クリニック運営を成功させるには、優れた医療技術の提供だけでなく、クリニックのブランド力も大きく関係しています。
そもそもブランド力とは、「商品やサービスが持つ価値」のことを指します。
クリニックのブランド力を高めるために重要なのがスタッフの育成です。スタッフ一人ひとりの個性を伸ばすことでパフォーマンスが向上するため、結果として患者さんからの満足度にもつながります。
この記事では、人材マネジメントとクリニックのブランド力の関係性から、ブランド力を向上するためのポイントを解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
人材マネジメントとクリニックのブランド力の関係性とは
人材マネジメントとは、スタッフのスキルや能力を最大限に引き出し、クリニックが掲げるビジョンや目標達成に向けて活躍してもらうための管理手法です。
適切な人材マネジメントが行なわれることで、スタッフは効率的かつ主体的に働くことができ、クリニックのサービス品質が向上します。結果として自院の評判が高まり、ブランド力の向上が期待できます。
人材マネジメントにおいて大切なのは、一つのやり方に固執したり、押し付けたりすることではなく、スタッフ一人ひとりの個性を尊重することです。
例えば、コミュニケーション能力に優れたスタッフは、人間関係構築が得意なため、患者さんの不安を取り除くことができます。また、リーダーシップがあるスタッフは、チームワークを発揮しながらクリニック運営を円滑にしてくれます。
このように、人材マネジメントの質とクリニックのブランド力は密接に関わっているのです。
スタッフの個性を見つける方法
適切な人材マネジメントを行うためには、一人ひとりのスタッフのことを深く知ることが大切です。スタッフによって長所や能力、価値観が異なるため、「まずはどういった個性を持っているのか?」を把握することから始めると良いでしょう。
ここでは、スタッフの個性を見つけるための具体的な方法を3つ紹介します。
1on1ミーティングによる対話
1on1ミーティングは、スタッフと1対1で対話し、その人の思考や価値観、能力を深く理解するための効果的な手段です。定期的に行うことで、スタッフが業務上抱えている悩みや不安、気になっていることを聴くことができるため、問題の早期発見にも役立ちます。
1on1ミーティングで大切なのは、スタッフの言葉をしっかりと傾聴することです。対話を通じてスタッフの意見や提案を聞く姿勢を持つことで、新たなアイデアや視点が得られることもあるでしょう。
逆に、過度な叱責や問題点の指摘ばかりしてしまうと、本人が萎縮してしまい本音で話してもらえなくなりますので、注意しましょう。
チームビルディングによる個性の把握
チームビルディングとは、「組織のパフォーマンス向上を図るための活動」のことで、チームパフォーマンスの向上に大きな影響を与え、スタッフ間の関係強化に役立つ施策です。具体的には、ミーティングや研修を行ったり、ゲームを実施したりします。
チームビルディングはチーム力を高めるだけではなく、各スタッフの個性を見つけるうえでも役立ちます。チームでの活動を通じて、誰がどのように問題を解決するか、他のメンバーとどのようにコミュニケーションを取るかを観察することで、それぞれの個性や強み、改善点を把握できます。
スキルや能力を可視化するアセスメントツールの活用
スキルや能力を可視化するアセスメントツールを活用することで、スタッフの個性を客観的に把握し、適切なマネジメントにつなげることができます。
例えば、各スタッフの専門スキルや経験を一覧化し、それらを分析することで、チーム内での役割分担をより最適化させることができます。
また、パーソナリティテスト(性格適性検査)などを用いることで、スタッフの思考パターンや働き方の傾向を理解し、それに基づいた育成方針を策定することも可能です。
個性を活かした人材マネジメントのポイント
スタッフの個性を活かした人材マネジメントは、クリニックのブランド力を高める重要な要素です。ここでは、個性を活かすための2つの大切なポイントについて解説します。
適材適所の役割分担
スタッフ一人ひとりが持つ個性やスキルを理解した上で、それぞれが最も活躍できる役割を与えることが大切です。これにより、スタッフは自分の能力を最大限に発揮でき、クリニック全体の生産性や効率性を向上させることができます。
もちろん、クリニックは少人数のスタッフで運営しなければならないため、全体の業務内容を理解するなど基本的なことは全員ができていなければなりません。しかし、人によって長所や短所があるため、適切に配置をすることで、全体のバランスがとれるようになります。
例えば、コミュニケーション力が高いスタッフは外部機関(学校・行政など)との交渉ごとを任せることや、パソコン操作やITに強いスタッフは予約システムの設定や医療機器の操作に関連した役割に配置することが考えられます。
さらに、積極的に権限委譲し、業務ごとにリーダーを配置することで、他のスタッフと連携を図りながら責任を持って進めてくれるようになります。
権限委譲に関して詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
参考:【やる気を醸成】クリニックのスタッフの退職を防止する権限委譲の仕方
働きやすい環境づくり
スタッフの個性を活かすためには、それぞれのスタッフが自分らしく働ける環境を整えることも重要です。一般的に働きやすい職場とは、「心身ともに健康で働ける」かつ「最大限のパフォーマンスを発揮できる」環境を指します。
具体的には、働きやすい職場には以下のような特徴があります。
- 人間関係が良好
- 残業が少なく、有給が取得しやすい
- 出産・育児への理解がある
- 社内の風通しが良い
- コンプライアンス意識が徹底されている
- 自分のペースで働ける
- スタッフ同士が尊重し合っている(愚痴・不満がない)
- 自分の能力を認めてくれる
このように、スタッフの個性や価値観を尊重する文化を築くことで、職場への帰属意識やモチベーションが向上します。
クリニックのブランド力向上につながる具体的な取り組み
クリニックのブランド力を向上させるためには、スタッフの個性や専門性を活かした取り組みが有効です。ここでは、具体的な取り組み例を3つ紹介します。
スタッフの個性や専門性を伝えるコンテンツ作成
スタッフ一人ひとりが持つ個性や専門性を活かしたコンテンツを作成し、それを広く公開することで、クリニックのブランドイメージを強化することができます。
例えば、スタッフの専門的な知識を活かした「ブログ記事」や、スタッフの日常を紹介する「院内報」などがおすすめです。クリニックの専門性や、親しみやすさをアピールすることで、他院との差別化につながります。
SNSやパンフレットでの情報発信
SNSやパンフレットを通じて積極的に情報を発信することも、クリニックのブランド力を高める有効な手段です。特にSNSは日本人の8割以上が利用しており、今や高齢の方でも使っている方は少なくありません。
もちろん紙のパンフレットもまだまだ需要はありますが、デジタルツールも積極的に活用することで、クリニックの認知度や集患力の向上が期待できます。
例えば、写真共有SNSのInstagramを使えばクリニック内の雰囲気や研修シーン、スタッフの日常などを写真で伝えることができます。また、動画配信SNSのYouTubeを通じて深い専門知識を発信することで、クリニックの信頼性と専門性を一層強化することができます。
当院でも、YouTubeでの情報発信を行っていますので、興味をお持ちいただいた方はぜひご覧になってみてください。
従業員満足度調査、患者満足度調査
クリニックのブランド力を高めるためには、「従業員満足度調査」「患者満足度調査」を通じて、内部と外部の両面から客観的評価を受けることも重要です。
例えば、従業員満足度調査を行うことで、スタッフの就業満足度や職場環境に対する不満や悩みを明確に把握できます。
また、患者さんに対して患者満足度調査を行うことで、クリニック全体のサービス品質やスタッフの対応に関する意見を直接聞くことができます。外部からどのように評価を受けているかを客観的に理解することで、改善策の策定に役立たせることが可能です。
当院の事例
当院では、過去に業務ミスが頻発し、患者さんへの影響や信用喪失が問題となったことがありました。その当時、スタッフ一同、問題解決の必要性を痛感したことを覚えています。
改善に向けてはじめに行ったのは、私自身が問題解決のコースを受講したことです。加えてスタッフ全員にセミナーを受講してもらいました。
その上で、当院の課題を業務ごとに洗い出し、ボトルネックを特定していきました。具体的な改善策としては次のようなことが挙げられます。
- 人員不足の解消(スタッフの増員)
- 紙カルテから電子カルテへの移行
- 電子カルテと販売システムとの連携
また、セミナーからは「ミスは無意識の業務から生じる」ということを学び、スタッフ全員で無意識に業務を行わないよう訓練を行いました。
こうした取り組みにより、ミスの発生は格段に減少し、患者満足度の向上につながりました。成果が出始めると、スタッフは自信を持つ様になり、仕事に対するモチベーションや帰属意識の向上にも好影響をもたらしました。
まとめ
クリニックのブランド力向上は、単に優れた医療サービスを提供するだけでなく、スタッフ一人ひとりの個性や長所を活かすことが鍵を握ります。その過程では、人材マネジメント力が重要な役割を果たします。
適切な人材マネジメントを行うためには、1on1ミーティング、チームビルディング、アセスメントツールなどを活用することです。スタッフ一人ひとりの持つ個性やスキルを深く理解し、それを最大限に活かす仕組みを作りましょう。今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。