません。
そこで本記事では、私が陥った「スタッフを大事にする」ことへの5つ勘違いと、その改善方法をご紹介します。
私は本記事で紹介する失敗例を改善したことで、今では新入スタッフの3年以内の離職率ゼロ、産休・育休スタッフの復帰率100%のクリニックを作ることができました。
私の経験が、あなたのクリニック経営に少しでもお役に立てれば幸いです。
「スタッフを大事にする」の5つの勘違いとは?
私が16年間のクリニック経営の中で陥った勘違いは以下の5つです。
- 事細かに指示を出す
- 福利厚生が充実しすぎている
- コミュニケーションのバランスが悪い
- 教育を重視しすぎる
- 定期的な面談で不満を吸い上げられると思い込む
事細かに指示を出している
1つ目に、事細かに指示を出しているケースです。
過去の私は、
とできるだけ細かく指示を出していました。
しかし、スタッフにとってその細かすぎる指示は
という不満を抱かせていたようです。
【解決策】スタッフを信頼して任せ、必要な時に相談してもらう
そこで私はスタッフを信頼して任せ、スタッフ自身で解決できない時に頼ってもらう方針に変更しました。
基本、現場で起こるすべてのことはスタッフに任せます。
スタッフではどうしても解決できないこと、例えば、すごく理不尽なクレームを言う患者さんの対応などは相談に乗って解決策を示したり、私が対応しています。
またすべての業務に管理者を設けることで、新人スタッフの小さなトラブルなどは、管理者がフォローする体制を整えています。
これにより、日常業務で起こるトラブルなどは基本的にスタッフが自ら解決できるようになっています。
ただ、これは全てをスタッフに丸投げという意味ではありません。
スタッフで判断に迷う場合や、困った場合は、躊躇せず私に連絡することをスタッフと約束しています。
また、スタッフが判断を誤った場合も責任を追求せず、次に活かす勉強の機会として前向きに受け止めています。
このような方針に転換した結果、スタッフが活き活きと自発的に働いてくれるようになったと実感しています。
福利厚生が充実しすぎている
2つ目に、福利厚生が充実し過ぎているケースです。
以前の私は
と考え、過剰なまでに充実した福利厚生を準備しました。
しかしその中にはスタッフが誰も使わないものが含まれており、
という不満の声が聞こえてきました。
【解決策】スタッフの利用状況に応じて定期的に見直しを行う
そこで私は、それぞれの福利厚生の利用状況をみて、あまりにも利用されていないものについては内容を見直すようにしました。
例えば、習い事の補助の見直しです。この制度は時間が豊富にある独身層しか実質的に利用できずに不公平感が生まれていたため、撤廃しました。
その分、一律に昇給金額を増やすことで、全員が納得した制度となりました。
コミュニケーションの取り方のバランスが悪い
3つ目に、スタッフ間のコミュニケーションの取り方のバランスが悪かったことです。
私はコミュニケーションの向上のために定期的なお食事会やレクレーションを設けています。
しかし、勤務時間外での飲み会やイベントごとは、お子さんや介護が必要なスタッフは参加したくても時間的な制約から参加が難しいです。
【解決策】職場でのコミュニケーションの機会を増やす
そこで私は、職場内・勤務時間内でコミュニケーションを向上させることに意識を向けました。
例えば、月1の院長ミーティングを全員でランチを取りながら行うようにし、ランチの費用はクリニックで持つようにしています。
また、患者さんからお野菜や果物などをいただいた際に、私が調理して昼食時にスタッフに差し入れをします。
私はこれらの経験を通じて、勤務時間外に時間を取らなくても、スタッフとの関係向上の場は日常に沢山あるのだと気づかされました。
小さなことの積み重ねが、大きな成果を産みます。
なお、定期的なお食事会やスタッフ旅行などもスタッフにとっては働くモチベーションとコミュニケーションを深める良い機会ですので継続しています!
教育を重視しすぎている
4つ目に、教育を重視し過ぎるあまり、強制感を持たせてしまうケースです。
私のクリニックでは以前、ある新人スタッフが
と相談を受けたことがあります。
先輩スタッフにも話を聞いたところ、新人のスキル向上を思っての行動だったようですが、新人スタッフにとって休日の講習会参加は気が重かったようです。
休日の行動を強制することは許されません。しかしながら私は先輩スタッフの後輩への指導にまず感謝を伝え、新しい世代の考え方を共有することで円滑に解決することができました。
【解決策】育成はマインドの醸成から行う
この経験から、私はスタッフの成長には教育の場の提供だけでなく、「いかに自発的に学ぶマインドを醸成できるか」を考えて育成方針を変更しました。
新人スタッフには院長やプロ意識の高い先輩スタッフと共に業務をする機会を増やし、彼らのプロ意識を感じさせたり、患者さんからの感謝のお言葉を紹介したりするようにしました。
このような取り組みにより、新人スタッフのプロ意識が向上し、学びに対して貪欲になってきたと感じています。
定期的な面談で不満を吸い上げられる と思っている
最後に、定期的な面談を実施していることで安心してしまうケースです。
と思い込んでいました。
しかし知人のクリニックから、定期面談をしているにもかかわらず、突然不満を打ち明けられて退職されてしまった話を聞き、考えを改めました。
【解決策】普段からスタッフが声をあげやすい職場を作る
そこで私は、普段からスタッフが声をあげやすい職場環境作りを徹底しました。
特に大幅に変えたのは、ボトムアップの経営を重視したことです。
ボトムアップ型の経営により、普段の業務からスタッフが声をあげやすくなることで、経営者に対する要望や注意して欲しいことなども素直に伝えてくれるようになりました。
なお、ボトムアップの経営手法は、スタッフの現場目線のアイデアや若者ならではの発想を汲み取ることができ、現代の変化の激しい医療業界を生き残るのに非常に有効な一手であると感じています。
スタッフ満足度が高いクリニックに共通する3つの特徴とは?
ここまで、「スタッフを大事にする」ことへの勘違いとその対処法についてご紹介しました。
さらにここから、
私が16年間、数々のクリニック経営さんとお付き合いしてきた中で、スタッフ満足度が高いクリニックに共通する特徴3つをご紹介します。
- 就業規則が守られている
- 経営理念が浸透している
- スタッフが皆自分の仕事に誇りを持っている
就業規則が守られている
まず1つ目に、しっかりとした就業規則が定められ、きちんと運用されていることです。
就業規則がなかったり、あるにもかかわらず経営者が規則を逸脱して働かせている場合、スタッフは経営者に不信感を抱くようになります。
逆にしっかり就業規則が守られているクリニックではスタッフは正当な権利を主張できますので、納得感を持って働くことができます。
経営理念が浸透している
経営理念が浸透している職場では、スタッフ1人1人も自身が実現したいスタッフ像が描けています。
すると、自発的な業務改善や提案が増えるので、やらされ仕事になりません。
自分がやりたいことに邁進している心理になるので、満足度が高いのです。
スタッフが皆自分の仕事に誇りを持っている
スタッフ1人1人が自分の働く意義を理解し、自分の仕事に誇りを持っている職場は、スタッフの満足度が非常に高いです。
インナーブランディングとは自社ブランド(企業/製品/サービス)の精神や価値をスタッフに深く理解させることで、自社への愛着と誇りを育む活動です。
具体的には、
- ブランドの理念
- ブランドの生まれたストーリー
- 目指すビジョン
- 製品のコンセプト
- 製造が出来上がるまでの過程
などをスタッフに理解してもらいます。
このインナーブランディングをクリニックに応用してみたところ、スタッフが普段の仕事の意義を深く理解し、自身の仕事を誇れるようになったという声がもらえるようになりました。
今ではスタッフ全員が誇りを持って、満足度高く仕事に取り組んでいます。
まとめ
本記事では、クリニック経営において私が陥った「スタッフを大事にする」ことの5つの勘違いとその改善策についてご紹介しました。
クリニックスタッフを正しく大事にして、長期で活躍してくれる仲間を増やしていきましょう。