あなたはクリニックのスタッフがすぐに辞めてしまうことにお悩みではないでしょうか。
この記事では、私がクリニックを16年間経営してきた中で得た、スタッフマネジメントのノウハウを余すことなくお伝えします。
この記事を読むことで、
- スタッフがすぐに辞めてしまう原因TOP5
- スタッフ定着のための6つ対策
- いきなり辞めてしまうスタッフへの対策2選
がわかります。
私もクリニックを創業した当初は、スタッフの早期退職にたくさん悩まされました。
しかし、10年以上にわたり他のクリニックの院長さん・事務長仲間と意見を交わしながら改善を続けたことで、今では早期退職者ゼロ、産休・育休からの復帰率100%を実現し、優秀なスタッフが長期で活躍してくれています。
この記事を読んで、あなたも人手不足の悩みから脱出できることを願っています。信頼できるスタッフに仕事を任せ、院長は診療に専念してください。
スタッフがすぐに辞めてしまう原因TOP5
私の経験から、クリニックのスタッフがすぐに退職してしまう原因のTOP5は以下です。
- 採用時のミスマッチ
- 職場の人間関係が悪い
- やりがいがない、将来性が見えない
- 給料が低い
- 拘束時間が長い
順に詳しく見ていきましょう。
採用時のミスマッチ
スタッフが入社前に抱いていた働き方のイメージと、現実がかけ離れている場合です。
ミスマッチがあると、スタッフはクリニックを信頼しなくなりやすいです。面接等で聞いていたイメージと違うとなれば、当然ですね。
一度信頼関係が崩れると、様々なところで不満が溜まり、退職に至ってしまいます。
事実、新卒者の離職理由の7割以上が「ミスマッチ」によるものと調査づけられています。
下の画像を見てください。退職理由の上位5つは、全て採用選考でのミスマッチと言えるでしょう。
引用:『独立行政法人 労働政策研究・研修機構』資料シリーズNo.171
職場の人間関係が悪い
職場の人間関係が理由のケースです。私自身の医院や、友人の医院でも直面したことがあります。
クリニックは一般企業と違い、部署移動などがなくずっとその職場で働くことになります。
そのため、一度職場で良い人間関係が作れないと判断すると、退職を考える人が多いようです。
やりがいがない、将来性が見えない
業務を一通りこなせるようになってくると、スタッフにこんな思いが芽生え始めます。
国家資格を持たないスタッフの場合、クリニックの業務は3年もすれば何でもそつなくこなせるようになります。
その為、3年目以降はスタッフが成長を感じられなくなり、モチベーションが低下してしまう傾向にあります。
給料が低い
病院や一般企業に比べて給料が低い場合も、退職の原因の1つになります。
大きな病院や企業では、給与だけでなく福利厚生の面が充実しているため、福利厚生の面で不満を感じるケースもあるようです。
これは私の失敗談になりますが、開業して間もない時期は、スタッフのキャリアに応じた昇給や退職金の制度をしっかり作れていませんでした。
そのため、自分としては相応の報酬を提供するつもりでいたのですが、明確な規定としてスタッフに提示できていなかったために誤解を招き、スタッフからの信頼を失いそうになったこともありました。
拘束時間が長い、希望に合わない
実労働時間は8時間でも、拘束時間として多くの時間をとらせてしまっていた時、よく言われてしまった退職理由です。
最近では子育てや家事・さらにご両親の介護など、スタッフの私生活がどんどん忙しくなっており、拘束時間の長さはますます敬遠される傾向が強くなっていると実感しています。
スタッフの長期定着のための対策6選
ここからは、私が今までスタッフに長く働いていただくために行ってきた対策の中から、特に効果的だったものを6つ紹介します。
おすすめの対策は、以下の6つです。
- 選考時に厳しい現実も打ち明ける
- 集合研修を行う
- インナーブランディングを行う
- マーケティングを実施する
- 意味的報酬を提供する
- 必要なスタッフ数を見極める
選考時に厳しい現実も打ち明ける
スタッフ選考の際に、クリニックの良いところだけでなく厳しい面も正直に打ち明けるようにしたところ、ミスマッチが減りました。
私は当初、優秀な応募者を逃したくない思いからネガティブな面を隠しがちになっていました。
そのせいでスタッフの職場イメージと現実にミスマッチが生じ、スタッフに苦労をかけてしまったことがあり、大変反省したことを覚えています。
せっかく採用にこぎつけても、すぐに辞められてしまっては求人募集を出すところからやり直しです。
一部の応募者から敬遠されても、ネガティブな面を含めて納得してくれる人材を採用することが大切です。
>>参考:クリニックスタッフ採用時のポイント3選【辞めない人材と出会う】
集合研修を行う
集合研修を行うことで、スタッフ同士がコミュニケーションをとり、良好な人間関係が築けます。
研修というとスキルや能力の向上が目的のイメージが強いですが、人間関係の構築にも非常に有効です。
私のクリニックでは、10年ほど前からチーム対抗でのゲームを取り入れました。そうしたところ、一段と人間関係が円滑になったと感じています。
スタッフそれぞれの普段の業務では見えない一面が見られ、スタッフ間の理解が深まります。
教育・研修を充実させる インナーブランディングを行う
インナーブランディング研修には、スタッフのやりがいの創出効果があると聞いて始めたところ、効果は抜群でした。
インナーブランディングとは自社ブランド(企業/製品/サービス)の精神や価値をスタッフに深く理解させることにより、自社への愛着と誇りを育む活動です。
具体的には、
- ブランドの理念
- ブランドの生まれたストーリー
- 目指すビジョン
- 製品のコンセプト
- 製造が出来上がるまでの過程
などをスタッフに理解してもらいます。
このインナーブランディングをクリニックに応用してみたところ、スタッフが普段の仕事の意義や目指すべき将来を強く自覚してくれるようになりました。
今ではスタッフ全員が「やりがい」を持ってモチベーション高く仕事に取り組んでいます。
インナーブランディングにはクリニックの「経営理念」が必須です。経営理念がまだないクリニックは、まずは経営理念を作るところから始めましょう。
マーケティングを実施する
クリニックのマーケティングに力を入れ、医院の売り上げを伸ばしスタッフの報酬に還元したところ、スタッフの就業満足度が上がりました。
マーケティングの成果が出始めてからは、「給料が少ない」を理由に退職するスタッフは激減しました。
当時は単純にスタッフの報酬を上げることはできなかったので、まずはマーケティングに注力したところ、クリニックの利益が上がりスタッフに還元することができるようになりました。
クリニックマーケティングは別記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
>>参考:医院・クリニック開業医のための集患・増患の方法まとめ
意味的報酬を提供する
『意味的報酬』とは、仕事を通じて得られる「満足感」や「幸福感」のことです。
意味的報酬の提供によりスタッフに「やりがい」を感じてもらうことができるようになったと感じています。
私たちは給料や賞与などによる「経済的報酬」を第1に労働していますが、それと同時に「意味的報酬」も無意識に強く求めているからだと思います。
特に今の若い世代は、お金を使うことへの興味が低下している傾向にあります。
ネットの発達によりあらゆるものが低価格、無料で楽しめるようになり、スマホ1つあれば1日中楽しく過ごせる時代だからです。
だからこそ、「意味的報酬」は今の時代に必要とされているのだと思います。。
有名なマズローの欲求5段階で考えれば、人々はお金という「安全欲求」を誰もが満たすようになったことで、さらに高次元の「社会的欲求」や「承認欲求」、さらには「自己実現の欲求」を求めるようになったのでしょう。
金銭的報酬=安全欲求を満たす
意味的報酬=社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求を満たす
必要なスタッフ数を見極める
必要なスタッフ数を見極めることで、拘束時間が長いことへの不満を解消できるようになりました。
この経験から、私は現状の業務量とスタッフ数が常に適切かどうかを考えて、もしスタッフが不足気味であれば、スタッフの増員や省人化のシステム等を積極的に導入しています。
クリニックに最適なスタッフ人数の考え方については、こちらの記事で詳しくご紹介しますので参考にしてください。
>>クリニックスタッフの適正人数は?人件費を抑える好事例3選も紹介します
急に辞めてしまうスタッフを防ぐ対策2選
最後に、急に辞めてしまうスタッフの発生を防ぐ方法を2つご紹介します。
私の経験上、スタッフの退職で最も困ったのがいきなり辞めてしまうパターンです。
辞めるにしても前もって伝えてくれていれば、その人の穴埋めをするスタッフを新しく雇う準備ができるからです。
雇用契約書に退職予告の規定を設ける
自己都合での退職については、退職の2,3ヶ月前には退職希望の旨を報告するよう契約書に盛り込みましょう。
採用面接時に口頭で約束してもらうだけでは不十分です。
契約書として書面で残しておくことで、初めて効果を発揮します。
※ただし、民法では労働者は2週間前の告知で退職できると定められています。退職希望者が民法を主張した際は、大きなトラブルにならないよう柔軟に対応してください。
定期的な個別面談の機会を設ける
個別面談でスタッフの不満や心配事を聞き出していくことも効果的でした。
面談によりスタッフ一人一人の考えを理解し、退職の意向やその兆候がないか気を配ります。
また、スタッフの不満な点を洗い出し、1つずつ解消していくことは、スタッフの退職を防ぐ意味でも非常に効果的です。
スタッフが退職を決意するのは、様々な不満が同時に重なった時に発生する場合が多いからです。
1つの不満だけであれば我慢できるけど、その不満が解消されずに次から次へとマイナスなことが発生すると、我慢の限界にきてしまいます。
不満の蓄積を回避するために、定期的にスタッフとの面談では不満点を汲み上げ、1つずつ解消して行くと良いです。
まとめ
本記事では、私の16年間の経営経験をもとに、クリニックのスタッフが辞めてしまう原因5つと6つの対策をご紹介しました。
対策①「採用面接時に厳しい現実も打ち明ける」は、今すぐ実行できるものです。
すぐに取り組んでいただき、長期定着してくれるスタッフを少しずつ増やしていきましょう。