クリニックの理念を作りたいけど、どのような内容にしたらいいか分からず困っていませんか?
理念の絶対条件や作り方を理解することで、それぞれのクリニックに合った伝わる理念を作ることができ、スタッフにも浸透しやすくなります。
本記事では伝わるクリニック理念の作り方を3ステップで解説します。幅広く活用できる理念を作ってより良いクリニック経営を行いたい方はぜひ参考にしてください。
スタッフ教育に活かすなら伝わる理念を作ろう
スタッフ教育に力を入れたい、クリニック全体の士気を上げたい、そう考えている方は理念を作りましょう。
存在意義や目的をわかりやすく表にした理念はクリニックの土台となり、医院全体の統一感を生み出すため、スタッフ全体をまとめる上で非常に重要な存在です。
理念に沿った教育を行うことでスタッフの意識を変え、行動を変え、仕事の質を変えることができます。
ただし、理念はただのお飾りではなくさまざまな場面で活用できるもの、かつ伝わるものでなければいけません。
クリニック理念の絶対条件
クリニック理念の絶対条件は、次の2つです。
- 価値が変わらない本心からの思いを言葉にすること
- 日々の業務に活用できるものにすること
この2つの条件をクリアした理念を作ることで、院長の思いをスタッフ全体に伝えることができます。
価値が変わらない本心からの思いを言葉にすること
クリニックの理念は「価値が変わらないもの」であり、「本心からの思いが言葉になったもの」でなければいけません。
時代の変化や院長の交代があったとしても価値が褪せることのない内容にすることで、環境の変化に左右されない理念を作ることができます。
また、院長がクリニックと仕事にかける本心からの思いを言葉にすることも非常に大切です。「聞こえのいい言葉」や「空疎な理想」などで作った理念を浸透させようとしても、院長自身が上手く説明できず中々スタッフに広まらないでしょう。
理念は、「さまざまな変化に左右されない院長の思い」を言葉にするべきです。
日々の業務に活用できるものにすること
理念を作るときは、その内容が日々の業務に活用できるかチェックしましょう。理念は、スタッフがあらゆる作業を行うときはもちろん、院長があらゆる経営判断を行うときにも活用できます。
理念に沿っているかチェックをしてクリニックの活動の隅々にまで経営理念を浸透させるためにも、業務に活用しやすいものにしましょう。
クリニック理念の作り方【3ステップ】
クリニック理念は、次の3ステップで作成するのがおすすめです。
- クリニック経営で目指す姿を入れ込む
- スタッフの行動指針となる内容にする
- シンプルな表現で表す
絶対条件も踏まえながら3ステップで丁寧に考えることで、スタッフに伝わりやすい理念を作ることができます。
クリニック経営で目指す姿を入れ込む
会社経営における理念は、世界的経営学者であるピーター・ドラッカー氏のマネジメント論により20年前に注目を集めました。ドラッカー氏は経営理念の構造について次の3つを提唱しました。
- ミッション(使命):「そもそも会社が何のために存在するのか」という目的、存在意義。普遍的、永続的な内容かつ抽象的な表現となる
- ヴィジョン(将来像):ミッションに基づいた目標で、抽象的なミッションを具体化する
- ヴァリュー(価値観):従業員全員がどのように行動するべきかを表した行動指針、価値規範
ドラッカー氏は会社経営における構造として提唱しましたが、クリニック経営にも当てはめることができます。
理念の根幹となるクリニックの存在意義(ミッション)を明らかにし、ミッションに基づく具体的な目標(ヴィジョン)を明確にしましょう。これらは普遍的な理念を作る第一歩となります。
スタッフの行動指針となる内容にする
次に、スタッフの行動指針となる内容を考えましょう。これはドラッカー氏が提唱した構造の3つ目「ヴァリュー」の部分になります。
スタッフが重要な判断を迫られたとき、どのような行動を取るべきか迷ったときの助けとなるのが理念です。スタッフに持っていて欲しい精神、必要な技術や知識を入れ込みましょう。
行動指針となる理念を作ることで、スタッフが行動しやすくなるだけでなく、仕事や自分自身に対する誇りや自信、愛着が育まれていきます。
シンプルな表現で表す
クリニックの使命やスタッフの行動指針になる内容を考えたら、それらをシンプルな表現で表しましょう。理念はスタッフに理解されやすいものでなければ、中々浸透していきません。
たくさんのメッセージを詰め込みすぎると、業務中に思い出せなかったり重要な部分が分からなくなったりします。シンプルかつ院長の思いが伝わる理念にしましょう。
当院の理念は「より安全で最善の医療を目指して」です。このように伝えたい内容は1つに絞り、一度見ただけで理解できるものがおすすめです。
クリニック理念を作るときのポイント
理念を作るときは「スタッフ教育以外の業務にも活用できるか具体的に考えながら作る」ことが大切です。なぜなら、理念はスタッフ教育だけでなくさまざまな経営判断で使うためです。
例えば当院の理念「より安全で最善の医療を目指して」は、スタッフ教育以外にも次のような業務で活用しています。
- 安全管理:患者さんのケガを防止するための設備やサービスの整備
- 衛生管理:院内感染を防ぐ工夫
- 環境管理:患者さんが快適に過ごすための工夫
- 健康管理:患者さんが最善の医療を受けるための取り組み
- 情報管理:目の健康に関する正しい知識を患者さんに啓発するための取り組み
これは管理業務の耐性に適用したものですが、これ以外にも診療スタイル・建築設計・内外装デザイン・導入する設備計画などあらゆる場面で活用しなければいけません。
クリニックの理念は、スタッフの判断材料に加えて院長自身の経営判断にも使えるものにしましょう。
クリニック内での経営理念の見せ方
スタッフに浸透させるために、次の2つの場所での理念の見せ方を紹介します。
- 診察室
- スタッフルーム
患者さんや地域住民の方にも広めたい場合はホームページ、看板なども活用しましょう。当院では、金色のプレートに理念を印刷してクリニックの受付に掲示しています。
診察室の理念の見せ方
診察室は患者さんの目にも止まる場所なので、真面目なイメージを持たせましょう。額縁に入れて飾ったり見やすいフォントにしたりと、真剣な思いが伝わる見せ方がおすすめです。
スタッフの気が引き締まることはもちろん、患者さんにも安心感が生まれます。
診察室の理念は派手なカラーやかわいらしいフォントで親近感を持たせるのは避け、シンプルな見せ方にしましょう。
スタッフルームの理念の見せ方
スタッフルームに理念を掲示することで、ふとした瞬間に理念を思い出すことができます。日々の業務は忙しくつい理念を忘れることもありますが、一息つけるスタッフルームで理念を目にすると、クリニックの目的を再確認でき落ち着いて業務に取り組めるでしょう。
スタッフルームには物や掲示物が多すぎる場合があるので、目立つように掲示しましょう。また、スタッフルームは清潔に保ち、理念に目が行くような環境づくりを行うことも大切です。
できた理念は日々のスタッフ教育に活かそう
思いを込めて作った理念は日々のスタッフ教育に活かしましょう。理念を具現化するためには、実際に業務を行うスタッフが理念を理解し、理念があらわれた作業を行うことが必要です。
そのためにも日頃から理念を口にして研修や指導を通して浸透させていきましょう。
こちらの記事では、具体的な理念の活用法を紹介しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ
本記事では、伝わる理念の作り方を3ステップで紹介しました。時間をかけて丁寧に作られた理念は、より良いクリニックを作るために必ず役立ちます。
今一度クリニックやスタッフに対する思いを考え、ブレないクリニック経営を行いましょう。