クリニックの予約が急に減ったとき、皆さんならどうしますか?
とくに小児科や耳鼻科、眼科のクリニック経営者で「春休みや夏休みは忙しくなるのが当たり前」と思っているあなた。予約枠に空きが目立つ状況に直面したとき、戸惑いと焦りが一気に押し寄せてくるはずです。
実際に私も、2025年の春休み直前にその“異変”を経験しました。
「ネット予約を導入しているのに埋まらない…」
「SNSもやっているけど、反応が薄い…」
「キャンセル電話が目立つ」
そんな悩みを抱えるクリニック経営者や事務長の方に向けて、私が実際に行った「ネット予約の導線の改善」や「SNS・Googleマップでの情報発信」。これらの施策によって予約枠の空きを解消した具体的な対策をご紹介します。
「春休みって混むはずじゃないの?」予約管理画面を見て違和感を覚えた瞬間
毎年、春休みが近づくと、「そろそろお子さんの受診が増えるな」と自然と身構える季節がやってきます。特に小児科や眼科、耳鼻科といったお子さんを対象にしたクリニックでは、春・夏・冬の長期休暇は繁忙期。例年なら「午前中の枠がすぐに埋まる」「土曜の予約は数週間前からいっぱい」なんてことも珍しくありません。
ところが、2025年の3月初旬。私はいつものように予約管理画面をチェックして、ふと手を止めました。
「あれ…?こんなに空いてる?」
まだ春休みが始まっていないとはいえ、3月25日(平日)午後の診療枠に5件以上の空きがある状況。これまでの経験上、春休み直前の時期にこれだけ空いているのは極めて異例でした。
この「違和感」こそが、今回の対策すべての出発点でした。
原因は“患者さんの変化”と“私たちの発信不足”にあった
なぜ今年に限って予約が入らないのか。私は複数の要因が絡んでいると分析しました。
- 新学期準備で親が多忙になり、受診が後回しに
- 「春休みは混雑するだろう」という思い込み
- 空き状況が届いていない、発信不足
- ネット予約の操作が難しく、離脱してしまう
あるお母さんからは「混んでると思って避けてました」と言われたこともあります。「実際には空いている」ことを、こちらが伝えられていなかったのです。
また、スマホでの予約が複雑な場合、スマホ世代の親御さんでもネット予約は敬遠されることもあります。「あと少しの工夫で、予約までたどり着けたのに…」というケースは、意外と多いのです。
クリニックのMEO対策!Googleマップの活用メリットと最適化の方法を解説
Instagramストーリーで“今なら空きあり”をわかりやすく発信
まず行ったのはInstagramストーリーによる空き情報の発信です。
実際に使ったストーリーの例:
- 「春休み中、まだご予約可能な日があります📅」
- 「お子さんの視力チェック、春休みがオススメです👦👧」
- 「予約はプロフィールのリンクからどうぞ!」
「空きあり」はネガティブに聞こえるかもしれませんが、患者さんにとっては「今がチャンス!」と感じてもらえる内容です。
毎日ストーリーで繰り返し投稿することで、「ストーリーを見て予約しました」というDMが届くようになりました。
また、リンクスタンプをつけて“ワンタップ予約導線”を作ることで、予約完了率もアップしました。
Googleマップ投稿で“検索されるクリニック”に
Instagramと並行して、通称:Googleマップ、(Googleビジネスプロフィール)の投稿機能も活用しました。
たとえばこんな投稿をしました:
「春休み中のご予約が埋まってきています。○月○日〜○月○日はまだ空きがあります。ネット予約はこちらからどうぞ。」
投稿には画像を添えて、見やすい工夫もしています
これにより、「Googleで検索して予約しました」という声が2件届きました。SNSのようにフォロー文化はなくても、「今探している人」に届くという点で、非常に有効な集患手段です。
あわせて、口コミへの返信も丁寧に行っています。これにより、口コミを見た方の信頼獲得にもつながっています。
ネット予約の導線を徹底的に見直す
ネット予約が入らない最大の原因は「予約完了までが難しい」ことにあります。
導線を見直したポイント:
- Instagramのプロフィールに予約リンクを設置
- ストーリーにリンクスタンプを活用
- 初診・再診の分かりにくさを改善
- 感覚的に操作できるよう、予約画面の文字数を制限
- カレンダー形式でUIをより見やすく
シミュレーションの実施。家族やスタッフに実際にスマホで予約してもらうと、自分では見落としていた不便さが明らかに。こうしたフィードバックは非常に参考になります。
電話予約でも“空き枠”を積極的にご案内
ネットが苦手な方にとって、電話は今でも大切な手段です。受付スタッフには「空いている時間帯を先にご案内する」ことを徹底しました。
たとえばこんな会話:
「春休み中でしたら、○日午後が空いていますよ」
「△日は学校がお休みなので受診しやすいですよ」
このように提案すると、即決率が高くなるだけでなく、患者さんの満足度も上がります。
事務長こそ“予約画面”を毎日チェックする
今回の対策はすべて、「予約画面の変化」に気づいたことから始まりました。
当院では予約システムを導入しているため、私は毎日、朝と夕方、予約の管理画面を必ずチェックしています。受付でも事務室でも診察室でも、スタッフ全員が同じ画面を見て情報を共有できるので、「この時間帯は空きが多い」「この曜日は予約が集中しやすい」といった傾向に、早く気づけるようになります。こうした日々の“気づき”が、タイミングの良い発信やスムーズなご案内につながっていきます。
「この時間が空いているから、今日はストーリーで発信しよう」といったように、感覚ではなくデータに基づいて動けるようになるのは、大きな強みです。
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春休みは“ネット予約×地域発信”で集患を強化するチャンス
地方や郊外のクリニックでも、ちょっとした工夫と発信で大きく状況を変えることができます。
- ネット予約の導線改善:家族やスタッフにテストしてもらうことで意外な改善点が見つかります。
- SNSでのこまめな発信:空き情報だけでなく、日常の一コマや健康豆知識も投稿すると親しみやすくなります。
- Googleマップでの投稿と口コミ返信:“今探している人”に届く効果があり、信頼感の醸成にもなります。
- 電話予約時の空き案内:積極的におすすめするだけで、患者さんの予約行動が変わります。
- 予約表の毎日チェック:予約システムの管理画面をこまめに確認することで、空きやすい曜日や時間帯の傾向に気づけます。その小さな気づきが、タイミングの良い情報発信やご案内につながります。
どれも特別なスキルや費用は必要ありません。気づいたその日から、少しずつ取り入れてみてください。
最後に:「違和感」に気づいたら、すぐ動く
今回の経験を通して、私がいちばん感じたのは、
「違和感に気づいたとき、すぐに動くこと」が、クリニックの未来を左右するということ。
マーケティングの専門知識がなくても、SNSが得意でなくても、関係ありません。
「なんかおかしいな」と思った瞬間に、患者さんの立場になって考え、小さく動き出すこと。
その積み重ねが、クリニックをより良くしていく一歩になると、私は信じています。
クリニックの成長は事務長の腕にかかっていると言っても、決して過言ではありません。
院長の方針を理解し、現場スタッフと協力しながら、患者さんの“今”のニーズを的確に捉えて行動に移す――それが事務長の役割だと私は考えています。
完璧である必要はありません。大切なのは、「あれ?」と思った小さな違和感を見逃さず、一歩を踏み出すこと。集患対策も発信も、すべてはその積み重ねです。
同じように日々奮闘している全国のクリニック事務長の皆さまへ。あなたの気づきと行動が、きっとクリニックをより良い方向へと導いてくれます。