自主性のあるスタッフを育てる方法がわからず悩んでいませんか?
重要な場面で適切な判断ができるスタッフを育てるためにはエンパワーメントを意識した教育が大切です。1人1人のエンパワーメントを高めることで、スタッフは自発的に意思判断を行うようになります。
本記事ではエンパワーメントの意味やスタッフ教育での活用法を紹介します。自らの意思で判断ができるようなスタッフを育てたい方はぜひ参考にしてください。
エンパワーメントは自主性のあるスタッフを育てるために重要
人材育成の手法として注目されるエンパワーメントは、先輩がフォローしながらスタッフにあらゆる権限を与えることで自立性を育てられるのが特徴です。
一般企業で利用されることが多い教育方法ですが、クリニックスタッフの教育にも用いることができます。エンパワーメントを意識した教育を行えばスタッフ自身が責任感を持って仕事をするようになるので、患者さんの信頼感も高まります。
特に、医療従事者は責任を伴う仕事が多く、重要な判断を迫られる場面も多いです。院長や一部のスタッフだけでなく、クリニックに働く全てのスタッフが自主性を持って業務を行うことで、クリニック全体の質を高めることができます。
エンパワーメントとは?
エンパワーメントとは力を与えるという意味を持つ言葉で、1980年代に起きた女性の権利獲得運動の中で生まれました。
元々は市民運動で使われていたこともあり、権限を与えるという意味を持っています。そのほかに、権限を与えることで本来持つ能力を発揮する「能力開花」の意味もあり、現在では福祉や教育、企業の人材育成などで幅広く使われています。
一般企業の中で行われるエンパワーメントを使った教育法は、重要なポジションに就く上司が一部の権限を部下に与え、意志判断を自主的に行わせることで部下の能力を最大限に発揮させる方法です。
スタッフ教育におけるエンパワーメントの意味
クリニックのスタッフ教育におけるエンパワーメントの意味は、重要な権限を与えてスタッフ1人1人の能力を開花させることで、一般企業のマネジメント手法と同様です。
すべての判断を院長の決定で行うのではなく、スタッフを責任者に任命して自らの意志で判断をさせることで、スタッフの自主性を育てます。
クリニック内でスタッフのエンパワーメントを高めるためには、権限を与えるだけでなく院長や先輩スタッフがフォローやフィードバックを適切に行い、スタッフの成長につながる環境を作ることが大切です。
エンパワーメントのメリット
スタッフ教育におけるエンパワーメントのメリットは、主に次の4つです。
- スタッフの自主性が高まる
- 業務スピードを上げることができる
- スタッフの仕事に対するモチベーションや満足度が高まる
- スタッフの責任感が増す
エンパワーメントの向上は、スタッフの成長につながるだけでなくクリニック業務をスムーズに進められるというメリットもあります。
スタッフ教育はもちろん、普段の業務スピードを上げたいと考えている方にもエンパワーメントの活用がおすすめです。
スタッフの自主性が高まる
エンパワーメントを高めることで、スタッフの自主性を育てることができます。権限を与えて重要な判断を任せるため、スタッフは自分で考えて決断する力が身に付きます。
大事な場面での判断は中々勇気が出ないものですが、能力開花のために先輩スタッフや院長がフォローするので、自分の力を最大限に発揮しながら自主性を高めることができるのもメリットの1つです。
業務スピードを上げることができる
エンパワーメントを意識してそれぞれのスタッフが適切な判断をできるようになれば、全体の業務スピードを上げることができます。
スタッフが意思を持っていないと、あらゆる業務の判断をほかのスタッフや院長に任せてしまいます。ほかの人に聞いたり判断を待っていたりすると業務スピードが下がってしまい、患者さんの満足度低下にもつながりかねません。
エンパワーメントを高めることで、スタッフ個人で適切な判断を行うようになるので、クリニック業務がスムーズに進められます。
スタッフの責任感が増す
エンパワーメントを意識した教育を行うと重要な判断を迫られる機会が増えるので、スタッフの責任感が増します。
適切な治療や診察が必要となる医療現場では、医師だけでなくスタッフも重要な決断を下さなければいけないことが多いです。
エンパワーメントを高めて責任感の強いスタッフを育てておくことで、いざというときに医師以外も適切な判断ができるようになります。
スタッフの仕事に対するモチベーションや満足度が高まる
エンパワーメントのメリットは、スタッフの責任感や自主性が高まることで仕事に対するモチベーションや満足度も高まることです。
責任感を伴い自分の意志が反映される仕事は、非常にやりがいを感じるためモチベーション向上につながります。
また、日々の業務を淡々とこなすのではなく自分で考えながら仕事をするようになるので仕事に対する満足度もアップし、クリニックの定着度も上がります。
エンパワーメントのデメリット
エンパワーメントには次のようなデメリットがあります。
- スタッフの行動に統一性がなくなる可能性がある
- 逆効果になることがある
- 失敗が増える可能性がある
経験の少ないスタッフに重要な仕事を任せる機会が増えるため、失敗が増えたりスタッフの行動に統一性がなくなったりするリスクがあります。
エンパワーメントを高めるときは、このようなリスクを避けるために教育法を工夫するようにしましょう。
スタッフの行動に統一性がなくなる可能性がある
エンパワーメントを使ったやり方では個人に判断を任せるため、スタッフの行動に統一性がなくなる可能性があります。
1つ1つの行動に統一性がなくなると、チームワークが乱れたりクリニックの方針とは異なった行動になったりするので注意が必要です。
スタッフの自主性を高めながら統一性を持たせるためには、クリニック理念の活用が欠かせません。あらゆる判断や行動の前に理念を思い出すように促し、方向性を統一させるようにしましょう。
逆効果になることがある
権限を与えられるのが苦手なスタッフには逆効果になることがあります。元々リーダーなどの重要なポジションで働いていた人であればいいですが、指示を受けて働く経験しかないスタッフもいます。
そのようなスタッフはいきなり重要な判断を任せられることで、大きなストレスを感じてしまったり逆に仕事の効率が下がってしまったりすることがあるので注意しましょう。
エンパワーメント教育がスタッフに合っているか確かめるためには、定期的なヒアリングや観察が重要です。もし不向きだと感じた場合は一度中止して知識や経験を増やしてから再度導入するのがおすすめです。
失敗が増える可能性がある
エンパワーメントを高める教育方法では経験が浅いスタッフに意思決定させるため、失敗が増えるリスクが高まります。
特に、重要な決定を任せる場合には取り返しのつかないミスが発生することも考えられます。
致命的なミスが起きる可能性のある判断を任せるときは、すぐに院長や先輩スタッフがフォローできる体制を整え、不測の事態に備えることが大切です。
クリニックスタッフのエンパワーメントを高めるポイント
クリニックスタッフのエンパワーメントを高めるポイントは、次の5つです。
- スタッフを1人の女性として自立させる
- 明確なゴールを設定する
- スタッフ自身に考えさせる時間を増やす
- 先輩スタッフは丁寧なフォローを心がける
- 権限委譲のレベルは段階的に上げていく
エンパワーメントを高めるためには、スタッフに1人の女性として自立することを意識させるのが非常に大切です。
この認識を前提とした上でゴールの設定やフォローを行えば、大きな間違いにはつながらないと考えています。
スタッフを1人の女性として自立させる
クリニックスタッフには、まず1人の女性として自立する気持ちを持ってもらいましょう。私のクリニックは全員女性スタッフで、扶養控除内で勤務したり子育てしながら働いたりする従業員がたくさんいます。
このようなスタッフは、外的環境から自分の能力にリミッターをかけてしまうことが多く、それが中途半端な仕事につながってしまうことがあります。
そのため、まずは「医療従事者は聖職者であり、患者さんを中心とした責任のある仕事である」ことを認識してもらい、エンパワーメントを高めるのがおすすめです。
明確なゴールを設定する
エンパワーメントを効率的に高めるためには、明確なゴールの設定も大切です。エンパワーメントを導入し、最終的にどのようなゴールを目指しているのかを明確にしましょう。
そうすることで、スタッフも納得して取り組んでくれます。スタッフはゴールがわからない状態でいきなり重要な判断を任されても、困惑してしまい責任感も持てません。
ゴールはクリニックの理想像を具体化したものにし、スタッフにもメリットを感じさせるものにしましょう。伝えるときはエンパワーメント導入の成功事例も紹介するとスタッフのやる気が向上します。
スタッフ自身に考えさせる時間を増やす
エンパワーメント向上のための教育では、スタッフ自身に考えさせる時間をしっかりと設けることが重要です。
スタッフ1人1人が周りのフォローがなくても自分の意志で決断することを目指すため、教育段階で考えさせる時間を作るようにしましょう。
また、スタッフの意志が弱く意見が中々出ない場合は、「こういう場面ではどうしたらいいのか?」「ここについてはどう考えている?」など質問を投げかけて考えるきっかけを与えるのがおすすめです。
先輩スタッフは丁寧なフォローを心がける
先輩スタッフは丁寧なフォローを心がけて、スタッフの成長を促しましょう。最初のうちは、権限を与えても上手く判断できないことがほとんどです。
このとき、失敗を責めたり責任を押し付けたりしてしまうと、逆効果になってしまいます。失敗に対するフォローや指導をしっかりと行うことで、スタッフは萎縮せずに自主性を高めることができます。
また、大きな失敗を未然に防ぐためには、常に報告・連絡・相談ができる環境を整えておくことも大切です。すぐに院長や先輩スタッフに話せるような体制を作っておきましょう。
権限委譲のレベルは段階的に上げていく
与える権限のレベルは段階的に上げていきましょう。最初から重要な判断を任せると、大きな失敗につながったり業務に支障が出たりする可能性があります。
最初は複数でできる仕事や先輩スタッフの業務の一部を任せるようにし、ミスをしても問題ない範囲で権限を与えましょう。
権限委譲のレベルを段階的に上げることで、成功体験も増やすことができるのでスタッフの自信にもつながります。
エンパワーメントを高める方法【実践例】
私のクリニックでは、エンパワーメントを高めるために部門ごとに責任者を配置しています。
クリニック業務の中で責任者を配置している部門は次の4つです。
- 受付
- 検査
- 事務
- 医薬品管理
例えば受付の場合は、「バランスのよい予約スケジュールを組み、待ち時間を平均化させる」というゴールを設定し、まずはスタッフと院長で打ち合わせを行いスケジュールの調整を行います。
その後、調整の権限を与えることで、無理なくスタッフに予約の運営管理を任せることができます。
スタッフには、患者さんの不利益につながる行為は絶対にしないことを前提として、許容範囲内で試行錯誤しながら調整するようにしてもらい、エンパワーメントを向上させるようにしましょう。
こうすることで、スタッフは日々の目標来院者数を達成させながら予約スケジュールを管理できるようになります。
まとめ
本記事ではエンパワーメントを高めながらスタッフ教育を行う方法を紹介しました。一般企業で使われることが多いエンパワーメントですが、重要な決断をする場面が多い医療現場で働くスタッフにも活用することができます。
与える権限の内容に注意し、院長や先輩スタッフがサポートしながら教育を行うことで自主性のあるスタッフを育てられます。